宮部みゆき
1960年、東京生まれ。東京都立隅田川高校卒業。
その後、法律事務所に勤めながら小説の勉強をする。
我らが隣人の犯罪
文藝春秋 (1990.1.30)
- 我らが隣人の犯罪
オール讀物推理小説新人賞。「オール讀物」昭和62年12月号
隣のうるさい飼い犬ミリーを黙らせようと、誘拐を計画。
同時に見つけた架空名義の預金通帳。。。脱税問題?
- この子誰の子
「週間小説」平成元年9月29日号
両親の留守中、突然、父親の愛人だと言って家に乗り込んできた母子。
彼女が嘘をついているのは明らか。
でも、その子供は本当に妹のような気がする...真実は如何に?
- サボテンの花
「小説現代」平成元年3月号
サボテンの超能力を研究することにした6年1組の生徒。
怪しげな行動を繰り返すが、その真の目的は・・・
- 祝・殺人
「問題小説」平成元年10月号
妹の結婚披露宴の後、晴海荘のバラバラ殺人事件について話をしたいと
言ってきた、エレクトーン奏者の日野明子。
彼女の推理によると、この事件は、、、
- 気分は自殺志願(スーサイド)
「オール讀物」昭和63年8月号
「わたくしを殺していただきたいのです」と言ってきた中田氏。
その理由を聞き、生きる勇気と長年の夢だった古本屋の開店資金を
手に入れる計画を立て実行した、推理小説作家の私、海野周平。
その鮮やかな手口とは?
東京殺人暮色
光文社 (1990.4.25)
刑事である八木沢道雄の一人息子の順(13)は、お手伝いのハナから
町内に流れる殺人の噂を聞いた。
丁度その頃、バラバラ殺人の遺体の一部が荒川を流れてきて、、、
事件を担当する父とは別に、その噂を確かめようとして一軒家を
調べ始め、事件に巻き込まれていく。。。
残酷なことや人の嫌がることを平気でする人は、想像力がないのでしょう。。。
レベル7
新潮文庫 (1993.9.25)・・・新潮社 (1990.9)
記憶喪失になってしまった男女二人。腕には「レベル7」の文字が。
一方、「レベル7まで行ったら戻れない・・・」という言葉を残して
失踪した女子高生みさお。
二つの情景が同時進行していくように交互に描かれていくが、それが最後に
一つになって。。。
1982年2月のホテル・ニュージャパンの火災、1984年3月の精神病院・
報徳会宇都宮病院リンチ致死事件という二つの事件が下敷になっている作品。
緊迫の四日間!・・・そう、たった四日間の出来事なのですよね。
一ヵ月ぐらいの出来事かと錯覚してしまっていたのでした (大汗)
龍は眠る
出版芸術社 (1991.2.22)
日本推理作家協会賞長篇部門受賞
雑誌記者である高坂昭吾は、ある台風直撃の最中、細い道を車で走っていた。
突然目の前に現れた人影。。。それは高校生の稲村慎司であった。
ただし彼は、人の心を読むことの出来る超能力少年であった。
彼を乗せてしばらく進むと、蓋の外れたマンホールが・・・
そこに近所の幼い幼稚園児が落ちたらしい・・・
一体誰がこんな事をしたのか???
