北村薫
1949年、埼玉県生まれ。ワセダ・ミステリ・クラブ出身。
高校の先生をしながらミステリーを書いていた。
空飛ぶ馬
創元推理文庫 (1994.4.1)・・・東京創元社 (1989.3)
- 織部の霊
私立大学文学部二年の私は、近代文学概論の加茂先生に誘われ、
大学の先輩の春桜亭円紫さんのインタビューに行った。
その帰りにおでんのお店に入り、雑談をした。
その中で加茂先生が、夢で何度も見た人の絵に、後で出会うことになった
という話をした。
円紫さんはこの話を聞き、1ヵ月で解決しますと言って帰っていった・・・
- 砂糖合戦
渋谷駅近くの紅茶の喫茶店で話をしていた私と円紫さん。
別の席では、三人の女の子が座っていたが、紅茶に砂糖を何杯も
入れているようである。又、入れようとするのを返しているのも見えた。
一体何をしているのか?
- 胡桃の中の鳥
私は、友人の正子とともに東北地方へと旅に出た。
蔵王で帰省中の友人江美と合流し、円紫さんの独演会へ。
翌日、正子と二人はハイキングをし、山頂の駐車場で江美と再び合流。
ところが、江美が車をあけている間に座席のカバーが取られて
しまっていた・・・
- 赤頭巾
歯のかぶせものが取れてしまい、歯医者に行った待合い室である女性と
出会った。
彼女は、中・高そして今も付き合いのある女性の家で起こった話を
私にした。
日曜日の夜9時、その友人の目の前にある公園に、赤い衣服を着た
少女が出てくるのだと言う。
そして、その夜にも、少女が見えた・・・
- 空飛ぶ馬
隣に住む小町さんのお孫さんの、クリスマス会でのビデオ撮影係を
頼まれた私。この会の最後に、サンタクロースがやってきた。
《かど屋》の国雄さんである。
毎年サービスをしているらしいが、今年はもう一つ、幼稚園に
木馬のプレゼントがあると言う。
ところがその夜、小町さんの娘さんの話では、夜中にその木馬が
なくなっていたという。ただし、次の日にはちゃんと元に戻っていた。。。
夜の蝉
創元推理文庫 (1996.2.16)・・・東京創元社 (1990.1)
- 朧夜の底
友人の正子は、神田の本屋でアルバイトを始めた。
それを見学がてら立ち寄ったところ、平積みの所の本が反対に置かれていた。
次に来てみると、今度は上下が逆になっているものがあった。
そして、円紫さんと連れだって来たとき、今度は一見何もないように
思えたが、本の函と中味とが交換されていた・・・
友人高岡正子と恋心。
- 六月の花嫁
江美さんに誘われて、軽井沢の別荘へ行った。
そこは、江美さんのサークル仲間のお嬢さま、峰さんの別荘。
他に、葛西さん、吉村さんが一緒だった。
そこで、チェスの女王の駒がなくなったことが分かり、それが台所の
卵入れで見つかり、そこにあった卵がなくなり、それが・・・
友人庄司江美と、結婚。
- 夜の蝉
姉が、ボーイフレンドとちょっと気まずくなった。
それを取り返そうと、もらった歌舞伎の券を一枚、郵送した。
ところが、やって来たのは噂になっていた別の女性・・・
姉と、家族。
秋の花
創元推理文庫 (1997.2.21)・・・東京創元社 (1991.2)
今年は、私の母校の高校では文化祭はしない。
事故で、生徒の一人が校舎の屋上から墜落死したから。
その彼女、津田真理子は、小学校に上がる前から和泉利恵と親友だった。
事件後の和泉さんは、さすがにショックが大きかったのだろう、
最近は登校もしていないらしい。
3年違いだから、同じ学校に通ったのは小学生のときだけだけど、
私は近所の二人を良く知っていた。
そんな時、私の家のポストに、教科書のコピーが投げ入れられていた・・・
六の宮の姫君
創元推理文庫 (1999.6.25)・・・東京創元社 (1992.4)
みさき書房でアルバイトを始めた私。
田崎先生の全集を出すことになって、その資料集めやコピーがその内容だ。
卒論のテーマも、芥川に決まってきた。
そんなある日、田崎先生が出版社にやってきた。彼は芥川氏に直接あった事が
あると言う。
そこで話を伺ってみると、芥川氏は『六の宮の姫君』に触れて、
「あれは玉突きだね。・・・いや、というよりはキャッチボールだ」
という謎めいた言葉をおっしゃったと言う。
この日から、私のこの謎解きが始まった・・・
謎物語
中公文庫 (1999.5.18)・・・中央公論社 (1996.5.7)
ミステリー、特に本格物と呼ばれるものについて、その定義からはじめ、
手品等の謎との関連、トリックの新しさとその使いまわし、
そこから生まれる独自性、そしてそれぞれの読者による解釈まで、
思うところをざっくばらんに書き綴った本。
たくさんの文章の引用がしてあって、その原作を読んでみたいと思うものも多いです。
覆面作家は二人いる
角川文庫 (1997.11.25)・・・角川書店 (1991.11)
- 覆面作家のクリスマス
『推理世界』編集部に勤める岡部良介。
左近先輩から原稿を手渡され、翌日早速行って来いと言われる。
作者は新妻千秋。行ってみたら、19歳のお金持ちの御令嬢・・・
良介の隣の女子校で、殺人事件が発生した。何も取られたものはないのに、
後輩のあげたプレゼントだけがなくなっているという・・・
兄の優介は警視庁の刑事だ。話を聞いていた良介は、千秋に話す。
すると、早速出かけようということに・・・
- 眠る覆面作家
良介は、千秋に原稿料を渡そうと、水族館で待ち合わせをした。
ところが、前日徹夜だったため寝すごしてしまった。。。
あわてて行ってみたものの、もう千秋はいなかった。
ところが家に帰って来ると、兄が腰を痛めたという。
聞いてみると、千秋らしい少女が優介を投げ飛ばしたという。。。
と同時に、そこでは誘拐事件の身代金引き渡しが
行なわれようとしていたのだ・・・
- 覆面作家は二人いる
左近先輩の名前は雪絵。姉は警備員をしていて、月絵。
月雪花を完成させるために、産んだ子どもを花絵と名付けた。
で、月絵姉さんの所で、最近万引が多発しているという。
そんな時、花絵の持ち物に、一万円札、そしてたくさんのCDがあることに
気付いた先輩は・・・
覆面作家の愛の歌
角川文庫 (1998.5.25)・・・角川書店 (1995.9)
- 覆面作家のお茶の会
千秋さんと会談中に、ライバル出版社の静さんが彼女に面会に来た。
話を聞いてみると、住所と名前は刑事である兄が洩らしたらしい。
彼女は手土産にパティスリー・スズミのサンマルクを持って来ていたが、
それを食べながら、その店の家族の話に。
若奥様は、どうやらケーキ作りに非凡な才能があるようで、フランスまで
行って勉強して来たお義父さんが非常に関心した。
そこまではよかったものの、突然その義父が山寺に籠って3年間の修行に
入ってしまったと言う。。。若夫婦も含めて外部の人とは面会謝絶。。。
- 覆面作家と溶ける男
東京下町の小学低学年の女の子二人が誘拐された。
詳細は違うものの、二人はそっくりだという。
そこへもって、静さんの甥がその顔に似ていると言う。。。
その甥に話を聞いてみると、下校途中に見知らぬおじさんから
声をかけられたという・・・
- 覆面作家の愛の歌
