倉知淳
1962年、静岡県生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業。
壺中の天国
角川書店 (2000.9.30)
静かな地方都市の稲岡市。
そこに暮らす牧村知子には、10歳の子ども実歩がいた。
しかし、実歩の父親はいない。
そして、知子自身の父親である嘉臣とともに暮らしていた。
そんな静かな町で突然起こった連続殺人事件。
彼らは一体どういう理由で殺されたのか...そして殺人のたびに配られる怪文書。
だんだんと、市民が落ち着きを失っていった・・・
日曜の夜は出たくない
東京創元社 (1994.1.25)
- 空中散歩者の最期
ある男が墜落死した。目の前には4階建てのダイワマンション。
ところが鑑定の結果、その男は最低20m以上の場所から墜落死しているという。
ダイワマンションは、たった8mであるのに、だ。
大通りを挟んだ向かいには、高さ15.5mの釜谷第三ビルがあるが、
これにしても低すぎる。
20m以上の建物と言うと、500mほど離れた場所にある駅ビルだけである。
当時、民間機・チャーター機・個人所有のセスナ機を含む飛行機、
ヘリコプター、気球等は飛んだ形跡はない。
彼はどうやって墜落死したのか・・・
- 約束
小学二年生の麻由は、その「おじさん」と仲良くなった。
小さな公園の一番奥のベンチで、一人寂しそうに座っていたところに
話しかけたのが最初だ。
そして2週間後、「おじさん」は、これから自首すると言った。
もう会えないと言う。
最後に、よく見せてくれた魔法をもう一度だけやってくれるように
頼んだが、二種類の碁石を使うその魔法は、碁石がなくて出来なかった。
そこで麻由は、一日だけ自首するのを待ってくれるように頼んだ。
ところがその夜、「おじさん」はそのベンチの上で凍死していた・・・
- 海に棲む河童
昔、山に住む太吉と茂平とが二人一緒に海の近くに物々交換にやってきた。
交換が済んだ後、初めて海を見た二人は最後にもう一度だけ海を見に
やってきた。
丁度そこに、一隻の船があったが、まわりには誰もいなかった。
好奇心旺盛な二人は、少し沖に漕ぎ出してみることにした・・・
- 一六三人の目撃者
163人の観客が入ったロシア劇。
その劇の最中に、男性役者が服毒して死んだ。
一体誰がどうやって毒を盛ったのか・・・
- 寄生虫館の殺人
突然、夜中の二時に原稿を頼まれた。締め切りは同日午後六時。
テーマは、目白にある寄生虫博物館。
しかたなく仕事を受けた私は、短い時間をやりくりして見学に出かけた。
そして、いろいろと見て回っているうちに、その一階にいた受付嬢が、
いつの間にか三階で殺害されていたのである・・・
- 生首幽霊
NHKの集金をしている八郎は、昼間ひどい目にあったレジデンシャル
コーポ藤谷の106号室に住む女に仕返しをしてやろうと、夜中に
彼女のアパートへと向かった。
そしてそこで、彼女の生首を見つけ、それがしゃべるのを聞いた・・・
- 日曜の夜は出たくない
つきあい始めて二カ月になる彼。いつも日曜日にしか会えない。
彼のことを、人殺しだと疑い始めたのは、いつも送ってくれた後、
近所で無差別傷害事件が起こっていたからであった・・・
- 誰にも解析できないであろうメッセージ
以上7つの短編には、順序があり、さらに深いメッセージが・・・
- 蛇足−−−あるいは真夜中の電話
そして、さらに深い事実が、この短編集には隠されていた・・・
過ぎゆく風はみどり色
東京創元社 (1995.6.30)
祖父と喧嘩して家を飛びだし、10年ぶりに帰ってきた我が家。
そこで方城成一は、謝る時間もないまま祖父は殺されてしまった・・・
占い師はお昼寝中
東京創元社 (1996.6.25)
渋谷道玄坂の古いビルの三階で、「霊感占い所」を営んでいる辰寅叔父。
営んでいると言っても、暇さえあれば昼寝をし続ける怠け者。
もちろん、積極的に客を呼び込もうなんて絶対にしない。
ところが客がやってくると、おもむろに起き上がり、畳を一枚敷いた
台の上から、純白の行者の衣裳を身に纏い、伸ばし放題の蓬髪を白い
ハチマキでまとめた格好で客をむかえる。
そして悩みを聞き、いくつか質問をした上で、奇妙な般若心経と巨大な
漆塗りの盃、そして四手をくっつけた榊の枝に文机の上に拡げた半紙を用いて
占いを行なう。
美衣子は、大学入学のため上京した際、挨拶がてら訪れたこの叔父の
仕事場を、持ち前の好奇心ですっかり気に入ってしまって、入り浸る
ことになったのだ・・・
- 三度狐
<創元推理5>1994年夏号
