江國香織
1964年、東京都生まれ。目白学園短期大学国語国文科卒。
アメリカのデラウェア大学に留学。
こうばしい日々
新潮文庫 (1995.6.1)・・・あかね書房 (1990.9)&理論社 (1991.2)
- こうばしい日々
ウィルミントンの町に住む大介一家。
大介が2歳の時に、日本からここへ移り住んできた。
お姉ちゃんのまゆこは、丁度高校受験の時だったので、
高校卒業まで伯母さんの家から通って、大学からアメリカへやって来た・・・
- 棉菓子
お姉ちゃんは、それまで付き合っていた次郎君と別れてお見合いをし、
さっさと結婚してしまった。
私、小学六年のみのりは、次郎君の事が気になってしかたがない。
でも、お姉ちゃんと別れてしまったので、もう家に遊びに来ることはない。
当然だ。そこで私は、次郎君との真実の恋に生きることにした・・・
流しのしたの骨
マガジンハウス (1996.7.25)
私、こと子の家族は、両親と二人の姉、そして一人の弟の六人。
父は、とにかく規律に従うことを良しとする厳格な人。母はそんな父に良く従う人。
上の姉のそよこは、結婚して家を出ている。
次女のしま子は、短大を出て事務所に勤めている。
弟の律は中学三年で、多分家族で一番まともだと思う。
今の私は、高校を卒業した後、何もせずに暮らしている。
私の家族には、いろいろな決まりがある。家族以外の人から見れば、奇妙なものも
たくさんあるだろう。
そういう内容を披露しながら、物語は進んでいく。
私には、恋人が出来、そよこは離婚することになり、しま子は大切な人と言って
女の人を家に連れてくる。律は、学校から呼び出しをくらい、停学になった・・・
落下する夕方
角川書店 (1996.10.30)
8年間同棲していた藪内健吾に別れ話を持ち出され、なかなか現実の事として
受け入れられなかった私、坪田梨果。
そこへ突然、この別れ話の原因となった健吾の新しい女、根津華子が
転がり込んできて、一緒に住むことになった・・・
すいかの匂い
新潮社 (1998.1.30)
- すいかの匂い
「小説新潮」1989年11月号
9歳の夏、母が出産の間、叔母の家にあずけられることになった。
ところが居心地が悪く、財布を盗んで家を飛びだしてしまった・・・
- 蕗子さん
「小説新潮」1990年9月号
母は、父が死んだ後、下宿屋を始めた。
そこにやって来たのが蕗子さんだ。彼女は不思議な人だった・・・
- 水の輪
「小説新潮」1992年10月号
わたしが7歳、姉が9歳の夏、近所の和菓子屋へ「水の輪」というお菓子を
買いに行った帰り、近所のやまだたろう(多分あだ名)が私に、
クマゼミの屍骸を渡し、「死ね死ね死ね死ね」と言った。
そう聞こえたのだが、実はあれは・・・
- 海辺の町
「小説新潮」1993年1月号
私が11歳の夏、海の近くの写真屋さんの二階に住んでいた。
父と母は離婚したばかりだったが、父は良く遊びにきた。
そして、私は母が働いている間、近所のパン工場へ遊びに行った・・・
- 弟
「小説新潮」1993年5月号
身近な人、近所の人、どんな人の葬式も、いつも夏だった。
そして今日は、弟の葬式。やはり暑い夏だ。
そういえば、小さい頃弟と二人でお葬式ごっこをして遊んだ・・・
- あげは蝶
「小説新潮」1993年9月号
私は新幹線が大嫌いだった。私の中には、華族の血が流れている。
毎年夏には、その華族の母方の曾祖母の家を訪ねたが、それが嫌いだった。
その年、いつもの年の通り、新幹線で向かっているとき、太股に
あげは蝶のシールを張りつけた女がいた。そして私と良く目が合った。
トイレに行ったところ呼び止められて、一緒に逃げないかと誘われた・・・
- 焼却炉
「小説新潮」1994年12月号
小さい頃、私には嫌いなものがたくさんあった。
だから、嫌いでないものは好きなものになっていた。焼却炉もその一つ。
夏休のある日、巡回影絵の一団がやって来た。
ただし、プロではなくて学生のボランティアであった。
その中に、気になる人がいた・・・
- ジャミパン
「小説新潮」1995年12月号
母は、あんぱんやクリームパンに比べてジャムパンを格下に考えていて、
ジャミパンと呼んでいた。
私には父親はいない。死別でも別れたのでもなくて始めからいないのだ。
その父親替わりになってくれたのが、信一叔父であった・・・
- 薔薇のアーチ
「小説新潮」1996年8月号
私は、小学生のときいじめられっ子だった。
それで、毎年夏に祖父の家へ遊びに行き、毎朝水泳をさせられた。
体が弱いのが、いじめられる原因だと父が考えていたからだ。
そして、午前中は勉強をし、午後から海へ行ったりして遊んだ。
そして、その女の子と出会った・・・
- はるかちゃん
「小説新潮」1997年1月号
小学二年生の夏休みに親しくなって、秋には引っ越してしまった
はるかちゃんという友だちがいた。
そのころ私は、いつものように耳鼻科に通っており、その帰り道に
彼女の団地に寄って行ったのだ。
はるかちゃんはいつも、いつも一人遊びをしている妹と、半分壊れている
弟と一緒に親が帰って来るのを待っていた・・・
- 影
「小説新潮」1997年8月号