返事はいらない
新潮文庫 (1994.12.1)・・・実業之日本社 (1991.10)
- 返事はいらない
失恋して自殺しようとマンションの屋上に上がってきた千賀子。
だが、偶然居合わせた森永夫妻に止められた。
部屋に戻り、話をしているうちに、銀行強盗(詐欺)を
持ちかけられる。。。CD機の弱点を突き、それを世間に広めるため。。。
千賀子はこの計画に乗ることにした。
- ドルネシアにようこそ
速記学校に通い、アルバイトにテープ起こしをしている伸治。
最寄りの駅の伝言板に、「ドルネシアで待つ」と落書きするのが
楽しみだった。
ドルネシア・・・それは、センスのない服装をしたお客様お断りの
高料金のディスコ。伸治はお呼びでない青年であった。
ところが、ある日から、落書きに返事がくるように・・・
- 言わずにおいて
課長にひどい言葉を吐いて、会社を飛びだしてきた長崎聡美。
まぁ、そのひどい言葉の原因は、課長だったのだけど。。。
真夜中の二時過ぎ、頭を冷やすために一人散歩をしていたところ、
目の前で車が壁に激突し、車の中の夫婦は、事故死してしまった。。。
だが、聡美は激突前の最後の瞬間、運転席の男が「やっと見つけた!」と
叫んでいたのを見てしまった。。。
- 聞こえていますか
嫁姑の仲がうまくいかず、ついに分かれて暮らすことになった勉の一家。
移った先の家は、以前、三井光次郎という名前の老人が住んでいた。
彼は昔、特高に追いかけられたこともある師範学校の先生だった。
その頃から置いてあるという電話機の中から盗聴器が・・・
- 裏切らないで
銀座の画廊に勤める大浦道恵。彼女が歩道橋の上から転落死した。
部屋は、写真に撮ってそのまま雑誌に載せることのできそうなものだった。
加えて、たくさんの督促状が残されていた。
果して、自殺か、他殺か、事故死か・・・
- 私はついてない
初めてできたガールフレンドの誕生日の前日、大喧嘩をやってしまった裕。
そこに、突然やってきた従姉弟の逸美。
すぐにお金を貸して欲しいという。。。でも両親は旅行に出掛けて
しまっていた。
自分の事はとりあえず置いておいて、姉さんの事態に対処すべく動き回る
羽目に・・・
『ドルネシアにようこそ』これよかったです。詳しくは書きませんが (笑)
今夜は眠れない
角川文庫 (2002.5.25)・・・中公文庫 (1998.11)・・・中央公論社 (1992.2)
現在中学一年の緒方雅男。両親と三人暮らしの平凡な家庭であったが、
ある日突然、世界がひっくり返ってしまった。
ある人物が、母に五億円もの大金を遺贈したのだった。。。
数々の事件に巻き込まれ、親友の島崎君とともに真相解明の調査に乗りだす。
スナーク狩り
光文社文庫 (1997.6.20)・・・光文社カッパ・ノベルズ (1992.6)
織口邦男の勤める釣具店に鉛板を買いにきた関沼慶子。
それを見た織口は、ある計画を思い付く。
そのためには、慶子の持つ散弾銃を盗み出さなければならない・・・
一方慶子は、元恋人国分慎介の結婚式に散弾銃を持って表われた。
目の前で自殺してやるために。
だが直前に、慎介の妹の範子に止められた。
そして・・・
すごいです。迫力あります。
ただ最後の銃撃戦のあたり、ちょっと人物関係が分かりにくくて
何度も読み返してしまいました。
火車
双葉社 (1992.7.15)
山本周五郎賞受賞
遠縁の青年から、いなくなった婚約者を捜し出して欲しいと依頼された
休職中の刑事。
少し調べ始めてみると、彼女には昔、自己破産をした形跡があった。
彼女の真の姿は???
最後にあらわれる女性の口から語られる話は、どのようなものなのだろうか???
震える岩 霊験お初捕物控
講談社文庫 (1997.9.15)・・・新人物往来社 (1993.9)
人には見えないものが見え、人には聞こえないものが聞こえるというお初。
南町奉行に命じられ、古沢右京之介と共に死人憑きを調べはじめる。
震える岩、そして百年前に起きた赤穂浪士の討ち入り・・・その真相は・・・
淋しい狩人
新潮文庫 (1997.2.1)・・・新潮社 (1993.10)
東京下町の荒川土手下にある共同ビル一階の田辺書店。
店主のイワさんとその孫稔が切り盛りするこの古書店を舞台に、
さまざまな事件が巻き起こる。。。
- 六月は名ばかりの月
『歯と爪』・・・結婚式の引出物の本に落書されていたその言葉の、
真の意味は・・・
- 黙って逝った
父親の死後、荷物を整理しているときに見つけた、本棚一杯の1冊の本、
『旗振りおじさん』
父親は、どうしてこんな本を買い貯めていたのだろう?