南条劇場の看板女優、河合由季が殺された。
恋人の中丸さんは、元恋人の南条さんを疑っているという。
ただし、その南条さんのアリバイを、自分が証明してしまっている。
そう、その殺害時刻には、二人で揃って劇場事務所にいたという・・・
冬のオペラ
中央公論社 (1993.9.20)
- 三角の水
『別冊婦人公論』1992年冬号
高校を卒業後、東京に出て来て叔父さんの不動産会社で事務職として
働いている姫宮あゆみ。
その会社のあるビルの二階に、巫弓彦という名探偵がやってきた。
といっても開店休業状態で、生活費を稼ぐためにアルバイトに明け暮れている。
あゆみは、そこの書記にしてもらった。
といっても報酬はなく、好きでやっているだけなのだが・・・
ある日、会社の同僚の佐伯さんの妹がやって来た。
彼女は、大学院で化学を専攻しているという。
そこで、研究成果のスパイ活動が行なわれて、疑われているという・・・
- 蘭と韋駄天
『別冊婦人公論』1992年春号
会社の大関さんからただ券をもらって、山野草展覧会へやってきた。
そこで、二人の女性が話し合っているのを聞いてしまった。
そう、「どこかに名探偵がいないかしら」という話を。
早速話を聞いてみると、蘭の株を友人に盗られたのではないかと
疑っているという。ところが、その友人にはアリバイが・・・
- 冬のオペラ
『小説中公』1993年7月号・8月号
有給休暇を取って、京都に旅行に出た。
そこで偶然、『蘭と韋駄天』の時に出逢った椿さんに出会った。
彼女は、京都の大学でフランス文学を教えている講師である。
二日目、彼女と待ち合わせて街を案内してもらう予定が、
彼女の研究室の教授が殺されてしまったという・・・
覆面作家の夢の家
角川文庫 (1999.10.25)・・・角川書店 (1997.1)
- 覆面作家と謎の写真
取材で千秋さんとディズニーランドに出かけた。
そういえば、静さんが、不思議な話をしていた。
昨年、友人と一緒にディズニーランドに行った時に撮った写真を見たら、
同僚の姿が映っていたという。でもその人は海外勤務中。もちろん
その時、日本には帰って来ていなかった・・・
- 覆面作家、目白を呼ぶ
新人作家、金山真奈美に会いにいった。
ファミリーレストランで打ち合せをした後、職場の上司が来ているというので、
インターチェンジまでの近道を案内してもらうことになった。
ところがその帰り道、その上司の車がハンドル操作を誤り、
崖から転落してしまった・・・
- 覆面作家の夢の家
ミステリ作家の由井美佐子先生は、ドールハウスを趣味にしている。
歌人、学者評論家の藤山秀二さんも趣味は同じである。
ある日、藤山さんから由井さんへ、ドールハウスで作ったミステリが
送られて来た。是非、その謎を千秋さんに解いて欲しいという・・・
月の砂漠をさばさばと
新潮社 (1999.8.25)
- くまの名前 『新井さんの家に来たくまさん−−−あらいぐまさん』
- 聞きまちがい 『般若大行進−−−ワンニャン大行進』
- ダオベロマン 『ドーベルマンさんの習字の署名−−−ダオベロマン』
- こわい話 『そういう感じる力があるっていうのが、とっても嬉しいな』
- さそりの井戸 『自然の色−−−さそりの井戸』
- ヘビノボラズのおばさん 『ヘビノボラズ−−−トリトマラズ』
- さばのみそ煮 『月のー砂漠を さーばさばと さーばのーみそ煮が
ゆーきました』
- 川の蛇口 『子供のやることにも、理屈があるのね』
- ふわふわの綿菓子 『自分が、<さき>ではなく、
<美咲>になっていたかも知れない』
- 連絡帳 『わたし、今、男の子と交換日記やってるんだ』
- 猫が飼いたい 『お母さんの目からは、いつの間にか、
涙がぽろぽろと溢れていました』
- 善行賞のリボン 『そんなに嬉しいのかな?と思いながら、さきちゃんは
シャッターを押しました』
スキップ
新潮社 (1995.8.20)
文化祭の日、雨で後半が中止になり、家に帰ってうたた寝をした一ノ瀬真理子。
眠りから覚めてみたら、そこは25年後の世界だった・・・
ここでは、主人、そして子供までいる・・・
戸惑いつつも、新しい世界で生きていくことになった。。。
盤上の敵
講談社 (1999.9.10)
働いていた工場で強盗を働き、逃走途中に鴨猟に行く途中の人の
持っていた散弾銃を盗んで、私の家に立てこもった犯人。
私は、この犯人を逃げ出させる手伝いをすることにした。
それには、深い訳があったのだ・・・
水に眠る
文芸春秋 (1997.10.10)・・・文芸春秋 (1994.10)
- 恋愛小説
「オール讀物」1992年8月号
保険会社の営業をやっている美也子。
ある時から彼女の元に、無言の電話がかかってくるようになった。
ただ、嫌な感じがするのではなく、心の落ち着くピアノの音が
聞こえてくる通話だった・・・
- 水に眠る
「オール讀物」1991年7月号
セールスをしている私は、同期の西田さんに、小さなバーに
つれていってもらった。
そこで出されたウィスキーの水割りは、不思議なものだった。
水が特別なのは分かるが、会話もせずに一人でひたれるものだった・・・
- 植物採集
「オール讀物」1992年10月号
京子の勤める編集部には、同い年で後輩の俊一がいた。
彼の趣味はインド仏教。
そんな彼がいつもと違うネクタイをしてきているのに気付いた・・・
- くらげ
「オール讀物」1992年1月号
妻を亡くしたばかりの岡崎は、三歳になる娘の時子をビニールの
プールに入れて遊ばせていた。その時時子が、洗面器を被って出てきた。
岡崎は家電メーカーに勤めていたが、それを見て個人クーラーを
ひらめいた。
15年後、この個人クーラーは『くうちゃん』という愛称で爆発的に
売れていた。しかし・・・
- かとりせんこうはなび
「オール讀物」1994年9月号
蚊が蠅を刺すようになる薬。
この薬は、爆発的に売れ、そのうち作者にも想像もつかなかった
使い方をされるようになった。。。
全米蠅蚊空中戦協会主催の公式戦闘・・・
- 矢が三つ
夏には、新しいパパが来ることになるらしい。
そうここは、男女の比率が2:1、妻が一人に夫が二人が普通の世界。
ママが、第二パパと結婚することになったという事・・・
- はるか
「オール讀物」1993年1月号
駅前のパン屋が店を閉めるため、今の店をそこに移すことにした。
英造の店は本屋である。
改装をしていると、一人の女子高生がアルバイトはいらないかと
聞いてきた。それが、柳田はるかだった・・・
- 弟
「オール讀物」1994年6月号
夢と現がまじり始めた老人。彼の心の中の考えは・・・
- ものがたり
「オール讀物」1993年12月号
テレビ局のディレクターの耕三の家へ、妻百合子の妹の茜が、
大学受験のために田舎から出てきていた。
仕事が忙しかったため、7日間の滞在中にやっと会えたのは、
彼女が帰る日の朝だった。そこで、彼女は物語を始める・・・
- かすかに痛い
「オール讀物」1993年7月号
同じ大手精密機器メーカーに勤める私と彼。
人目を避けるようにして旅に出たが、その旅先で、眼鏡を歪めてしまった。
