加納朋子
1966年、福岡県北九州市生まれ。文教大学女子短期大学部文芸科卒業。
螺旋階段のアリス
文芸春秋 (2000.11.20)
『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』にちなんだ(?)、
日常の謎的なミステリー短編集。
某大手企業の導入した『転身退職者支援制度』、つまり体の良い
早期退職者募集を利用して私立探偵業を始めた仁木順平。
そこに迷い込んできたのは、一人の少女・・・市村安梨沙。
いろいろあったものの、彼女を助手として活動を続ける・・・
- 螺旋階段のアリス
亡くなった主人が、家の中に残したという貸し金庫の鍵を探しだして欲しいと、
一人の女性が依頼にきた・・・
- 裏窓のアリス
夫が浮気調査に来る可能性があるので、その先手を打って
浮気してない調査をしてくれと、ミカン嬢が依頼してきた・・・
- 中庭のアリス
飼っていた雄のコリー犬、サクラを探し出して欲しいと、
マダム・バイオレットが頼んできた・・・
- 地下室のアリス
元いた会社の地下駐車場の事務室に勤務する、山端という男性から、
隣の鍵のかかった書庫の電話が時々鳴るので、誰がかけてきているのか
調査して欲しいと依頼があった・・・
- 最上階のアリス
天才的な能力の持ち主である大学の先輩から、時々妻から頼まれる外出に、
どんな裏があるのかを調べて欲しいと依頼があった・・・
- 子供部屋のアリス
妻の知り合いというある産婦人科医から、赤ん坊の面倒を見て欲しい
という依頼があった・・・
- アリスのいない部屋
突然、休みを取って来なくなってしまった助手の安梨沙。
そして彼女の父親から、誘拐犯の疑いをかけられてしまった・・・
ぐるぐる猿と歌う鳥
講談社 (2007.7.25)
東京から北九州へと引っ越して来た新五年生の高見森と両親。
社宅の隣には同級生の佐久間心が、
近所には登校班の班長で新六年生の竹本篤樹を長男とする男5人兄弟、
副班長で同級生の十時あやが住んでいた。
そしてパックという良く分からない少年も。
彼らは、ぐるぐる猿と歌う鳥を見つけ出し、図書室の暗号を解き、
社宅のユーレイを演出する・・・
- プロローグ−−−あるいは、物語の前のひとりごと
- 第一話 ぐるぐる猿と歌う鳥
- モノローグ
- 第二話 図書室の暗号
- モノローグ
- 第三話 社宅のユーレイ
- エピローグ
掌の中の小鳥
東京創元社 (1995.7.25)
- 掌の中の小鳥
学生の頃、絵の才能があると思っていた同級生の容子。
彼女は、佐々木先輩にあこがれ、結婚したと聞いている。
その佐々木先輩から、突然雑踏で声を掛けられた。
あの、高校時代に起こった、容子が絵を止めてしまう切っ掛けに
なってしまった出来事の真相は・・・
校則の厳しい高校に通っていた高校時代、どうしても納得のいかない事で
登校拒否になってしまった。
そして一夏、祖母の家で過ごした。
その最後の日、祖母とやった賭けは・・・
- 桜月夜
小学時代には、男の子のような格好で、男子とともに遊んでいた。
そんな仲間の一人が、武史。
中学になってからは一緒に遊ぶこともなくなっていたが、ある日誘われて、
彼の父親の愛人の一人を追い払う計画に協力した・・・
- 自転車泥棒
いつも愛用していた赤い自転車。それが盗まれてしまった。
街中で偶然それを見つけ、それに乗っていた人を追求したまではよかったが、
その後警察から、自転車が見つかったという連絡が入った・・・
- できない相談
就職活動に明け暮れていた頃、偶然武史に出会い、彼の友人宅へと
誘われた。
その彼女の部屋でしばらく過ごした後、一度マンションから出たところで
武史と賭けをし、10分後に戻ると、彼女の部屋は引っ越しした後であった・・・
- エッグ・スタンド
従姉妹が結婚するというので、その相手を観察しようと、その結婚する
従姉妹の妹である礼子と供に茶会に出席した。
そこで、その結婚相手の婚約指輪が紛失するという事件が起こった・・・
スペース
東京創元社 (2005.5.28)
大晦日、母に買い物を言われて出かけて行ったデパートで、瀬尾さんに出会った。
実は、松の葉を公園かどこかから取ってくるように言われたのだが、
そんな事は面倒だと思っていたら、デパートの正面の大きな角松が目に入り、
ちょっとだけ失敬したのだ。
そしたらそれを、バイトで警備員をやっていた瀬尾さんに見つかってしまったのだ。
正直に理由を話して許してもらったのだが、その別れ際、どさくさにまぎれて
手紙を送るからと言ってしまった・・・
てるてるあした
幻冬社 (2005.5.25)
- 春の嵐 「星星峡」2003年7・8月号
- 壊れた時計 「星星峡」2003年12月号、2004年1月号
- 幽霊とガラスのリンゴ 「星星峡」2004年3・4月号
- ゾンビ自転車に乗って 「星星峡」2004年6・7月号
- ぺったんゴリラ 「星星峡」2004年9・10月号
- 花が咲いたら 「星星峡」2004年11・12月号
- 実りと終わりの季節 「星星峡」2005年1・2・3月号
その時は、突然やって来た。
借金取りが突然あらわれ、毎日取立をしにやって来る。
しかたなく、雨宮一家は夜逃げをすることになった。
照代はせっかく、高校受験に受かり、すぐに入学するはずだったのに・・・
魔法飛行
東京創元社 (1993.7.16)
- 秋、りん・りん・りん
短大一年の入江駒子が、いつものように授業を受けたとき、
気になる女性がいた。
一時限目の前に出会って嫌な気分になったが、その彼女が自分の目の前の
席に座ってきた。
出席票を回すときにちらっと見た名前は、井上美佐子であった。
ところが同じく二時限目も目の前に座った彼女が、出席簿をまわして
きたとき、その名前は田川恵里であった。
そして何とその後、彼女は一緒に昼食を取ろうと誘ってきた・・・
- クロス・ロード
美容院で聞き込んだ幽霊交差点の噂。
ひき逃げされた子供の父親が、その子供の絵を、ひき逃げされた
立体交差点のコンクリートの壁に描いており、それが非常に写実的で、
幽霊となって出歩いているという・・・
- 魔法飛行
学園祭では午前中、駒子は受け付けをまかされた。
野坂野枝という同じクラブの友人と。
そこへ、野枝の幼なじみという男性がやって来た。
彼は、UFOというか宇宙人を信じているという・・・
- ハロー、エンデバー
これまで、日常の何げない出来事を瀬尾さんに書き送っていた
駒子であったが、彼からの返事と同時に奇妙な手紙を受け取っていた。
三通目のそれには名前が書いてあり、そして自殺をほのめかす
内容であった・・・
いちばん初めにあった海
角川書店 (1996.8)
- いちばん初めにあった海
まわりの人がうるさくて、夜十分に睡眠がとれないために、
引っ越そうと思っている堀井千波。
引っ越しの準備をしようとまず本の整理を始めたところ、
読んだことのない本が出てきた。『いちばん初めにあった海』
そして、その本の間から、開封されていない手紙が出てきた・・・
- 化石の樹
暑い夏の日、僕はサカタさんと、植木の水やりのアルバイトをしていた。
そのサカタさんがある日入院をして、そこにお見舞いに行ったとき、
ある一冊のノートを渡された。
そこには、一人の女性の書いた記録があった・・・
ガラスの麒麟
講談社 (1997.8.25)
- ガラスの麒麟
「小説現代」'94年7月増刊号
2月22日の夜、直子の友人の安藤麻衣子が、何者かに刺し殺された。
葬式に出た父親の私は、帰りに養護教諭の神野先生に呼び止められた・・・
- 三月の兎
「小説現代」'96年1月号
女子高校の先生の小幡康子は、いつも生徒の厄介事に巻き込まれ、
うんざりとしていた。
そんな時、近所のお婆さんが、二年生の生徒に突き飛ばされ、時価百万円の
壷を壊してしまったと苦情を言ってきた・・・
- ダックスフントの憂鬱
「小説non」'96年9月号
中学二年の大宮高志は、いろいろ不満を持っていた。特に4月は憂鬱だった。
そんな春休みの4月1日の朝、近所に住む幼なじみの三田村美弥さんから
助けてくれという電話がかかってきた・・・
- 鏡の国のペンギン
「小説現代」'97年6月号
安藤麻衣子が通り魔に殺されて、2ヵ月以上が過ぎた頃、彼女の幽霊が
出るという噂が広がった。
そしてとうとう、小幡康子のクラスの成尾さやかが、トイレに落書きが
してあると訴えてきた・・・
- 暗闇の鴉
「ミステリマガジン」'97年8月号
サラリーマンの山内伸也は、自社の受付嬢の窪田由利恵とつきあっていた。
そして、絶対大丈夫と自信を持ってプロポーズしたとき、意外にも
答えはノーだった。理由を聞くと、最近手紙が届いたと、重い口を開いた・・・
- お終いのネメゲトサウルス
私は、死んだ娘の友人の応募作品である『ガラスの麒麟』を出版したいと
編集者の大宮に持ちかけていた。
その時、娘の学校の養護教諭の神野先生を見かけた・・・
ななつのこ
創元推理文庫 (1999.8.20)・・・東京創元社 (1992.9)
作中作の『ななつのこ』。
主人公で気の弱い、しかし心の優しいかけるくんは、サナトリウムにいる女の子の
あやめさんから、日常のいろいろな謎を解決してもらうという七作の短篇集。
その作者にファンレターを書いた入江駒子。
全く期待していなかったが、思いがけずに作者の佐伯綾乃さんから返信が届いた。
ファンレターに書いた日常の中の謎に、解答が付いて。。。
それ以来、手紙のやり取りが続くが・・・
- スイカジュースの涙
ある朝、少し早目に家を出て短大へと向かっていた私は、
イアリングをした女性が乳母車を押してやってくるのとすれ違った。
何か変な気がした。
その後しばらく行くと、駅までの道に、血の跡が点々と残っているのに
気がついた。
後日、それは近所の動物病院の奥様の弟がケガをしたものだと分かったが・・・
- モヤイのねずみ
高校のときのクラスメイトの紀美子と待ち合わせをして、渋谷で
開かれている尾崎炎の個展を見に行った。
私たちは、美術部に所属していたのだ。
その個展で30分ほどの間に、『悠久の時間』が変わってしまっていた。
100号の大きな油絵なので、オーナーやレジの女の子に見つからないように
持ち出すのは不可能である。一体、30分の間に何が起こったのか・・・
- 一枚の写真
私のアルバムは、一枚だけ写真が抜けている。
遠い記憶をたどると、橋本一美というおとなしい転校生が持ち出したのだろう
という事が大体分かる。
ところが、その写真が最近になって送り返されてきた。
彼女は、結婚をして子どもも生まれたのだと風の噂で聞く・・・
- バス・ストップで
春先の頃、私の良く使うバス停で、一人の老婦人が米軍住宅地との境の
金網と、道端のつつじの列との間にうずくまって、何かをしていた。
バスが来てしまったので、何をしていたのかは確かめなかったのだが。
そして次に見たときには、孫と思われる子どもといっしょであった・・・
- 一万二千年後のヴェガ
夏の暑さを避けるために入った、デパートの屋上のプラネタリウム。
そこを出たところに、ブロントサウルスの大きな風船(アドバルーン)が
あった。その翌日、そのブロントサウルスが約27kmも離れた新宿の
幼稚園で見つかったという。一体、どうやって運んだのか・・・
- 白いタンポポ
友人のふみさんにつれられて、ボランティアで小学校の夏期の合宿の
手伝いをすることになった。
その中に、真雪という、いつも一人でいることが好きな女の子がいた。
彼女は、タンポポを含む全ての花を白く塗るので、彼女の家庭環境
その他を知っている先生は心配していた。
その合宿の間、彼女には私がずっと付いていてあげることになった・・・
- ななつのこ
歯が痛くなり、歯医者に行った帰りに寄った本屋で、瀬尾さんに出会った。
彼はプラネタリウムで解説のアルバイトをしていたはずだが、その本屋でも
アルバイトをしていた。
そして、次回でプラネタリウムのアルバイトが終わるので、遊びに
来ないかと誘われた。
行ったところ、『ななつのこ』の表紙のイラストを描いた麻生美也子さんと、
彼女の娘である真雪ちゃんに出会うことになった。
そして、プラネタリウムの上映最中に、真雪ちゃんがいなくなった・・・
ささらさや
幻冬社 (2001.10.10)
- トランジット・パッセンジャー
「星星峡」1998年9月号
か弱くて頼りないサヤ。
彼女の夫は、生まれたばかりの赤ん坊のユウスケを残して、交通事故で
死んでしまった、、、彼女の目の前で。
ただ、まだ成仏できていない。漂っていて、一部の人には見えるらしい。
そして、その人には一度だけ、とりつくことが出来るらしい・・・
- 羅針盤のない船
「星星峡」1999年9月号、10月号
サヤには、身内が全くいない。
その上、ユウスケまで取り上げられようとしているらしい。
それは絶対に嫌だ。
彼女の、最後の親戚であった叔母さんは彼女に、佐々良市にある家を
譲っていた。そこへ引っ越してしまおう。
- 笹の宿
「星星峡」1999年12月号、2000年1月号
やっと引っ越してきたものの、手違いで電気や水道がまだなかった。
そこで、引っ越し屋の人に教えてもらった宿屋の笹乃屋に泊まった。
- 空っぽの箱
「星星峡」2000年5月号、6月号
以前住んでいた叔母さん宛に、宅配便が届いていたらしい。
ただしその中身は、梱包材のおがくずだけだった・・・
- ダイヤモンドキッズ
「星星峡」2000年9月号、10月号
サヤは、公園へ行くのが苦手だった。
いろいろ話しかけられたり誘われたりするのが苦手だったから。
そんなとき、河沿いの小さな公園を見つけ、それ以来よくここに来る。
- 待っている女
「星星峡」2000年12月号、2001年1月号
サヤの家の隣りには、ほとんど話をしないおばあさんが住んでいた。
どうやら彼女には、夫の姿が見えるらしい・・・
- ささら さや
「星星峡」2000年6月号、7月号
ある夜、ユウスケが高熱を出した。
隣りの手嶋珠子さんが様子を見にきてくれ、指示をしてくれた。
ところが、病院へ行って診察を受け、子供だけあずけて帰って来ると、
全く見知らぬ人に連れて行ってもらっていたことが分かった・・・
- トワイライト・メッセンジャー
「星星峡」2000年7月号
サヤの夫のトランジット・パッセンジャーの期間はもうわずか。
彼は、最後にユウスケにのりうつり、細工をした。
ユウスケの最初に発する言葉は『パパ』となるように。。。
もう、サヤの前にあらわれることはないだろう。
そう、サヤは、弱くも頼りなくもないという事に気付いたから、
安心して成仏していくだろう。バイバイ!
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