一流商社に勤める新杉田浩二は、最近社宅を離れ、一戸建てに引っ越した。
ところが、その頃からゴルフのクラブが一本、社内での書類、
読書用に買い込んだビジネス書と、物がなくなってしまうと言う・・・
- 水溶霊
<創元推理5>1994年夏号
コンピュータハードメーカで事業部門にかかわっているという三十過ぎの
キャリアウーマンと見える女性。
最近、身の回りで、ポルターガイスト現象が起きると言う・・・
- 写りたがりの幽霊
<創元推理6>1994年秋号
奨尚大学三年の学生が、心霊写真を持ってきた。
鑑定をして、必要ならおはらいをして欲しいと言う・・・
- ゆきだるまロンド
<創元推理7>1994年冬号
江戸川区西葛西に住む48歳の主婦、松兼スミ子は、最近、自分と
全く同じ姿をした別人−−−つまりドッペルゲンガーが現われるという・・・
- 占い師は外出中
同業者の霊媒師が亡くなったので、葬式に出掛けると言う叔父は、
美衣子に留守番を頼んでさっさと出掛けてしまった。
そこへ、滅多に来ない客−−−二人の老人−−−がやって来た。
目の焦点の会っていない方の家で、血みどろの幽霊が出るので、
お赦いをしてくれと言う・・・
- 壁抜け大入道
西成真一、12歳の小学生六年生が、父親の無罪を訴えてやってきた。
父親の働く小さな町工場で、窃盗事件が起こって、父親が疑われているという。
そして、真一君は、偶然その犯人を見たと言う・・・
幻獣遁走曲 猫丸先輩のアルバイト探偵ノート
東京創元社 (1999.10.20)
- 猫の日の事件
<創元推理8>1995年春号
東京フレッシュペット食品では、自社の猫用の缶詰めの販促のため、
良い猫コンテストを開いており、今年はその第四回である。
轟部長に伴って、長久手晃貴はVIPや審査員への挨拶に同行していた。
その時、VIPの一人、早崎様の奥様がちょっと目を離した隙に、
ダイヤがなくなったと言う・・・
- 寝ていてください
<創元推理11>1995年冬号
臨床治験という、薬のモニターのアルバイトを引き受けた木渡誠。
薬を飲んで、血液を採取し、そしてあとは寝ているだけで良い。
だが、薬には副作用の可能性もある。
そんな時、4人のアルバイトの一人が、血液検査に行ったまま
戻ってこなかった。
しかも、その直後に看護士が、慌てて彼の荷物を片付けて行った・・・
- 幻獣遁走曲
<創元推理15>1996年冬号
珍獣アカマダラタガマモドキを捕獲するというアルバイトを
引き受けてしまった鼬沢。
朝早くからバスに乗せられて連れてこられたのは、背丈程の
草の生い茂る湿地帯。
とりあえず、そこの草を鎌で刈り取るということらしい・・・
- たたかえ、よりきり仮面
<創元推理17>ぼくらの愛した二十面相1997年
スーパーマルエー北船橋店の屋上でやる、『爆裂戦士よりきり仮面』が
やって来るショーに出演している夏樹たち。
炎天下であってほとんど観客はいないが、その中に毎回やってきている
小学生低学年か幼稚園かというぐらいの男の子がいた・・・
- トレジャーハント・トラップ・トリップ
「松茸狩り、取り放題、追加料金一切なし、純国産天然物−−」
そんな広告を見て応募した青木啓太・茂美夫妻は、早速応募した。
山奥の場所にやってきてみると、確かに取り放題だ。
青木夫妻以外に道案内のアルバイトを含めて4人、合計6人で
取った分を最終的に山分けすることになった。
ところが、気がついてみると一箇所にあつめていた松茸が、
大量になくなっている・・・
猫丸先輩の推理
講談社ノベルズ (2002.9.5)
- 夜届く
出版社に勤めるサラリーマンの八木沢行寿の家に、最近数日おきに夜、
電報が届くようになった。
あて先は正しく自分になっているが、差出人は書いていない。
そして文面は、『病気、至急連絡されたし。』というような定形文。
いったい、誰が何のために・・・
- 桜の森の七分咲きの下
某アパレルメーカーに入社して二日目、小谷雄次は会社の花見の場所取りを
させられていた。
ところが、奇妙な人々が何とか場所を奪おうとしてくる・・・
- 失踪当時の肉球は
ペット探偵事務所の郷原は、迷子になった猫を捜しだしてくれるように、
平田という中年女性から依頼を受けた。
ところが、バイトの部下と一緒に苦労して作ったポスターを、貼ったとたんに
落書きされた。
さらに、平田さんはまだ迷子の猫が見つかっていないのに、見つかったと言って
仕事を止めさせようとした・・・
- たわしと真夏とスパイ
近所にスーパーマルエーができ、そこが百円均一コーナーを作った。