仕方なく地元の眼鏡屋に行って直してもらったが、、、
ターン
新潮社 (1997.8.30)
版画をしながら、それだけでは食べていけないので美術教室を手伝っている森真希。
ある日、車の運転中に交通事故を起こしてしまう。
気がつくと、自宅の二階の部屋でうたた寝をしていた。
ところが、まわりには誰もいない、、、そして、午後3時17分前後になると、
時の軸がターンして戻ってしまい、同じく自宅の二階の部屋でうたた寝を
しているという毎日が続くようになった・・・
リセット
新潮社 (2001.1.20)
水原真澄は、小学生のときに東京から神戸へ引っ越してきた。
彼女の最初の記憶は、流れ星。。。
そう、約33年に一度、大量に見られるという獅子座の流星群。
女学校へ通い始めて3年目、近くの飛行艇工場で働いていたが、
やがてそこも爆撃されてしまい、密かに想っていた人も死んでしまった・・・
朝霧
創元社 (1998.4.20)
- 山眠る
「オール讀物」1995年4月号
地元の本屋をついだ小学校時代の同級生の鷹城君から、同じく同級生だった
本郷美紗ちゃんのお父さんが、エロな本を買い込んでいるという話を聞いた。
その真相を、円紫さんは・・・
- 走り来たるもの
「オール讀物」1996年7月号
先輩の天城さんが時々仕事をいっしょにやっている赤堀さんが、リドル・
ストーリーを書いたと言う。本当のリドル・ストーリーではなくて、
最後の二行だけ伏せた話だったのだが・・・
- 朝霧
「オール讀物」1997年11月号
私の祖父は、日記を残していた。その中に、鈴ちゃんという下宿先の
娘さんから渡された謎の漢字列が載っていた。『忍 破・・・』
謎のギャラリー 名作博本館
新潮文庫 (2002.2.1)・・・マガジンハウス (1998.7)『謎のギャラリー』加筆訂正版
古今東西の小説について、女性編集者との対談という形を取りながら紹介していく。
非常にたくさんの作品が紹介されており、一部は「謎の部屋」「こわい部屋」
「愛の部屋」という別冊に収録してある。
謎のギャラリー −−謎の部屋−−
新潮文庫 (2002.2.1)・・・マガジンハウス (1998.7) 『謎のギャラリー』等加筆訂正
- 大人の絵本 (宇野千代/画・東郷青児)
『大人の絵本』角川春樹事務所 (1997.8)
- 犯罪
日暮れに弟と邸町を歩いていると、道端の盥の中に、足が四本
入れてあるのが見えてきた・・・
- びい玉
いつもどおり、夜中に厠へ行くとき、雨戸が開いていて、
弟が庭にしゃがみこんでいるのが見えた・・・
- 烏賊
栄養料理研究家の小母さんに、眠れないで困っていると言ったら、
「烏賊をおあがんなさい、烏賊を。」と言われた・・・
- 桃 (安部昭)
『安部昭18の短篇』ベネッセコーポレーション (1987.4)
月の出ている冬の真夜中、子供の私が母と、西隣の町に通じる畑中の
一本道を、桃の実を満載した乳母車を押している記憶。
これは、どこまで本当のことだったのだろう・・・
- 俄あれ (里見[弓享])
『里見[弓享]全集1』筑摩書房 (1977.10)・・・? (1916)
七月の午後、練兵場の近くの友人の家を訪問した。
電車を降りたときには真夏の太陽がギラギラと照りつけていたものが、
急にもくもくと雲が現れ、友人の家に着いたときには大雨が降り出した。
友人は近くの川へ水浴に行っているらしく、細君がいるだけであった。
雨を避けようと、雨戸を閉めてまわると、家の中は真っ暗に
なってしまった・・・
- 遊びの時間は終わらない (都井邦彦)
『小説新潮』新潮社 (1985.1)
週末の吉祥寺、三多摩相互銀行の裏口に車が止められ、男が一人入って行った。
窓口にカバンをのせ、金を入れろという紙切れを見せる。
これは、吉祥寺警察署と三多摩相互銀行が共同で行った防犯訓練であった。
しかし・・・
- 絶壁 (城昌幸)
『日本探偵小説全集 城昌幸 小酒井不木編』春陽堂書店 (1954)
高い高い高い絶壁。その上に、大きな大きな大きな変化が居た。
その絶壁を、人がよじ登ろうとしている、、、形を変えながら・・・
- 領土 (西條八十)
『砂金』尚文堂書店 (1919.6)
夫は、よく諸国を旅した。その楽しさを、妻に分けてあげられず、
女の身を憐れんだ。
帰ってすぐ妻を気遣って声をかけると、彼女は家の中で楽しそうに空想に
ふけっており、女には女の領土があることを了解した。
- 賢い王(The Wise King)/柘榴(The Pomegranate)/諸王朝(Dynasties) (カリール・ジブラン(Kahlil Gibran)/小森健太郎訳)
『漂泊者』壮神社 (1993)
- 賢い王(The Wise King)
昔、ウィラニを賢い力のある王が統治していた。
その都には、井戸が一つしかなかった。
ある日魔女が、その井戸に不思議な液体七滴を落とし、これで
「この水を飲むものは気がふれるだろう」と言った・・・
- 柘榴(The Pomegranate)
昔、私が柘榴の実の中に住んでいた頃の話・・・
- 諸王朝(Dynasties)
イシャナの長年の宿敵である残酷王ミラーブが死んだという知らせが
あった。その直後、イシャナの女王が男の子を産んだ。
真の預言者は言う。
「ミラーブ王の魂が、あなたの息子の身体に入った」と・・・
- 豚の島の王女(The Queen of the Pig Island) (ジェラルド・カーシュ(Gerald Kersh)/西崎憲訳)
『英国短篇小説の愉しみ1 看板描きと水晶の魚』筑摩書房 (1998.12)・・・"The Brighton Monster" (1953)
ポルコジト島に上陸した船長は、巨大な人の骨、二人の小人の骨、そして
手足のない骨の4つの白骨を発見した。
最初、猿と人間とを結ぶ存在を発見したのだと思ったのだったが、
違うことが分かった。
手足のないラルエットの体のグラウチ・バッグの中からメモが
見つかったからだ。
これは、そこに記述されていた悲しい物語である・・・
- どなた?(Wer ist man?) (クルト・クーゼンベルク(Kurt Kusenberg)/竹内節訳)
『壜の中の世界』国書刊行会 (1991.10)
深酒をした次の朝、ボーラス氏は、家族からも子供からも親友からも
他人の目で見られた・・・
- 定期巡視(Routine Patrol) (ジェイムス・B・ヘンドリクス(James B. Hendryx)/桂英二訳)
『別冊宝石』 (1958.3)
ユーコン地方警備の騎馬警官隊のダウニー伍長は、グッドラックへ向かう途中、
道に迷ってある小屋へと入り込んだ。
そこには、一人の老人が死体となっていた。
調べてみると、殺されたものである・・・
- 埃だらけの抽斗(The Dusty Drawer) (ハリイ・ミューヘイム(Harry Muheim)/森郁夫訳)
『エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン』 (1957.4)
ローガンは、銀行の出納窓口のトリットに金をごまかされた。