- 詫びない年月
昭和20年3月10日の東京大空襲。
その時の犠牲者の母子の遺体が、建て替えを計画していた
柿崎家の地下の防空壕の跡地から発見された。
それを知っていたと思われる柿崎の御隠居さんの思いは。。。
- うそつき喇叭
『うそつき喇叭』という童話を万引しようとしていたのは、
身体中に煙草による火傷をおった小学生だった。
こんなことをしたのは両親?それとも・・・
- 歪んだ鏡
電車の網棚に放り投げてあった文庫本、山本周五郎の『赤ひげ診療譚』。
拾って読んで感動を覚えた久永由紀子は、はさんであった名刺の人物に
会いにいくことにした。
- 淋しい狩人
無差別殺人を描いた『淋しい狩人』。著者は安達和郎。
だが彼は、この大作を書き上げる前に行方不明になってしまった。。。
遺族の元に、これの結末を創作できると豪語する人物からはがきが届き、
この作品通りの殺人が始まった。。。
夢にも思わない
中公文庫 (1999.5.3)・・・中央公論社 C★NOVELS (1997.10)・・・中央公論社 (1995.5?)
親友島崎君シリーズ第二弾
虫聞きの会で殺人事件。。。殺されたのは同級生のクドウさんの従姉。
彼女は少女売春組織との関係が噂され、大好きなクドウさんは沈みがち。
真相を究明すべく、親友の島崎君とともに調査を開始する。
パラパラ漫画(文庫本だけ?)が良い感じです (笑)
鳩笛草
光文社 (1995.9.25)
- 朽ちゆくまで
EQ 1994年3月号、5月号
両親を交通事故で失い、祖母と共に暮らしていた麻生智子。
祖母の病死の後、荷物を整理していた智子は、祖母が隠し持っていた
古いビデオテープを見つける。
これは、智子の両親が、智子を撮影したものであった。
これを見た智子は、小さい頃自分が超能力(予知能力)を持っていたと
確信する。
- 燔祭
EQ 1995年1月号
高校生の妹が、学校からの帰り道、車にひかれた後川へ投げ入れられて
殺された。警察は、犯人をほぼ特定するが、少年法その他の事情により
逮捕することが出来ないでいた。
兄である多田一樹は、彼らを殺そうと考えていたが、そこへ同じ会社の
青木淳子が、「私の能力が役に立つと思います」と言ってあらわれてくる。
彼女とは、ほとんど口もきいたことのない間柄だったが・・・
この物語は、クロスファイアへと続きます。
- 鳩笛草
EQ 1995年5月号、7月号
人の心を読むことの出来る本田貴子。
城南署捜査科刑事の彼女は、仕事でその能力を発揮して数々の事件を
解決していた。
ところがある日、この読心能力がおとろえてきているのに気づく・・・
クロスファイアへと続く『燔祭』の方が有名かもしれないけど、
私としては、この3篇の中では『鳩笛草』が一番のお気に入り (笑)
クロスファイア
光文社 (1998.10.30)
鳩笛草の燔祭の続篇
念力放火能力(パイロキネシス)者である青木淳子は、
あの事件の後、東京郊外へと移り住んでいた。
どうしようもなく湧き上がってくるパイロキネシスを放出するため、真夜中に
近所の廃工場の大きな水溜まりでそのパイロキネシスを放出していた。
ある日、いつも通りその廃工場でパイロキネシスを放出しようとした時、
ある少年グループが、一人の男性をその水溜まりへと捨てて行こうとしていた。
それは阻止したものの、その男性は拳銃で撃たれ、死んでしまった。。。
彼らを追い、追いつめた淳子・・・
実はその裏で、ガーディアンという謎の自警組織が動いていた・・・
模倣犯
小学館 (2001.4.20)
東京の大川公園のゴミ箱の中から、女性の右腕から先だけの死体が見つかった。
見つけたのは近所に住む男子高校生塚田真一と女子高校生水野久美。
事件は、連続女性殺人事件へと発展していく・・・
犯人、犯人の家族、被害者家族、警察と、いろいろな人の視点で
事件が描かれていく。
すごいです。
事件に関連する人々の感情の移り変わり、非常に参考になりました。。。
って言っても、実際には参考になるような自体には絶対に巻き込まれたく
ないのですが。。。
ただ、最後の最後でのピースの行動や発言は、ちょっと・・・と思う部分が
ありました。
あちこちの感想文等を読んでいると、このあたりは、人によって感じ方も
大分違うようですが。。。
パーフェクト・ブルー
東京創元社 (1989.2.25)
「高校生の息子進也を連れ戻してきて欲しい」という依頼を受けた
蓮見探偵事務所の加代子調査員は、元警察犬のマサを連れて、
「ラ・シーナ」へ出向き、進也と共に帰ろうとした。
その途中、高校野球の天才ピッチャーである克彦に関する事件を
調べるために現場を見に寄り道したところ、克彦が焼殺される
現場に出くわしてしまった。。。
加代子は、所長とマサ、それに進也と共に、事件を調べ始めるが・・・
パーフェクト・ブルー・・・結構良い印象を持っていた言葉なのに、
なんだかなぁ...って感じになってしまった。。。
本所深川ふしぎ草紙
新人物往来社 (1991.4.5)
第13回吉川英治文学新人賞受賞
本所深川の七不思議に関連した事件を、茂七親分が中心になって解決していく。
- 片葉の芦
別冊歴史読本特別増刊(1988年夏号)
小さい頃、近江屋のお美津に助けられた彦次。
でもその裏にあった事情とは...
