三崎亜記
1970年、福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。
となり町戦争
集英社 (2005.1.10)
町の広報誌〔広報まいさか〕で、となり町との戦争を知った僕、北原修路。
その開始の日、いつもよりも慎重になって通勤したが、いつもと変わらぬ
一日を過ごすこととなった。
その後しばらくの間、一向に戦争の陰を見出せなかったが、それは突然やって来た。
ある日郵便受けに、舞坂町役場総務部となり町戦争係からの
戦時特別偵察業務従事者任命のお知らせであった。
そしてだんだんと、見えない戦争へと引きこまれていく・・・
成和23年9月1日に始まり、翌24年3月31日に終了した、となり町との戦争。
それは、役場が行政の一部として淡々と進めているものであった。
死者が発生してはいるが、あくまで規則に則り、粛々と・・・
バスジャック
集英社 (2005.11.30)
- 二階扉をつけてください
出産のために実家に帰っている妻の留守中に、近所の女性から、
はやく二階扉を着けて下さいと、すごい劍幕で文句を言われた。
仕方ないので、取り付けることにした・・・
- しあわせな光
街を見下ろす丘の上から、双眼鏡で自分の家を覗き見る。
そこに見えるのは・・・
- 二人の記憶
薫と僕とは、付き合い始めて三年。
今でも、彼女を見ているだけで楽しい。
でも、どうやら彼女の記憶と自分の記憶には、少しずれがあるらしい・・・
- バスジャック
最近ブームのバスジャック。
ある日偶然乗り合わせた高速バスの中で、私はそのバスジャックに
出あってしまった・・・
- 雨降る夜に
ある激しい雨の夜、ベージュのコートを着た彼女が少し大きめの
バッグを抱えてやって来た・・・
- 動物園
ハヤカワ・トータルプランニングの日野原柚月は、私鉄の駅からバスで
10分ほどの所にある私立の動物園へとやってきた。
今回の仕事は、これから三週間ほど、ここでヒノヤマホウホウの展示を
することである・・・
- 送りの夏
小学生の麻美は、突然家を出て行った母親の晴美を追って、
列車に乗って無人駅「つつみが浜」のホームに降り立った。
母の居場所は、いくら父親の康之に聞いても教えてくれないので、
彼の手帳を盗み見てやってきたのだ・・・
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