実際には、トリットが自分の事務手続きのミスをごまかすために、
ローガンの入金額を少なく処理してしまったのだ。
ローガンは、いつかその仕返しをしてやると、ずっと考えていた・・・
- 猫じゃ猫じゃ (古銭信二)
『宝石』 (1960.4)
京阪神相互銀行今里支店の支店長、餠京介は、監査課の職員の失踪とともに、
松田産業にからむ奸計の罠に陥った。
主謀者は黒田という資産家と思われる。
新聞発表で第百相互銀行が同じ手口にやられた事を知り、黒田のたくらみ
という疑惑を深め、彼を殺害することにした。その方法は・・・
- 指輪/黒いハンカチ (小沼丹)
『小沼丹作品集2』小沢書店 (1980.2)・・・『黒いハンカチ』 (1956)
- 指輪
A女学院の先生であるニシ・アヅマは、友人から指輪の鑑定に
立ち会ってくれと頼まれていた。
その友人は、恋人が突然の交通事故で亡くなってしまったのだが、
その前に指輪を贈られていたのだ。
ところがその恋人の姉が、その指輪は母の形見だから、鑑定してもらって
もし本物なら相当の値段で買い取らせて欲しいと言ってきていると言う。
そこで、会うことにしたのだが・・・
- 黒いハンカチ
ニシ・アヅマ先生が試験監督をしている時、二人の男女が学校を
訪問してきた。女性が先に入って、後から男性を呼ぶ。
ところが、そこで聞こえてきたのは、「お這入んなさいな」・・・
- エリナーの肖像(Portrait of Eleanor) (マージャリー・アラン(Marjorie Alan)/井上勇訳)
『十五人の推理小説』東京創元社 (1960.6)・・・『?』 (1947)
ジューディーとビルは、メイヒュー大佐がグラマーシーを誰か信頼出来る人に
貸出したいと考えているのを知り、自分たちが名乗り出ることにした。
その書斎には、メイヒュー大佐の姪のエリナーの肖像画がかけてあった。
彼女が亡くなる直前に描かれたものであった。
そこにはいろいろな物が描かれていたが・・・
- 返済されなかった一日(Il giorno non restituito) (ジョヴァンニ・パピーニ(Giovanni Papini)/河島英昭訳)
『逃げてゆく鏡』国書刊行会 (1992.12)
老嬢の一人の話である。
彼女は、22歳の終わりに訪れてきた一人の老紳士とある奇妙な契約をした。
老紳士の娘の為に、一年分を貸す変わりに、後に必要なときに一日単位で
返済していくという。。。
彼女は40歳を過ぎ、若さが失われてくると、外出するときに限って
返済を申し出て、一瞬の若さを取りもどしていた。
ところが、その契約の日が残り一日となり、その一日をどう使って良いか
決心し兼ねていた。
私は、その一日を自分に下さいと頼み込んだ・・・
- 私のノアの箱舟(My Noah's Ark) (M・B・ゴフスタイン(M.B. Goffstein)/落合恵子訳)
『私のノアの箱舟』アテネ書房 (1980.6)
もう90年以上昔に、父親が作ってくれた箱舟。ノアの夫婦に動物達。
小さな私の友達でした。結婚した夫は、箱舟を宝物のように新居に持ち込み、
子供達には箱舟の話をして聞かせました。
もうみんないなくなってしまいましたが、全てが七色の虹になって
私の心を暖めてくれるのです。
謎のギャラリー −−こわい部屋−−
新潮文庫 (2002.3.1)・・・マガジンハウス (1998.7) 『謎のギャラリー』等加筆訂正
- チャイナ・ファンタジー (南伸坊)
『李白の月』マガジンハウス (2001.9)
- 巨(おお)きな蛤(はまぐり)
大きな蛤を見つけた主人公。中を開けてみると、一本の刀が入っていた。
家に持って帰って、人に呼びかけてみると・・・
- 家の怪
家の中でいろいろと奇妙な出来事がおこり、道士さまにお願いしたが、
驚愕して逃げられてしまった。
その後三人の息子から、進士の試験に受かったという通知が・・・
- 寒い日
晋の大康二年の冬は、寒かった・・・
- 七階(Sette piani)/待っていたのは(Non aspettavano altro) (ディーノ・ブッツァーティ(Dino Buzzati)/脇功訳)
- 七階
『七人の使者』河出書房 (2000.6)
ジュゼッペ・コルテは、三月のある朝、その有名な病院へやってきた。
七階建ての建物で、病気の重さによって入院する階が違っているという。
最初彼は、最も軽い患者のいる7階に入院させられたが、断わり
切れない理由により、どんどん重傷患者の下の階へと移されていく。
そして、瀕死の患者ばかりの一階へと移され・・・
- 待っていたのは
『待っていたのは』河出書房 (2002.6)
長時間の列車の旅の後、アントニオとアンナ夫妻は疲れ切って、
ある大きな町に降り立った。乗り継ぎの都合上、この町で一泊する。
ところが、どこのホテルも、満室だった・・・
- お月さまと馬賊/マナイタの化けた話 (小熊秀雄)
『小熊秀雄童話集』創風社 (2001.4)
- お月さまと馬賊
ある山奥に馬賊が住んでおり、ふもとの町へ押しかけて、さんざん
荒らしまわったあげくにいろいろな品物を盗んで帰った。
馬賊は祝いの酒宴をあげていたが、馬賊の大将は月にひかれて
散歩に出た・・・
- マナイタの化けた話
昔、アイヌの村では、奇怪な帆前船が現われると小男が降り立ち、
しゅ長を連れて帰っていってしまうという事があった。
ある村でもこの小男がしゅ長を連れていこうとしたが、彼の妻が
この小男をののしって、「腐れイタダニめ――」と叫んだ。すると・・・
- 四つの文字 (林房雄)
『アンソロジー 人間の情景1<運命の法則>』文春文庫 (2002.9)・・・(1949)
私は、旅行者として中国を旅していたが、南京でその部長――
日本では大臣――である彼と出会った。
戦後間もなく、部長の自殺の新聞記事を読んだが、彼の自殺は、きっと
毒薬によるものだと思った。それは・・・
四つの文字・・・「学我者死」――我を学ぶ者は死す。
破滅を知った上での享楽。。。
- 煙の輪(Smoke Rings) (クレイグ・ライス(Craig Rice)/益田武訳)
「エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン」(1960.8)
刑事弁護士のジョン・J・マローンは、その女性と話をしていた。
彼女は、夫を殺害したという。計画的な犯行だった。
どうして殺したかというと・・・
- お父ちゃん似(A Man Like His Daddy) (ブライアン・オサリバン(Brian O'Sullivan)/高橋泰邦訳)
「エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン」(1959.1)
ダブリン郊外のクロンダルキンに住む僕たち。
近所のマイケル・メイアーと遊ぶことも多かった。
彼の母親は、病院へ行ったきり帰ってこなくなった。
そして彼の父親は、この9月に寄宿学校に入れることにしたらしい。
その時彼は、カウボーイごっこをしようと言いだした・・・
著者が9歳の時の作品らしい...