人を助けるって、難しいことですね。。。
- 送り提灯
別冊歴史読本特別増刊(1988年冬号)
毎晩、丑三つ時に回向院の境内まで行って、小石を一つ拾ってくるように
頼まれたおりん。
これは、十二歳になったばかりの彼女には、とても酷なことだった。
その行き帰り、おりんに尾いてくる提灯に気がついた・・・
- 置いてけ堀
別冊歴史読本特別増刊(1989年秋号)
夕暮れもすぎたころ、本所の錦糸堀あたりを、大漁に上機嫌になった
釣人が通りかかると、どこからともなく「置いていけ・・・置いていけ」
という声が呼びかけてくるという、置いてけ堀という七不思議の一つの話。
この怪談話の裏にある真の目的とは・・・
- 落葉なしの椎
別冊歴史読本特別増刊(1989年冬号)
椎の木の落ち葉のせいで下手人があがらないという話を聞きつけた、
小原屋の奉公人お袖。
彼女は、毎朝晩、落葉を掃除するようになった。そして・・・
- 馬鹿囃子
別冊歴史読本特別増刊(1990年夏号)
人を殺したと言いまわる、十八歳の娘、お吉。
「男なんてみんな馬鹿囃子なんだ」と言う彼女の心の中には・・・
- 足洗い屋敷
別冊歴史読本特別増刊(1991年春号)
おみよの新しい義母は、とても美しい人だった。
それだけでなく、いつもとてもやさしい人だった。
でも、彼女の過去には・・・
- 消えずの行灯
お内儀のお松の心の病を少しでも和らげようと、市毛屋の喜兵衛は
彼らの亡き娘、お鈴の替え玉を住まわそうと考えた。
その替え玉として白羽の矢が立ったのが、おゆうだった。
蒲生邸事件
毎日新聞社 (1996.10.10)
日本SF大賞受賞
予備校の受験に来ていた尾崎孝史。
二泊目の夜、泊まっていたホテルが火災に・・・
その彼を助け出してくれたのは、いつも暗い影を背負ったような男、
平田次郎であった。
助け出された先は・・・
タイムトラベラーには、歴史は変えることは出来ない。
歴史的事実を変えることが出来るだけ。まがいものの神に過ぎない・・・
初ものがたり
PHP研究所 (1995.7.20)
「小説歴史街道」1994年2月号、5月号、8月号、11月号、1995年2月号、5月号
本所深川の岡っ引きである茂七親分と、その下っ引き糸吉と権三。
彼らが中心となって、「初もの」に関する事件を解決していく。
- お勢殺し
大川で、女の死体があがった。彼女は裸だった。
間もなく、担ぎの醤油売りのお勢と分かったが、彼女は音次郎という男と
色恋沙汰があったという。。。
- 白魚の目
冬木町の寺裏に小さなお稲荷さんがあった。
最近、家のない子供達が夜を過ごしていたが、その子供達が、
お供えされていた稲荷寿司を食べて、死んでいるのが見つかった。。。
- 鰹千両
三好町の棒手振りの魚屋、角次郎のところに、鰹を一本千両で
売ってくれと言ってくるものがあったという。
その裏には。。。
- 太郎柿次郎柿
亀久橋のそばの船宿「楊流」で、男が一人殺された。
殺した後、下手人が自ら自分が殺したと言ってきたと言う。。。
- 凍る月
河内屋の台所から、到来物の荒巻鮭一尾がなくなったという。
女中をはじめほとんどの者は、猫か何かが取っていったと
思っているが、亭主の松太郎だけは、目の色を変えてさがし
まわっているという。。。
- 遺恨の桜
霊能者として名を馳せている日道が、人に襲われて大怪我を
負ったという。
日道は、雑穀問屋三好屋のひとり息子長助のことで、年はまだ10歳である。
一体誰に・・・
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
- 糸吉の恋
山元長屋が火事になり、地主がちょっと具合良くないので、長屋が
再建されることはなかった。
そこへ近所の人が、菜の花を植えた。
ある日その側で、一人の娘が涙を流してつっ立っていた。