Mとは、9歳の時に出会った。それ以来、何かと困ったときに助けてくれる。
不思議な女の子だった。
そして今、離婚の報告をしたところ、やはり驚きもせず、「よかった」と
言われた。そして、私たちは又、知らないもの同士のように別れていく・・・
神様のボート
新潮社 (1999.7.15)
好きな人のことを一途に思い、彼の言葉を信じて待ち続ける野島葉子。
彼女は、小さな赤ん坊を連れて東京を離れ、親戚や友人とも連絡を断って
地方を転々と引っ越しし続けていた。
子ども(草子)の小さい頃はそれでも良かったが、小学生になり、だんだんと
友だちが出来て来ると、草子は引っ越しするのを嫌がるようになってきた。
そしてとうとう、高校は寮へ入ると言いだした・・・
冷静と情熱のあいだ
角川書店 (1999.9.30)
ミラノで育ち、日本の大学で学んだあおい。
その日本の大学時代、なかば同棲状態にあった、阿形順正。
彼とちょっとした行き違いから喧嘩別れをしてしまったあおいは今、
ミラノに戻って来てマーヴというアメリカ人と暮らしている。
彼はあおいのことをとても大切にしてくれる。でも、結婚はしていない・・・
桃子
旬報社 (2000.12.1)
ある寺に、天隆という修業僧がいた。彼は、部屋から一歩も出ずに暮らしている。
三年前、寺に預けられた桃子という九歳の女の子に恋してしまい、
その恋が許されなかったために桃子とともに姿を変えてしまったのだ・・・
ウエハースの椅子
角川春樹事務所 (2001.2.8)
画家であり、38歳の未婚の中年女性である私。私には、家族のある恋人がいる。
彼は暇のある限り私の家を訪ねてくれる。彼の顔を見るといつでも嬉しくなる。
私は、子どもの頃から絶望と仲良しだった。いつも、一人で過ごした・・・
草之丞の話
旬報社 (2001.8.1)
風太郎の母親のれいこは、女優をしている。
彼は、自分の父親のことを長い間知らなかった。
そしてある日、侍の幽霊が実の父親であることを知った・・・
泳ぐのに、安全でも適切でもありません
集英社 (2002.3.10)
- 泳ぐのに、安全でも適切でもありません
(It's not safe or suitable for swim.)
祖母が肺炎で、緊急入院したという連絡をもらった。
急いで駆けつけたが、まだしばらくは大丈夫そうだ。
そこで、久しぶりに出会った母と妹と一緒に、町のレストランへ出かけた・・・
- うんとお腹をすかせてきてね (We must be famished.)
裕也と私は、仕事の都合でダメなとき以外は、毎晩一緒にごはんを食べる。
もう4年も続いているから、私たちの身体はもうかなり同じもので
出来ているはずだ・・・
- サマーブランケット (Summer blanket)
海のそばにある私の家。ここには、毎週水曜日に二人の友人がやってくる。
まゆきちゃんと大森君は、若い恋人同士。
水曜日以外にも、気が向けばふらりと遊びにくる・・・
- りんご追分 (Ringo oiwake)
小さなバー『ねじ』で働き始めてから一年になる。
その日の痩せていて顔色の悪い男の人は、はじめて見るお客さんだった・・・
- うしなう (Missing)
押し花教室で出会った四人の主婦。
新村由起子、山岸静子、堤文枝、そして私は、由起子以外はもう既に
教室をやめてしまっているが、月に一度ボーリングをするために
集まっている・・・
- ジェーン (Jane)
1987年の夏、私はジェーンと一緒に暮らした。
彼女のルームメイトが出ていってしまったため、私が入ったのだ。
当時私は、向坂さんと不倫状態にあった・・・
- 動物園 (Zoo)
樹がしまうまを見たいというので、上野動物園にやってきた。
夫は、外にアパートを借りて一人で暮らしている・・・
- 犬小屋 (Kennel)
兄の昔の妻、郁子さんと、久しぶりに食事をした。
彼女は現在、文代さんという女性と一緒に暮らしている。
そして、私の夫であり兄の学生時代からの友人である奈津彦は現在、
自分で作った犬小屋で生活している・・・
- 十日間の死 (Death for 10 days)
私とマークとは、二人組だと思っていた。
それなのに今、私は一人でセント・ジェイムズホテルに泊まっている・・・
- 愛しい人が、もうすぐここにやってくる (He is on the way.)
二人の女の子を雇い、帽子づくりをしている私。
そんな私は、毎週月曜日の夕方に、男と逢引をする・・・
いつか、ずっと昔
アートン (2004.12.31)
もうすぐ結婚する私は、彼と一緒に夜桜を見に出掛けた。
そこで、人間になる前には蛇、蛇になる前には豚、豚になる前には
貝であった事を思い出す・・・
すきまのおともだちたち
白泉社 (2005.6.8)
新聞記者として仕事に励み、恋人と交際していた頃に、その女の子と初めて会った。
庭にレモンの木のある家に一人で、、、いや、大きな皿と一緒に住んでいる女の子。
それは突然の出来事で、最初は戸惑ったものです。
そしてまた突然、現実の世界(?)へ引き戻されるのでした。
それ以来、一年から数年の間隔をあけて、そういう事が繰り返されています・・・
戻る