- 懐かしき我が家(I used to live here once) (ジーン・リース(Jean Rhys)/森田義信訳)
『ニュー・ゴシック』新潮社 (2002.9)
彼女は川のほとりに立ち、以前住んでいた家の周辺の風景を思い出していた。
彼女の以前住んでいた家は、今は人手に渡っており、家の前には見かけない
子供達が立っていた。彼らに近づいて声をかけたが・・・
- やさしいお願い (樹下太郎)
『プロムナード・タイム』東方社 (1963.8)
子供を交通事故で亡くした母親が、事故の加害者の若者にお願いした
やさしいお願い。それは・・・
- どなたをお望み?(The Candidate) (ヘンリィ・スレッサー(Henry Slesar)/野村光由訳)
『夫と妻に捧げる犯罪』ハヤカワ文庫 (1974.4)
ある日、バートン・グランザーの元へと手紙が届いた。
そして、ある人に会うことになった。彼は、ある秘密結社の人間だと言った。
彼らの仕事は・・・
- 避暑地の出来事(Getting Away From It All) (アン・ウォルシュ(Ann Walsh)/多賀谷弘孝訳)
『安らかに眠りたまえ 英米文学短編集』海苑社 (1998.3)
ある女が、山小屋を借りた。そこへ子供達と共にやってきた。
初めは鼠が出るところだったが、掃除をし、庭の手入れをするうちに、
なんとなく住みやすくなってきた。
そんなある日、すぐ近くに山小屋があることに気付いた。
扉は、板が打ちつけられて閉じられていたが。
そして、夜になるとパーティーの声が聞こえてくることに気付いた・・・
- ねずみ狩り(The Graveyard Rats) (ヘンリィ・カットナー(Henry Kuttner)/高梨正伸訳)
「ミステリマガジン」(1967.8)・・・(1936)
セイレムの最も古い墓地の番人であるマッソン爺さんは、死体を掘り返して
金品を奪っていた。
ところがその墓地には、巨大なねずみが住み着き、繁殖していた。
しかもこのねずみたち、死体を奪っていくのであった。
ある日、死体を掘り返してみると、丁度死体がねずみの穴に引きずり込まれる
所であった。マッソン爺さんは、それを追いかけて穴へと入り込んだ・・・
- 死者のポケットの中には(Contents of A Dead Man's Pocket) (ジャック・フィニイ(Jack Finney)/福島正実訳)
『世界ミステリ全集18/37の短編』早川書房 (1973.6)
トム・ベネクは、妻と一緒に映画を見に行く誘惑を振りきり、仕事の
報告書を作ることにした。妻を見送って玄関のドアを閉めるとき、
風が吹きこんで、報告書の下書きをした黄色い紙が吹き飛び、ビルの
出っぱりの上に飛び出した。彼は、これを作るのに2ヵ月かけたのだった。
ここは、ビルの11階。だが彼は、それを拾いにいくことにした・・・
- 二十六階の恐怖(Man with a Problem) (ドナルド・ホーニグ(Donald Honig)/稲葉迪子訳)
「ヒッチコック・マガジン」(1960.10)
カール・アダムスは、ホテルの26階の横桟に立っていた。
前日の夜、妻が睡眠薬を飲んで自殺をしたのだ。
彼女は浮気をしていたが、それでも彼は彼女を愛していた。
変わる変わる人がやってきて、飛び降りを踏み留まるように説得した。
最後に、巡査が説得し、それに応じるかに見せかけたが・・・
- ナツメグの味(The Touch Of Nutmeg Makes It) (ジョン・コリア(John Collier)/矢野浩三郎訳)
『美酒ミステリー傑作選』河出文庫 (1990.7)
大企業の助成金で運営している鉱物学研究所のローガンと私は、
新人のJ・チャップマン・リードという神経質な男と仲良くなった。
ところが、実は彼は無罪にはなったものの、友人を殺害した罪で裁判に
かけられていたことを新聞記者の友人から聞いた・・・
- 光と影(Свет и Тень) (フョードル・ソログープ(Фёдор Сологуб)/中山省三郎訳)
『かくれんぼ 白い母 他二篇』岩波文庫 (1937.12)
12歳の少年ワロージャ・ロヴレフは、母親のエヴゲーニヤ・ステパノヴナ、
そして使用人の3人で暮らしていた。彼は優秀な少年だった。
ある日彼は、新聞紙の中に一冊の小さな小冊子を見つけた。
その中には、影絵の作り方が図入りで説明してあった。
それから、母親に隠れて影絵に熱中するようになっていった・・・
- 斧(Lia hache d'or) (ガストン・ルルー(Gaston Leroux)/滝一郎訳)
「ミステリマガジン」(1967.5)
ゲルサウという湖のほとりの小さな停車馬町の宿での話。
ピアノを弾いてくれて楽しませてくれた婦人が去っていくというので、
宿の人たちが相談して、小さな斧のメダルのついたブローチを
プレゼントすることにした。
ところがそれを渡したとき、箱を開けて中身を見たとたん、彼女はそれを
湖に投げ捨ててしまった・・・
これは、その彼女の語った昔話である・・・
- 夏と花火と私の死体 (乙一)
『夏と花火と私の死体』集英社文庫 (2000.5)
9歳の夏、私は、同級生の橘弥生ちゃん、それに彼のお兄ちゃんの健くんと
いつものとおり遊んでいた、、、弥生ちゃんの家の裏の森の木に登って。
そこで私は、話の成行きから、健くんが好きなことを弥生ちゃんに話した。
ふとしたはずみだった。弥生ちゃんは私を突き落とし、そして私は死んだ・・・
謎のギャラリー −−愛の部屋−−
新潮文庫 (2002.3.1)・・・マガジンハウス (1998.7) 『謎のギャラリー』等加筆訂正
- かくれんぼう (西村玲子)
「読売家庭版」昭和62年8月号 (1987.8)
新婚旅行でヴェニスへ行った。この街でかくれんぼをしよう。最初は夫が鬼。
うまく逃げ通せたけど、私は、隠れたままでどこにもいなくなってしまった
子供になってしまった・・・
- 猫の話 (梅崎春生)
『梅崎春生全集3』沖積舎 (1984.7)
大通りに面した運送屋の二階に、貧乏な若者と一匹の猫が住んでいた。
ある日、その猫が大通りの車にひかれて死んだ。
それを見ていると、平らに伸ばされ、乾燥し、端から少しずつ車に
持って行かれ、、、そして最後に何もなくなった・・・
- なにもないねこ (別役実)
『アンソロジー 人間の情景7<別れのとき>』文春文庫 (1993.3)
みみがひとつでめがみっつのねこ、めがひとつでしっぽがにほんのねこ、
はなのあながひとつでくちがふたつのねこ、おへそがなくてあしが
ごほんあるねこ。それらにまじって、なにもないねこもいました。
なにもないので、だれにもなにもみえません・・・
- 小さな少年のおぼえがき (ホセ・マリーヤ・ペマン(Jose Maria Peman))/会田由訳
『新版中学生全集91 南欧小説選』筑摩書房 (1962.4)
新しいイギリス人の女の先生ミス・ラフが、家庭教師をしてくれる
ことになった。ところが彼女は、僕のお兄さんパブロと恋人になった。
お母さんは面白くなくなって、ミス・ラフを追い出してしまった・・・
- これが人生だ(This is the Life) (シャーリー・ジャクスン(Shirley Jackson)/大山功訳)
「エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン」昭和35年8月号 (1960.8)
ジョセフは、初めての一人旅に出掛けた。
といっても、電車で三時間程のおじさんの家に遊びに行くだけだ。
それでも母親は、心配でどうしようもないようであった。
そして、その電車の中で、一人の女性と出会った・・・
- 歌の作りかた (阪田寛夫)
『桃次郎』楡出版 (1991.9)
僕はタケジがあまり好きじゃない。
その彼が先日の学級会で、班ごとに歌をつくりっこしようと言いだした。
クラスのアイドルよし子に気に入られたいと考えているのだと思った。
数日後、彼が何気なく書いていた歌詞に文句をつけた。
それで僕が、歌詞を作ることになってしまった。
明日の朝、学校へ行くまでにあと十一時間しかない・・・
- 親指魚 (山下明生)
『新潮現代童話館1』新潮文庫 (1992.1)
幸子は塾からの帰り、電車の中で父親を見かけた。
父はネクタイの襟元をだらりとゆるめ、首をたれて、天津甘栗を夢中で
食べていた。友だちに「お父さんでしょ?」と聞かれたが、「違う」と答えた。
その一週間後、父が突然いなくなった・・・
- 恋について(О любви) (アントン・チェーホフ(Антон Чехов)/松下裕訳)
『チェーホフ全集 第八巻』ちくま文庫 (1993.9)
ある天気の悪い日、アリョーヒンは昔の恋について話し出した。
彼は、大学を終えて、借金を返すためにこのソーフィイノ村に住み着いた。
初めの頃は、農業に手一杯だったが、そのうちに名誉治安判事に選ばれ、
町の治安判事会議や地方裁判に出席するようになった。
そこで、ルガノーヴィッチ一家と付き合うようになった。
アリョーヒンはそこの細君のアンナ・アレクセーエヴナに恋してしまった。
だがその恋も、とうとう別れの時がきた・・・
- 獅子の爪(La Griffe de Lion) (フランソワ・コッペ(Francois Coppee)/内藤[シ(曜の旁)]訳)
『世界文学全集36 近代短篇小説集』新潮社 (1929.7)
海軍大尉ジュリアン・ド・レは、インドシナから大怪我をして戻ってきた。
三カ月入院し、ようやくひと息ついた頃、医者からポオで冬を過ごしたら
いいとすすめられた。
彼はそのすすめに従い、養生に行った。
そこで、一人のロシア人の娘オルガ・ババリイヌに出会った。
一目惚れであった・・・
- 狐になった夫人(Lady into Fox) (デイヴィッド・ガーネット(David Garnett)/井上宗次訳)
『狐になった夫人』新潮文庫 (1955.4)
デブリック夫人は、手足の格別華奢な小柄の夫人であった。
ある日の午後、夫妻が雑木林へ散歩に出かけ、狩猟の見物をしようと
していた時、夫人は恐ろしい権幕で彼の手を振りきり、大きな叫び声を
あげた。彼が振り返ると、彼女は一匹の赤毛の子狐になっていた・・・
- ほら吹きシマウマ(The Zebra Storyteller)/モナ・リザとお釈迦さまが会いました(Mona Liza Meets Buddha)/ミス・レディ(Miss Lady)/ヴェルサイユ宮殿の誰も知らない舞踏室(The Hidden Ballroom at Versailles) (スペンサー・ホルスト(Spencer Holst)/吉田利子訳)
「小説新潮」平成13年2月号 (2001.2)
- ほら吹きシマウマ
シマウマ語をしゃべって、ライオンのふりをしたシャム猫がいた。
シマウマを見かけると、突然流暢なシマウマ語でしゃべりかけ、
混乱して固まってしまったシマウマを縛りあげて殺し、
おいしいところを巣に引きずって帰っていた・・・
- モナ・リザとお釈迦さまが会いました
天界のカーテンから、モナ・リザが入ってきた。
一方のカーテンからは、お釈迦さまが入ってきた。
ふたりはふっと微笑みあいました。
- ミス・レディ
三歳の少女は、お兄ちゃんとはぐれ、男たちに会いました。
彼らは少女に非常に親切にしてくれ、少女はとても楽しみました。
だが、彼らは銀行強盗だったのです。
彼らと別れ、家に戻った少女は、大きくなってヴァッサー女子大に
入学しました。
現在その少女は、ブエノスアイレスの娼婦です。
そう、彼女は今、あの男たちを探しているのです・・・
- ヴェルサイユ宮殿の誰も知らない舞踏室
ヴェルサイユ宮殿の奥深くに、誰も知らない舞踏室がありました。
真っ暗でちりひとつなく、一筋の月光も差し込まない所でしたが、
一度だけ、小さな虫の卵がかえり、一群の蛍が生まれました。
1893年の事でした・・・
- 砂糖 (野上弥生子)
『野上弥生子全集第八巻』岩波書店 (1981.8)
河合房子は誰からも、「あれくらい親切で、気が良くって、
誰のことでもお世話の行き届く方って、まぁございませんね。」と
噂されるような人であった。
ところが彼女には、一つだけ驚くところがあった。
彼女は、話をすると必ず自分の夫のことをぼろくそにこきおろす
のであった・・・
- 真田風雲録 (福田善之)
『真田風雲録』角川文庫 (1973.10)
関ヶ原の合戦で知り合った、筧十蔵と望月六郎、そして子供達の
むささびのお霧、離れ猿の佐助、ずく入の清次、どもりの伊三、
かわうその六、そして根津甚八。
彼らは由利鎌之助、穴山小助とともに真田幸村のもとに集まっていた。
豊臣秀頼が徳川家に難癖をつけられて怒っているという話を聞いて、
不満を持っていた浪人達が集まってきた。真田軍もその一つであった。
そして、大阪冬の陣、夏の陣と戦って・・・
街の灯
文藝春秋 (2003.1.30)
- 虚栄の市
別冊文藝春秋2002年1月号
商事会社社長花村の令嬢である私。
我が家の運転手の一人が止めた後、入ってきたのは別宮みつ子。
彼女は主に、私の学校への送り迎えを担当することになった。
丁度直前に読んでいたサッカレーの『虚栄の市』の主人公とダブり、
彼女のことをベッキーさんと呼ぶようになった。
ある日、自分で穴を掘って、そこに埋まって亡くなった男の人の
新聞記事が目に入った。
ところが、数日前にその男と同じアパートの住人が、泥酔して
水死したという記事もあったのを思い出した・・・
- 銀座八丁
別冊文藝春秋2002年5月号・7月号
兄のところに、兄の友だちから、奇妙な郵便が届くようになった。
なんでも、四つのヒントから、待ち合わせ場所を推理して会おうという
話になったらしい・・・
- 街の灯
別冊文藝春秋2002年9月号・11月号
避暑で、軽井沢の別荘へ行っていたときのこと。
近くの別荘に来ていた桐原道子さんが、映写会に来るように誘ってきた。
その映写会の途中で、驚きの場面があり、一緒に見ていた女性が
亡くなった・・・
語り女たち
新潮社 (2004.4.15)
- 緑の虫
『小節新潮』平成14年4月号
雑誌の編集者の私は、ある作家の先生のお供をして、京都の嵯峨野の
竹林を見に行った。
半日歩き詰めた後、帰りの新幹線の中で、その時についたと思われる
緑の虫を見つけ、あっという間にその虫が私の口に飛びこみ、飲み込んで
しまった・・・
- 文字
『小節新潮』平成14年4月号
その初老の女性は、孫を連れて車を運転していた。
良く晴れた日で、後ろの車の運転席にいる女性の口から下に日が当たって
顔の上下が鮮やかなコントラストをなしていました・・・
- わたしではない