それに対抗しようと、洋品店の若旦那の今井の所属する南口商店会は
納涼夜店大売り出し作戦を敢行した。
ところが、その夜店で事件が続発した・・・
- カラスの動物園
キャラクター商品を開発する小さな会社に勤める長尾葉月は、
イメージを膨らませようと動物園にやってきた。
そこで、ひったくり犯人の逃げる所に遭遇し、
犯人からあるものを渡された・・・
- クリスマスの猫丸
出版社に勤める八木沢行寿は、クリスマスの日に、猫丸先輩と喫茶店で
待ち合わせをしていた。
窓から外を見ていると、サンタクロースが疾走して行くのに気付いた。
しかもそれが、5分をおかず、3人も。これは一体・・・
猫丸先輩の空論
講談社ノベルズ (2005.9.5)
三十過ぎで定職にも付かず、興味の赴くままにバイトをしながら
生活をしている猫丸先輩。
まるで高校生のような小さな身体と、大きなまん丸の目を持ち、
猫のような忍び足で近づいてくる。
考え方も普通じゃないためか、時々常人では思いつきもしない
発想をして謎を解いてしまう。
そんな猫丸先輩の、日常の不思議な出来事に対する推理の数々・・・
- 水のそとの何か
イラストレータの美里さん。
彼のアパートのベランダの手すりの上に、ここ数日間毎日、水の入った
ペットボトルが置かれているという。これは一体・・・
- とむらい自動車
友人が事故に遭った細い路地。
大西克人が事故現場にきてしばらくすると、呼び出された何台ものタクシーが
同じ場所にどんどん到着してきた・・・
- 子ねこを救え
幼なじみの里村真実に呼び出され、彼女の家に行ってみると、
虐待されている猫を救出するので手を貸せという・・・
- な、なつのこ
ひょんな事から、スイカ割り大会の手伝いをすることになった新井雅春。
彼と、全日本スイカ割り愛好会・東京西地区支部長の後藤田とが、
ちょっと買い物に出掛けている間に、砂浜に建てたテントの中に
置いてあったスイカが、何者かに叩き割られてしまっていた・・・
- 魚か肉か食い物
吉川明日香の大学の同級生の友人、米森早苗は、大食いをさせたら
右に出るものがいない。
何件もの大食いチャレンジに挑戦して賞金を獲得していた。
ところが、『ステーキハウス 牛一番』での5kgの牛肉にチャレンジしようと
店にやって来て、料理が出てきた瞬間、彼女は店を飛び出してしまった。
一人取り残された明日香は、途方に暮れてしまう・・・
- 夜の猫丸
残業をしている零細出版社の八木沢は、遠くで電話が鳴っているのを聞いた。
どうやら社長室のようである。しばらくたって電話は鳴り止んだ。
ところがそのすぐ後、今度は総務と経理部の部屋の電話が鳴り出した。
そしてそれが止むと、営業部と宣伝部、会議室、編集長、と次々と電話が鳴り、
鳴り止んだ。そしてついに、自分のデスクの上の電話が鳴った・・・
星降り山荘の殺人
講談社ノベルズ (1996.9.5)
ちょっとした事から、上司を押して倒してしまった杉下和夫。
ほとぼりが冷めるまで、カルチャークリエイティブへと回されることになった。
そこでの仕事はマネージャー見習い。
体の良い左遷なのだが、まぁ仕方がないだろう。
マネージャーをする対象は、スターウォッチャーの星園詩郎。
若い人を中心に中年までの女性に絶対的な人気がある、現在我が社が売り出し中の
絶世の美男子で、指を天に向けるポーズがお得意である。
彼と引き合わせられた翌日、早速彼との出張を命じられる。
行き先は、秩父から距離的には比較的近いが交通の便は非常に悪い
埼玉県渡河里岳の山荘であった。
そしてそこで・・・
ほうかご探偵隊
講談社 (2004.11.22)
たて笛(ソプラノリコーダー)の吹き口と先を残し、まん中の筒状の部分を
盗まれてしまった、小学5年の僕、藤原高時。
今はアルトリコーダーを使っているのでもういらない物で、
実害はないのだけど。。。
実は、僕のこの盗難以前にも先週あたりからこのクラスに関係のある
奇妙な物が盗まれ続けていたのだ。
最初は、棟方くんの図工の時間に写生した絵。
次が、成見沢めぐみさんが世話をしていたニワトリ。
さらに、学級委員の神宮寺秀一くんのハリボテの招き猫の募金箱。
そして、僕のたて笛の筒。
どれも、なくても大して困らない不用物ばかり。
つまり、不用物連続消失事件。
一体、誰が何のためにこんな事を???
僕は早速、推理小説好きの友だちである龍之介君の誘いに乗って、
一緒に犯人探しをすることにした・・・
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