気になった糸吉は、話を聞くと、そこに赤ん坊の死体が
埋まっているという・・・
ところが、親分に話をしても、てんで話に乗ってくれない。。。
それぞれの話は一応完結しているが、全体を渡って、やくざ者の巣窟の梶屋
の勝蔵、富岡橋のたもとの屋台稲荷寿司屋の親父等がうまく出てきている。
「糸吉の恋」は、愛蔵版のみに掲載されています。
理由
朝日新聞社 (1998.6.1)
直木賞受賞
ある嵐の夜、ヴァンダール千住北ニューシティで人が墜落死した。
そして、その2025号室には3人の他殺死体があった。
住民として登録してあるのは小糸という一家。
ところが、彼らは生きているという...
そして、その見つかった被害者達は、全てが赤の他人だった・・・
ステップファザー・ステップ
講談社 (1993.3.25)
小説現代1991年2月号、5月号、8月号、11月号、1992年2月号、5月号、8月号
- ステップファザー・ステップ (stepfather step;継父踊る)
35歳、男性の僕。
元弁護士の柳瀬の親父から情報を得て、泥棒を職業としている。
東京郊外の新興住宅地の邸宅に忍びこもうと、隣の家からロープを張って
それを伝っていたところへ雷が。。。
気がつくと、隣の家の双子の兄弟哲(さとし)と直(ただし)に
助けられていた。
彼らの両親は、それぞれ別の愛人とともに同時に家出してしまったという。
そこで、警察へ突き出す変わりに、生活費の面倒と、必要なときに
父親になるという取り引きを持ちかけてきた。
改めてその双子の家の隣に忍びこむと、家中鏡ばり。
しかも、天井裏に人が閉じ込められているようだ。
これは一体・・・
- トラブル・トラベラー (trouble traveler;旅の苦労)
旅先で置き引きにあってしまった双子の兄弟を助けに行くことに。
そこは、岡山県倉敷市を真似て作った観光都市暮忘木。
倉敷市の大原美術館に対してここには小原美術館がある。
そこには一枚だけ本物の絵「セバスチャンの『陽光の下の狂気』」が
展示してある。
置き引きは<画聖>の仕業だと気付いた僕は、その小原美術館で
画聖に出会う。そして、そこへ猟銃を持った3人組が・・・
- ワンナイト・スタンド (one-night stand;一日限りの芝居)
授業参観に出てくれという双子に頼まれ、嫌々ながら出席した僕。
教室の中の様子が少し変である。
最後に哲が直と入れ換わって、それで気付かれるかどうかクラスみんなで
賭けをしていたことが判明。
午後の父母会でもその話題で持ちきりだった。
ところが、真相は、それだけではなかった・・・
- ヘルター・スケルター (helter-skelter;周章狼狽)
双子の兄弟からは、両親はそれぞれ別々の愛人を見つけて出ていった
と聞かされている。
そう、聞かされているだけで、僕は両親の顔も声も知らない。
そんな時、近くの湖から車が発見され、中から男女二体の白骨死体が
発見された。まさか、双子の両親では・・・
- ロンリー・ハート (lonely heart;淋しい心)
親父から、依頼があった。
家庭に飽きた主婦が、文通をしていたという。
気を許した主婦は、主人の悪口を含めいろいろ書いていた。
ところがある日、文通相手の男性が、その手紙を盾にして脅迫してきた。
現金を渡した後で、それを奪い返して欲しいという。
だが、現金受け渡しの場所へいってみると、何と旦那が死んでいた・・・
- ハンド・クーラー (hand cooler;ハンドクーラー)
今年初めて花粉症になってしまった双子の兄弟。
通院している耳鼻科で知り合った城が崎みやびちゃんという女の子の家に、
毎朝全く思いあたる節のない山形新聞が置かれていたという。
ある日、主人が怪我をして帰ってきた。
彼は、酔っ払って怪我をしただけなのか、それとも誰かに怪我を
させられたのか?
そして、山形新聞の謎は???
- ミルキー・ウエイ (Milky Way;天の川)
ある日、双子の家を訪れると、家には父親らしい人が。。。
これでお別れかと思って、その夜町で酔っ払ったついでに電話をしてみた。
留守番電話を再生してみると、誘拐犯からの脅迫電話が...
しかも、双子がそれぞれ別の犯人に誘拐されているらしい。。。
そこで、僕は親父と一緒に双子の家へ行き、犯人からの要求を聞き、
<画聖>に応援を求めることにした・・・
かまいたち
新人物往来社 (1992.1.30)
- かまいたち
『歴史読本』1988年4月号、第12回歴史文学賞佳作
八辻が原先の十軒長屋で町医者をしている玄庵。
そこには娘のおようがいた。
急病人があって、須田町の先まで往診に行った玄庵が心配になった
おようは、一人雨の中を提灯をともして迎えに出ていた。
というのも最近、かまいたちと呼ばれる辻斬りが噂になっていたからだ。
ところがそこで、かまいたちに出会ってしまった...
ところが、その男の顔を見てしまったものの、おようは斬られることは
なかった。。。
ところが、その男が、玄庵の家の向かいの長屋に移り住んできた・・・
- 師走の客
『小説宝石』1989年1月増刊号
千住上宿にある梅屋は、主人の竹蔵、女房のお里、子供の松吉で商いを
続けている宿屋である。料理と、彼らの名前を合わせた「松竹梅の里」
という名前が気に入って、小さいながらも評判が良かった。
そこへ、毎年師走の一日から五日間泊まっていく常二郎という客がいた。
彼は宿賃として、金製の飾り物を置いていくと言う・・・
- 迷い鳩
『別冊歴史読本』1991年8月特別増刊号
日本橋通町で一膳飯屋「姉妹屋」をやっているおよしと、それを手伝う
義妹のお初。およしの旦那は六蔵親分であった。
ある日お初は、丁度通りかかった商家のお内儀さんの小紋の袖に、
濡れたような血がついているのを見た。
ところが、それはその場に居合わした誰にも見えなかった・・・
- 騒ぐ刀
第11回(1987年)歴史文学賞侯補作品を改稿
南町奉行所定廻り同心内藤新之助は、うめき声をあげる脇差を
つかまされた。
まわりの誰もがその内容を聞き取れない中、お初だけはその内容を
聞き取ることが出来た。
「木下河岸の小咲村、坂内の小太郎に、虎が暴れていると伝えてくれ」
と繰りかえしていると言う。
捜しだしてみると、小太郎とは一匹の犬であった・・・
とり残されて
文芸春秋 (1992.9.25)
- とり残されて
「婦人公論」1991年2月臨時増刊号
挙式まで一カ月というとき、わたしの婚約者は交通事故で死んでしまった。
18歳と3ヵ月の若い女が、一方通行を逆走してきて車をぶつけられた。
彼女は二十歳になっていなかったから、ほとんど何の罪もかぶらない。
それ以来、何とか彼女を殺すことだけを考えていた。
友人の紹介で小学校の擁護の教師として働き始めた私は、ある日から
だんだんと大きく、足音の聞こえてくるのに気がついた。。。
- おたすけぶち
「オール讀物」1991年7月号
相馬孝子は、ある高原地の町にやってきていた。
10年前亡くなった兄に、その後の裁判の結果を知らせようと。
そう、「おたすけ淵」と呼ばれる所で、交通事故を起こしたのだ。
車には、兄の友人を含めて4人乗っていた。ただし事故後、
いくら捜索しても兄の死体だけは見つかっていなかった・・・
- 私の死んだ後に
「コットン」1990年4月号
佐久間実、背番号21。
それまで素晴しい投手だった彼は、ある日突然コントロールが乱れた。
それだけでなく、右腕が動かなくなり、登録を抹消された。
酔って喧嘩をふっかけられて、刺されてしまった。
そこで彼を助け上げ、生と死の中間の世界を案内してくれたのは、
白石百合子という女性だった。彼女は・・・
- 居合わせた男
「オール讀物」1991年12月号
平日の昼下がり、鳥羽修次郎は、商談とその後、母を見舞って、
中央本線の特急あずさ20号に乗り込んでいた。
グリーン車の車内は空いており、他には若い二人の女性だけだった。
柏木美保と高木良子は、気軽に鳥羽修次郎に話しかけてきた。
彼女達の会社で、嘱託として働いていた相馬さんが自殺したという・・・
- 囁く
「小説現代」1989年6月号
銀行に勤めている幼なじみの雅子に「とっておきの話」を聞こうと
喫茶店で待ち合わせた僕。
そう、社内報の原稿を頼まれており、そのネタ探しをしていたのだ。
彼女の話す「とっておきの話」とは、お札が口をきく・・・
つまりお札が囁きかけるのだという。。。
- いつも二人で
「小説NON」1989年7月号
相原真琴は、知り合い夫婦に頼まれて、彼らの二週間の海外旅行中の
留守番を引き受けた。
その夜、2時14分に彼女はやってきた。。。姫野君絵。
彼女は、以前のこのマンションの住人で、自殺をしたという。
彼女は真琴の体にとりついて・・・
- たった一人
「オール讀物」1992年6月号
永井梨恵子は、非常にリアルな夢を見るようになった。
特に不安になるわけではないけど、何か焦りのような物を感じ、
調べずにはいられない。。。
会社の近くの調査事務所に、その夢の中の風景を探してくれるように
頼むことにした。
その事務所は、河野修介という男が一人でやっていた。。。
天狗風 霊験お初捕物控2
新人物往来社 (1997.11.15)
江戸深川山本町の下駄屋の一人娘おあきが、父政吉の目の前で突然姿を消した。
おあきは半月後には嫁に行く身であり、幸せの絶頂で自ら身を隠す理由はない。
政吉の話では、神隠しにあったように突然見えなくなったのだと言う。
お初はこの探策を、お奉行様から直接依頼される。
そうこうしているうちに、またもや娘が神隠しにあう。。。元大工町の八百屋の
長野屋の長女、お津であった。
お初は、自らの探策及び話の出来る猫『鉄』を通じ、この神隠しの背後には
天狗と呼ばれる化け物が存在することを知る。。。
心とろかすような マサの事件簿
東京創元社 (1997.11.28)
- 心とろかすような
『鮎川哲也と十三の謎'90』1990年12月
蓮見探偵事務所の加代子さん。
彼女はその日、高校生の妹の糸子を迎えに学校へ行く予定だったのだが、
友人が迎えに来て欲しいと言って来た。あいにく父親は出張中。
そこで彼女は、諸岡進也に妹の迎えを頼むことにした。
だが、彼らはなかなか帰ってこず、見つけたのは翌日の朝であった。
しかも、ホテル愛の城の前で・・・
- てのひらの森の下で
<野性時代>1989年8月号
加代子さんと飼犬のマサとの朝の散歩コースは決まってる。
その最後に、てのひらの森という公園で、藤実咲子さんという女性と
一緒になる。
ある日、二人と一匹でそのてのひらの森に入っていくと、
男性が倒れていた。
加代子さんと藤実さんは、マサを残して110番しに行った。
ところがその死体は、急に立ち上がって逃げ出した!
- 白い騎士は歌う
<野性時代>1990年5月号
ある雪の降り始めた日、宇野友恵さんは蓮見探偵事務所にやって来た。
現在、強盗殺人事件の容疑者として指名手配されている弟の、
借金の理由を調べて欲しいと言う。。。
- マサ、留守番する
蓮見法律事務所の面々が、社員慰安旅行に出かけることになった。
行き先は台湾、3泊4日である。
朝早い飛行機のため、前日の夜、成田の近くで泊まったため、
その夜からマサはお留守番だった。
次の日の朝、子どもが五匹のウサギの子どもを、
事務所の前に置いていった。。。
- マサの弁明
『鮎川哲也と十三の謎'91』1991年12月
ある日、蓮見法律事務所に依頼をして来たのは、宮部みゆきという
推理小説作家であった。
依頼内容は、「夜中の2時に、誰かがつっかけを履いてやってくる」
というものであった。。。
魔術はささやく
新潮社 (1989.12.10)
第2回日本推理サスペンス大賞受賞
挙式目前に、マンションから飛び降り自殺した加藤文恵。
地下鉄のホームに飛び込み自殺をした三田敦子。
そして、深夜の交差点に飛び出し、行きあわせたタクシーに飛び込んだ菅野洋子。
彼女達は、全く関係ないと思われていたが、実は繋がりがあった。
そしてもう一人、この仲間に加わるべき女性、高木和子がいた。
その不幸なタクシーの運転手、浅野大造の所に養子としてやってきていた日下守。
彼の父親は12年前、公金を横領し、家を出て行ったまま戻ってこなかった。。。
幻色江戸ごよみ
新人物往来社 (1994.7.20)
- 鬼子母火
歴史読本1994年2月号
伊丹屋で火が出た。火元は神棚。しかし、確かに火は消していたという。
番頭の藤兵衛は、前日に飾った注連縄の中に白いこよりのようなものが
はさまっており、その中に髪の毛がはさんであるのを見つけた・・・
- 紅の玉
歴史読本1994年3月号
その頃、老中水野様の改革により「奢侈取り締まり」がなされていた。
そのせいで、飾り職人の佐吉のところには、儲けを見込むことの出来る
注文は全くこなくなってしまった。
彼の腕は確かなものの、病弱な妻お美代をかかえて、生活は苦しかった。
ある日、老侍がやって来て、銀のかんざしを作って欲しいという・・・
- 春花秋燈
時代小説大全1994年夏号
古い行灯を買い求めにきた侍。
彼を相手に、倉にしまってあるという曰く付きの二品の説明を始める
古道具屋。
一つは、凝った象眼細工のついている行灯。
もう一つは昇竜が浮彫りになっている黒檀の行灯。。。
- 器量のぞみ
歴史読本1993年6月号
大女で愛想の悪い乱暴者の醜女と噂されているお信。
彼女のところへ、器量が気に入ったから嫁に来て欲しいと
言って来た者があった。
深川近辺では評判の美男子、下駄屋「木屋」の一人息子繁太郎。
なんとなく気になるまま、お信は嫁いでいった。。。
- 庄助の夜着
歴史読本1993年7月号
居酒屋のいなり屋の主人五郎兵衛には、一人娘のおゆうがおり、
秋には川崎の干し物問屋へ嫁ぐ予定だった。
いなり屋には、庄助という男が店を手伝ってくれていた。
七夕祭の翌日、彼は夜着を見つけてきたという。。。
- まひごのしるべ
歴史読本1993年8月号
本所四ツ目の盆市で、つやと藤吉は迷子を見つけた。
2歳ぐらいのその子には、迷子札がついていた。
ところが、その札の所へ行くと、本人は火事で行方不明だという。
しかも、その火事が起こったのは、3年前・・・
- だるま猫
歴史読本1993年9月号
一膳飯屋ひさご屋で働く文次。彼の夢は、火消しになることだった。
ただ、土手組の人足として消火に携わったとき、体が動かなくなった。
自分でも臆病者だと思い、足手まといになると言われて仕方なく
今のひさご屋へやってきたのだ。
そこで、そこの親父からだるま猫の頭巾をもらった。
これを被ると、火事の全体が手に取るように見えると言う・・・
- 小袖の手
歴史読本1993年10月号
おつるが一人で小袖を買ってきた。
伊予染の渋い鼠色の小袖で、安かったと言う。
母親は、しばらく一人になって、その小袖をほごした後、
子どもの頃の話を始めた・・・
- 首吊り御本尊
歴史読本1993年12月号
呉服問屋上総屋に丁稚奉公していた捨松は、仕事が辛くて実家に
逃げ帰ってきた。しかし、父親にはしかられ、母親は泣くばかりだった。
そしてすