石持浅海
1966年、愛媛県生まれ。九州大学理学部卒業。
君の望む死に方
祥伝社ノンノベル (2008.3.20)
"The Death You Desire"
ガンで余命最大六ヶ月と宣告された、ソル電機社長の日向貞則が最後に望んだ事は、ある人物に自分を殺される事。それを相手に悟られてはいけないし、その人物が殺人罪で捕まってもいけない。入念に準備されたその目論みは・・・
- 序章
- 第一章 保養所
- 第二章 研修
- 第三章 懇親会
- 第四章 対話
- 終章
賢者の贈り物
PHP (2008.4.7)
解ける謎も、解けない謎も、すべて混ぜこぜにして、有名な昔話や逸話のパロディーに改編。ちょっと考えすぎ〜な感じもする10のミステリー短編集。
- 金の携帯 銀の携帯
(あなたが落としたのはこの金の斧ですか?それともこの銀の斧ですか?)
携帯電話の調子が悪くて、飛び込んだ直営店。
修理期間中に貸し出しをしてくれるというのだが、
3つの中から選べという・・・
- ガラスの靴
(この靴にぴったりの者をお后として迎えよう。)
週末、同期の男女が集まってのパーティー。終電を逃し、タクシーで帰宅。
ところが気付いてみると、女性用の靴が一足。
そしてサンダルがなくなっていた。
しかし、週が明けても誰も名乗りでてこない・・・
- 最も大きな掌
(争いの神エリスは三人の女神に言った。
「最も美しい女神に、この黄金の林檎を与えよう」)
社外取締役を頼まれているヴェンチャー企業のパームリサーチ。
社長が体調を崩し、代表権のない会長に退くことに。
その後釜を決めてくれと頼まれる。
条件は、「最も大きな掌を持つやつ」・・・
- 可食性手紙
(黒やぎさんは、白やぎさんから届いた手紙を、
読まずに食べてしまいました。)
カンニングペーパー推薦(?)の高校の生徒である私。
いつものように、使用済みになったらさっさと証拠隠滅を謀るため、
オブラートで作っていた。
ところが、作ったはずのカンニングペーパーが、
入れ換わっていることに気付いた・・・
- 賢者の贈り物
(妻は、夫が大切にしている金の懐中時計を吊るす鎖を買うために、
自慢の髪を切って売ってしまいました。)
写真が趣味の私。
最近、その手軽さに惹かれてフィルムカメラからデジカメに乗り替え、
フィルムカメラは売り払ってしまった。
ところが、それを知っているはずの妻がバレンタインデーにくれたのは、
フィルム・・・
- 玉手箱
(乙姫様は「決して開けてはなりません」と言いながら、
お土産に玉手箱をくれました。)
子供を通じて知り合った美しい女性。子供がに隠れてつき合い始め、
子供が林間学校へ行った間の3日間、ずっと一緒に過ごした程の
仲だったのだが、その帰り際にくれたのが、玉手箱。
「この箱を開けたらもう会えない、開けなければまた会える」・・・
- 泡となって消える前に
(もし王子様が別の誰かと結婚するようなことになれば、
人魚姫は海の泡となって消えてしまうでしょう。)
半年以上、つき合っている(?)女性がいる。しかし彼女のことを、
ほとんど何も知らない。そんな時、お見合い話が舞い込んできた・・・
- 経文を書く
(そなたの身体の頭から足の先まで、
怨霊を寄せ付けない経文を書いてしんぜよう。)
前の会社の後輩から、彼女の後輩がワインに嵌まってしまっているので
何とか引き戻す方法はないかと相談された・・・
- 最後のひと目盛り
(最後の一枚が散るとき、わたしも一緒に行くのよ。)
大学の漫画サークルで失恋した私。
自棄食いをして42kgの体重が58kgにまでなってしまった。
もうこのまま、60kgを越えてやる!!!
- 木に登る
(二人の旅人の前に熊が現れた。一人は木に登って逃れたが、
もう一人は木登りができなかった。)
私は、ある食品ヴェンチャー企業KHSの株を持っている。そして偶然、
その企業の製品テーシーが、副作用のある疑いで国立研究所で
調べられているという話を聞き込んだ。
そして同期の仲間も、その企業の株を持っていることを知っている。
しかし彼は今、地球の反対側のジャングルの中をさまよっている・・・
ガーディアン
光文社・カッパノベルズ (2008.8.25)
飛んできた物体を跳ねのけ、悪意を持った攻撃には逆襲をする「ガーディアン」。
しかしこの効力は、勅使河原冴に対してしか働かない。
彼女の名付けたこの不思議な力は、彼女の父の死後見られるようになったため、
彼女はその正体は父だと思っている。
子供の頃には、気味悪がって彼女の回りから人が離れていくだけであったが、
そんな彼女も就職し、会社に勤めている。
社会人になってからは、「ガーディアン」の事は人には言わないようにしている。
就職して3年ほど経った頃、彼女はあるプロジェクトチームに参加することに
なった。そしてそこには、学生時代からのくされ縁の友人がおり、
ふとした折に、「ガーディアン」の事をばらしてしまった・・・
・・・
その後、彼女はプロジェクトチームで出会った栗原洋樹と結婚し、娘の円が
生まれた。
プロジェクトチームが解散する直前に、「ガーディアン」を失ってしまってい
た冴であったが、今度は円に「ガーディアン」が働くようになったようだ。
年月が過ぎ、円は中学生になった。
そして彼女は、逃走する銀行強盗集団と、郵便局で出会うことになった・・・
心臓と左手
光文社 (2007.9.25)
石持さんのミステリー短編集。副題は「座間味くんの推理」。
『月の扉』の座間味くんが、安楽椅子探偵として再登場!
- 貧者の軍隊
貧者の軍隊というテロ組織の尻尾を捕まえた警察が、彼らが共同で
使っているマンションへと踏み込んでみると、そこでメンバーの一人が
死んでいた・・・
- 心臓と左手
怪しげな新興宗教団体。しかし、近所には特に迷惑はかけていなかった。
そこで争いが起こり、教祖の惨殺死体と三人の瀕死の信者が
発見された・・・
- 罠の名前
過激派組織『PW』のアジトに踏み込んだSAT−警視庁特殊急襲部隊。
しかしPWの戦闘隊長の芳賀を事故死させ、さらに人質になっていた
弁護士、野口をも死なせてしまった・・・
- 水際で防ぐ
外来種の侵入を防ごうと活動している環境保護団体『固有種を守る会』。
その一人の部屋に踏み込んでみると、隣りに住んでいた別の会員が
殺害されており、側には巨大な昆虫が歩いていた・・・
- 地下のビール工場
貿易会社の社長が出社してこないと、社員から通報を受けた警察。
社員と不動産会社の人と共に家に入ってみると、社長は地下室で
死んでいた。他殺体となって・・・
- 沖縄心中
警察は、学生から教官(女性)が来ないので家へ行ってみたら、
米軍男性らしい人と一緒に心中しているという連絡を受けた・・・
- 再会
父と母はよく喧嘩をする。
その避難のために従姉の真由美姉さんの所へよく出掛けている。
両親の喧嘩の原因は、11年前に起きたハイジャック事件らしい。
しかし私は、その事件についてあまり良く知らない。
そこで今日は、真由美姉さんにその事件について聞いてみた・・・
BG、あるいは死せるカイニス
光文社 カッパノベルズ (2007.6.25)・・・東京創元社(2004.11)
流星観測をした翌日、学校内で殺人が発生した。
亡くなったのは西野優子というこの学校の天文部の学生。
生徒からの信望は厚く、男性化する筆答候補と考えられていた。
そう、この世界では人間は全て女性として生まれ、生物学的に優秀な種のみが
後に男性化し、その子孫を残すという構造になっているのだ。
さらに男性化には一度は出産経験が必要なため、女性が男性をレイプする事は
あっても、逆はない。
しかし優子の体には、レイプ未遂の形跡があった。
親の違う妹である船津遥は、事件の解決は警察にまかせつつも、
姉の死に激しい怒りを感じていた・・・
- 序章
- 第一章 流星観測
- 第二章 期末試験
- 第三章 個人授業
- 第四章 天文台
- 第五章 デュッセルドルフ病
- 第六章 BG
- 終章
顔のない敵
光文社カッパ・ノベル (2006.8.25)
1997年〜2006年発表の短編集。
テーマは、「対人地雷」。ただし、一作品(「暗い箱の中で」)を除く。
- 地雷原突破
事件発生 1996年
大学を卒業とともにヨーロッパで積極的な活動をしている組織に入り、
世界中を駆け回って戦乱や飢饉で苦しんでいる人を助けている坂田。
久々に日本に戻ってきた彼と飲み屋で会った早瀬は、彼の疲れ切った様子が
気になった。
現在彼は、『対人地雷を使用禁止兵器にする国際条約の締結』を目標に
活動しており、市民集会を開いて地雷の危険さをデモしようとしていた。
しかしそこで事故が起こり、メンバーの一人が爆死したという・・・
- 利口な地雷
事件発生 1997年
長年に渡って対人地雷を追いかけているジャーナリストの永井綾子。
何度頼んでも拒否されていた、自衛隊に対人地雷を収めている安永工業への
取材が、突然認められた。
地雷をはじめとする陸上兵器の調達を担当する小川一尉から
誘われたのだ・・・
- 顔のない敵
事件発生 1993年
灼熱のカンボジアの地雷原で、アネット・マクヒューと坂田洋はチームを組み、
対人地雷の除去をしていた。
地雷を見つけ、除去していたとき、遠くで爆発音がした・・・
- トラバサミ
事件発生 2006年
NGO団体の「戦争被害者自立支援会」のメンバーだった新井という男が、
交通事故で亡くなった。
その時の持ち物に不審を抱いた警察は、彼のアパートに乗り込むと、
トラバサミの作製途中や完成品があった。
その後調べてみると、材料は八個分購入した形跡があった。
しかし実際に見つかったのは、途中のものを含めて七個分。
つまり、一つがどこかへ実際に仕掛けられたおそれがある。
そこで警視庁の久山警部補は、高校の同級生でもあった自衛官の小川一尉を
訪ねた・・・
- 銃声でなく、音楽を
事件発生 1991年
組織の経営をうまくやりくりしているサイモン・フィッツウォーターに、
坂田は企業訪問に付き合うように言われた。
第一線で地雷除去をしているメンバーの生の声が必要なのだという。
しかたなく、嫌々ついて行ったが、社長に会うために会議室に
向かっていたところ、その部屋から銃声がした・・・
- 未来へ踏み出す足
事件発生 200X年
NGOスタッフのコン・ソルン、ジャーナリストの永井綾子、さいたま工科大学の
谷村健太郎、安永工業の弓削直人、そして大日本高分子化学工業の岡田行正が、
対人地雷除去NGOの事務所で摸擬地雷を囲んでいた。
そこで、全長50cmほどのムカデ形対人地雷除去ロボットの動作試験が行われて
いたのだ・・・
- 暗い箱の中で
理恵が退職することになり、その最後の出勤日の就業後、
同僚が集まって飲みに行くことになった。
ところが、その飲み会を仕切っていた由紀子が、場所を見つけたタウン
情報紙を会社に忘れてきたらしく、みんなで取りに戻ることになった。
そして会社の古いエレベータに乗って上昇していたときに、
その事件は起きた・・・
セリヌンティウスの舟
光文社カッパ・ノベル (2005.10.25)
何度か見かけた事のあるだけの関係だった、三好保雄、磯崎義春、
吉川清美、大橋麻子、米村美月、そして児島克之。
結果的には大きな話にはならなかったが、沖縄の海で遭難しかかり、
生死を供にしてしまったこの男女六人は、それからはよく一緒に
潜りに行っていた。そして帰りには三好のマンションへとやってきて、
飲み会をやって酔いつぶれるのも、いつもの事であった。
そんな、一緒に潜った帰りにいつも通り酔いつぶれた次の朝、
気がつくと、米村美月が青酸カリで服毒自殺していた。
一体、何があったというのか?生死を供にした仲間にも、言い出せない事が
あったのか?そして、青酸カリの入っていた褐色の小瓶は、
どうしてキャップが閉められていたのか?そして、どうして転がっていたの
か?49日の帰りに集まった残りの5人は、あの時の状況を回想する・・・
- ◎序章
- ◎第一章 セリヌンティウス
- ◎第二章 メロス
- ◎第三章 ディオニス
- ◎終章
扉は閉ざされたまま
祥伝社ノン・ノベル (2005.5.30)
成城の高級ペンションで開かれた大学の同窓会。
旧友七名が、全国から集まってきた。
会場となったペンションは、安東章吾の兄が経営していたものだが、
体調を崩して休養中のため、たまには空気を入れ換えておいてくれと
頼まれたのに便乗したものだ。
そして集まったのは、大学で軽音楽部に所属していたメンバーの一部、
『アル中分科会』に所属する者達だった。
一番年上の上田五月、一つ違いでリーダー格の伏見亮介とペンション提供者の安東、
一年年下の新山和宏と碓氷(大倉)礼子、その下の石丸孝平、
そして大学の同窓ではないが、よく一緒に会っていた礼子の妹の碓氷優佳。
この同窓会で、伏見は新山殺害を計画し、実行した。
ただし、犯行現場は各自に割り当てられた部屋の中であり、
鍵がかかっていて密室状態。外にいる部外者は、部屋の中を見ることは出来ない。
しかし、高級ペンションの扉を叩き割って入るわけにはいかない。
そして伏見の巧みな誘導によって、犯行は事故に落ち着こうとしていた。
しかしただ一人、優佳だけは納得させられなかった・・・
人柱はミイラと出会う
新潮社 (2007.5.20)
アメリカのポートランドから日本に留学してきているリリー・メイス。
同じ学校に通う一木慶子の家にホームステイしている。
慶子の父は道議会議員の三郎、専業主婦の母は好江、
そしてたまにやってくるのは、人柱を職とするいとこの東郷直海。
欧米化された日本では、アメリカとほとんど同じような生活が出来るが、
それでも奇妙な風習も残っていて、時々驚かされるのだ・・・
- 人柱はミイラと出会う
ビルや橋などの巨大な建築物を建てるときには、土地の神様に迷惑を
かけないように、地中から人柱が工事を見守る・・・
- 黒衣は議場から消える
歌舞伎役者と国会議員には、黒衣と呼ばれる影武者のような人が
付きまとう・・・
- お歯黒は独身に似合わない
既婚女性は、お歯黒をする・・・
- 厄年は怪我に注意
厄年には、一年間厄年休暇を取って、派手に動き回らずに過ごす・・・
- 鷹は大空に舞う
鷹匠は、鷹を連れてパトロールに出かけ、警察の手助けをする・・・
- ミョウガは心に効くクスリ
忘れたいことがあれば、ミョウガを食べる・・・
- 参勤交代は知事の務め
全国の知事は、一ヶ月毎に地元と東京とに住居を移しながら生活する・・・
水の迷宮
光文社 (2004.10.25)
東京都と地元企業が共同で設立した第三セクター方式の羽田水族館。
空港からのアクセスは良かったが、設備は旧時代のものであり、
雑な運営にやる気のない職員では、飽きられるのも早かった。
そんな中、たった一人で奮闘していたのが片山であった。
そこへ招聘されてきたのが、現館長の波多野実であった。
彼は従来の運営方式を変え、水槽の設計変更を行い、名称も
羽田国際環境水族館と変え、リニューアルオープンさせた。
始めは反発していた片山も、その良さを認めて館長に協力するようになるのに、
それほど時間はかからなかった。
しかしその片山が、隠れて一人で毎晩働いていたところ、
水槽の温度調整システムに問題があったためか、その対応に追われている時に
極度に疲れが溜っていたためか、急死した・・・
- 序章 水族館
- 第一章 携帯電話
- 第二章 攻撃
- 第三章 殺人
- 第四章 電子メール
- 第五章 水の迷宮
- 終章 水族館
Rのつく月には気をつけよう
祥伝社 (2007.9.10)
大学時代の飲み仲間、『悪魔的な頭脳を持った長江高明』、『雑学博士の熊井渚』、
『美人の岡野真知子』、『野鳥の生態に詳しい桶山隼人』、そして私
『一升瓶を一気飲みできる湯浅夏美』。
真知子と桶山くんは、途中から参加しなくなっていたが、残りの三人の会は
社会人になってからも続いていた。
ただし、いつも同じメンバーでは進歩がないので、誰かが友達を一人ゲストとして
連れてくることになっていた・・・
- Rのつく月には気をつけよう
夏美の同僚、柏木一重をゲストに、スコットランドのアイラ島の
シングルモルトで生ガキパーティー・・・
- 夢のかけら 麺のかけら
熊井の同僚、塚本をゲストに、ビールで
チキンラーメンそのまま試食会・・・
- 火傷をしないように
夏美の同僚、須田明日香をゲストに、オレゴンのワインで
チーズフォンデュ飲み会・・・
- のんびりと時間をかけて
長江の勤める研究所に出向してきている赤尾をゲストに、泡盛で
豚の角煮・・・
- 身体によくても、ほどほどに
熊井の会社の同期、塩田律子をゲストに、静岡の日本酒でぎんなん・・・
- 悪魔のキス
夏美の婚約者、冬木健太をゲストに、
ブランデーでそば粉のパンケーキ・・・
- 煙は美人の方へ
夏美の婚約者、冬木健太を含めた4人で、シャンパーニュの
パイパー・エドシックでスモークサーモン・・・
月の扉
光文社カッパノベルズ (2003.8.25)
2000年(だと思う)7月16日20時、沖縄発羽田行き琉球航空第8便。
この飛行機に乗り込んだ柿崎修(46)、真壁陽介(37)、村上聡美(24)の三人は、
飛行機が離陸のために滑走路へ入ろうとしたとき、ハイジャックを開始した。
要求は、仲間である石嶺孝志を空港へと連れてくること。
ただし、釈放の必要はなし。連れてきたら、三人組はおとなしく飛行機から
出て行く・・・
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