『小節新潮』平成14年7月号
背の高い、首の長い女性。
彼女は、今の夫とは学生時代からの知り合いだった。
どちらも卒業時に一度は就職し、そしてある日偶然再開して付き合い、
結婚した。
お互い仕事が忙しかったものの、何もかもうまくいっていると思っていた・・・
- 違う話
『小節新潮』平成14年7月号
その中学では、朝、何か好きな本を持ってきて読む時間というのがある。
その中学生は、その時間に読もうと、『走れメロス』を買った。
ところが、その話が少しおかしい・・・
- 歩く駱駝
『小節新潮』平成14年10月号
砂漠に行って、硝子瓶をお土産を買った。
これは、内側に砂で絵が描いてある。
そして、一つだけ「歩く駱駝」という事で買ってきたものがあった・・・
- 四角い世界
『小節新潮』平成14年12月号
アフリカの、最近独立した国。
ここでは、独自の言葉や文字を持っていた。
この言葉の魅力に取り付かれてマスターした私は、日本に帰国後、
この国の映画を見て欲しいと頼まれた・・・
- 闇缶詰
『小節新潮』平成14年12月号
友だちからもらったおみやげのトドの缶詰。
それがもとで、闇缶詰をすることになった。
闇鍋のように、みんなが缶詰を持ちよって、中味が分からないように
交換して食べるのだ・・・
- 笑顔
『小節新潮』平成15年1月号
職場の一年先輩の男性に、クリスマスプレゼントをもらったと言う。
普通の話ではあるが、それが贈り物のシリーズになっていると言う・・・
- 海の上のボサノヴァ
『小節新潮』平成15年1月号
仕事の関係で、よくフェリーに乗る女性。
そのフェリーには、ボサノヴァを歌う若い女性が乗っているのに
出会うことが多かった。
彼女はいつも、どんな人にもやさしく微笑みかけていた・・・
- 体
『小節新潮』平成15年4月号
肌の美しい女性であった。
小学校の同窓会に出席したとき、久しぶりにやってきた街をうろついて、
昔住んでいたあたりにやってきた。
そこは、駐車場になってしまっていたが、一本の白い椿の木が残っていた・・・
- 眠れる森
『小節新潮』平成15年7月号
不眠症の画家の展覧会に行ってきたと言う女性がやってきた。
彼女の友人が、東欧の大学に教師として行っていたとき、眠れる森へと
行ってきたと言う・・・
- 夏の日々
『小節新潮』平成15年8月号
子供の頃、よくお父さんと一緒に散歩に行ったという女性。
彼女は最近、父を見送ったと言う・・・
- ラスク様
『小節新潮』平成15年10月号
そんなに田舎でもないのに、町長さんの方針で給食のない小学校に
通っていた女性。
お弁当を持って来られない子どもは、出入りの業者からパンを買います。
その中に少しだけ、ラスクがあって、子供達に人気がありました・・・
- 手品
『小節新潮』平成15年12月号
この間、山の湖に行ってきたという女性がやって来た。
そこで、手品のことを思い出したと言う。
彼女は昔から、ある手品を持ち出す男性とはうまくいかなくなるという
ジンクスを持っていた・・・
- Ambarvalia (あむぼるわりあ)
『小節新潮』平成15年12月号
中学時代からの、好みの良く合う親友がいた。
プレゼントを選ぶときには、自分の欲しいものを二つ買えば良いという関係。
そして、彼女が結婚することになった・・・
- 水虎
『小節新潮』平成16年1月号
会社の同期入社に、水君という男性がいた。
彼は、いつもまっすぐで、自分を曲げることはなかった。
彼と大分親しくなってから、彼の家に招かれて、掛け軸を見せてもらった・・・
- 梅の木
『小節新潮』平成16年1月号
お年よりの世話をする施設で働く女性。
その施設の脇にある駐車場に、一人の老人が車でやって来て、寝泊り
するようになった・・・
ニッポン硬貨の謎
東京創元社 (2005.6.30)
ミステリ作家エラリー・クイーンが来日した時、日本では連続殺人事件が
起こっていた。
ファンとの対話等で日程をこなしていたクイーンであったが、どうしても
この事件が気にかかり、予定を延長して解決まで日本に留まることにしようと思った。
若手ミステリファンとの対話の中で、大学のミステリ研究会に所属する
小町奈々子は、クイーンの作品論を披露し、彼に慕われることとなり、
次の日から折にふれて行動を共にすることになった。
その頃奈々子は、バイト先の書店で、五十円玉二十枚を千円札に両替してくれる
ように頼む謎の男に遭遇していた・・・
紙魚家崩壊
講談社 (2006.3.20)
帯には、「優美なたくらみにみちた九つの謎」とありますが、
関連性が今一つ不明なミステリー短編集。
- 溶けていく
健康食品会社で働く新庄美咲は、ある日の帰り道、いつも寄るコンビニで
岬かすみという人の描くコミックに出会ってしまった。
それがだんだんと、彼女の生活を狂わせていく・・・
- 紙魚家崩壊
書物収集狂の紙魚一二三と数子夫妻。
ある日探偵と二人で家を訪ね、書物を見せてもらっている間に、妻が
殺害されてしまった・・・
- 死と密室
最早、作品を発表しなくなったミステリ作家たちの住む《幻の園》。
そこの掛金錠吉という作家から「密室殺人に立ち会ってほしい」という
連絡を受けて急行したところ、着いた途端に銃声がした・・・
- 白い朝
金物雑貨の店で使っている小さいトラック。
冬の寒い朝、フロントガラスは霜が着いていても、バックミラーにだけは
霜が着かないと言う・・・
- サイコロ、サイコロ
喫茶店で映画の開始時間の調整をしていたところ、中年のおじさんから
声をかけられた。椅子の下に転がってしまった十面ダイスを
拾わせてくれという。
日頃からサイコロを持ち歩いているという彼の職業は一体・・・
- おにぎり、ぎりぎり
水町すみれ先輩と一緒に、植物の先生についてフィールドワークに行った。
泊まりがけで丸一日働き、その晩は稲村先生の家で朝まで語り開かした。
そしてやってきた朝、水町先輩、稲村先生の奥さん、そして私の三人で、
朝食におにぎりを作った。
そのおにぎりを見て、稲村先生は推理する・・・
- 蝶
引き合わせ役の友利子が風邪でダウンし、来るはずだった矢崎君は
胃潰瘍で緊急入院してしまい、かわりに約束の夕食にやって来た私。
そこで、話が進む・・・
- 俺の席
年に一度、大学時代の仲間が集まって麻雀をやる。
今回は幹事役の平井の家でやることになった。
ところが、彼に急用が出来て早朝で解散することになった。
その帰りの電車の中、丁度通勤電車の時間であったが・・・
- 新釈おとぎばなし
だれもが御存知、『カチカチ山』。
これの、北村薫版のパロディ(本歌取り)作品。
ひとがた流し
朝日新聞社 (2006.7.30)
女性アナウンサーのトムさんこと石川千波、作家の水沢牧子、そして
写真家、日高類の夫人である日高美々は、学生時代からの親友である。
高校・大学時代に出会い、それぞれの事情で離れ離れになったものの、
大人になってからまた近所になり、いまだに親しくしている。
千波は未婚、牧子は離婚歴あり、さらに美々は二度目の結婚をしている。
牧子には高校三年のさき、美々には大学二年の玲という娘がそれぞれいる。
そして、さきちゃんが見つけた中国人歌手のライブに、類を除く5人が
揃って行くことになった・・・
玻璃の天
文藝春秋 (2007.4.15)
ベッキーさんシリーズ第二弾。
何と、ベッキーさんの正体が明らかに!
昭和初期、陸軍の名物男だった祖父、財界の一翼を担う父をもつ
花村家の娘である私は、ベッキーさんこと別宮みつ子の運転する車で
学校へ通っている。
そんな私の元へと舞い込んでくる謎を、ベッキーさんは次々と解き明かす・・・
- 幻の橋
昼休みに図書閲覧室に向かい、調べ物をした後、桐原侯爵家の道子さんが
声をかけてきた。
一通の手紙を差し出され、中を見ると、歌が書かれた紙が入っていた。
「あらくまのおたけひはかりいやまさりたんたんくらくなるよなりけり」
これを、ベッキーさんに見せてくれと言う。。。
放課後、特別教室の掃除をしていると、内堀銀行の内堀晃継さんの娘の
百合江さんから、後でつきあって欲しいと誘われた。
話を聞いてみると、電器製品を扱うウチボリ・ランプの息子の東一郎さんと
『ロミオとジュリエット』の関係になってしまったという。
ランプの先代、洋一郎氏と、百合江さんの祖父晃二郎氏とは、兄弟だが、
ある事件がきっかけとなって、喧嘩別れしている状態なのだ・・・
- 想夫恋
小春日和の昼休み、校庭をぶらぶら歩いていると、肋木の横木にもたれかかって
熱心に本を読んでいる清浦綾乃さんを見かけた。
盗み見してみると、『あしなが おぢさん』である。
これはどうしても、お近付きになって話をしてみるしかありません・・・
- 玻璃の天
銀座出雲町の資生堂パーラーへ、ミートクロケットを食べに連れて
行ってもらった時、ある二人連れの男性客を見かけた。
兄に聞くと、一人は末黒野貴明という有名財閥の大番頭の息子だと言う。
それがヒョンな事から、後日、この二人に出会うことになった・・・
1950年のバックトス
新潮社 (2007.8.20)
1995年から2007年までに、あちこちに発表された作品を集めた短編集。
- 「百物語」
眠りたくないという美都子。その理由は、夜、熟睡すると体が・・・
- 「万華鏡」
小説家、金木信助の家へ、安和かなえという女性が訪ねてきた。
彼の小説中の手鞠さんに恋をしたので、
お付き合いを許して欲しいという・・・
- 「雁の便り」
同じ職場の藤城と香取は付き合い、一緒に山へ行った。
そこで事故に遭い、藤城は亡くなってしまった。しかし・・・
- 「包丁」
義母の使っていた菜切り包丁の柄がぐらぐらになっていた・・・
- 「真夜中のダッフルコート」
真夜中の森の中の木の枝に、真新しいダッフルコートがかかっていた。
どうしてそんな不思議な事になったのか・・・
- 「昔町」
金を持っているが、使い方を知らない山室良行。
しかし彼も、彼に合ったお金の使い方を見つけた・・・
- 「恐怖映画」
いつもは、ホラー映画でも全く恐怖を感じない隆一。
しかし、娘と出掛けて一緒に見た映画は・・・
- 「洒落小町」
チョコレートの中におまけの動物のフィギュアが付いているお菓子。
それが、息子とのコミュニケーションの道具である・・・
- 「凱旋」
亡くなった伯父から送られてきた回想録。
その中の歌
「我死なば鯉幟をば立てよかし 凱旋したることのあかしに」
の真の意味とは?
- 「眼」
M***嬢に恋したS***氏。彼はその恋を成就させるために、
彼女の家へと出かける・・・
- 「秋」
追跡恐怖症のM夫人を、私は殺すことにしたのです・・・
- 「手を冷やす」
ペン先のインクを見て、手を冷やそうと思った私・・・
- 「かるかや」
過日の対談の折の内容を修正しようと、この手紙を書いています・・・
- 「雪が降って来ました」
子供の頃、ファックスの物真似をしていた俊太郎。
彼のところへ、一通のファックスが届いた。ほとんど白紙。
だがその最後に一言、−−−−−雪が降って来ました。
- 「百合子姫・怪奇毒吐き女」
同級生には百合子姫、弟には怪奇毒吐き女と
あだ名されている稲垣百合子・・・
- 「ふっくらと」
手作りのお菓子を作る時に、取説をじっくりと読む父が教えてくれたのは、
パン焼き機で作るチーズマフィン・・・
- 「大きなチョコレート」
子供の頃、やっとの思いで買った高価なチョコレートは・・・
- 「石段・大きな木の下で」
子育てを終え、夫婦で出かけた温泉旅行。そこで見た観光案内は・・・
- 「アモンチラードの指輪」
婚約者の祖母が、結婚指輪を譲りたいと言ってきた・・・
- 「小正月」
仕事で沖縄に来ていた時に、母が急に倒れて、
意識不明になったと言う・・・
- 「1950年のバックトス」
野球など興味もないと思っていた夫の母が、実は・・・
- 「林檎の香」
カーナビの音声になる声の録音を、三カ月に渡ってやることになった。
そこで・・・
- 「ほたてステーキと鰻」
コラムを書かせて頂いている出版社の人から、落語の券を二枚もらった。
そこで、家を出て大学に通う娘と待ち合わせ、一緒に見ることにした・・・
野球の国のアリス
講談社 (2008.8.3)
ミステリーランドの第14回配本。英語のタイトルは、"Alice's adventures in the baseball land"。
これは、小説家のわたしが、野球の大好きな女の子アリスから聞いた話です。彼女はある日、宇佐木(うさぎ)さんを追って時計屋の店先の鏡を通って、裏の世界へと旅立って行きました。そしてそこで・・・
- はじめに
- 第一部
- 1 金色の午後、アリスが話し始める。
- 2 そこでアリスは、鏡の中に入る。
- 3 どうやら、こっちは野球の国らしい。
- 4 へんな大会に、アリスが燃える。
- 5 そこでアリスは、《やるしかない》と思った。
- 6 野球の好きな安西君。
- 7 野球部員、アリス。
- 8 おとうさんの、《適応》の話。
- 9 アリス、球場に行く。
- 第二部
- 1 穴の中のアリス、そして、ひらりひらりとユニフォーム。
- 2 その夕暮れのキャッチボール。
- 3 宇佐木さんとお茶の会。そして女王様のこと。
- 4 宇佐木さんの計画。
- 5 アリス、グローブを抱く。
- 6 野球へのお誘い。
- 7 練習開始。
- 8 アリス、ペットボトルをにぎりつぶす。
- 9 コールドゲーム?
- 10 パワー、充電。
- 11 アリス、桜を見る。
- 12 花吹雪の中にアリス。それでは、みなさん、さようなら。
- わたしが子どもだったころ
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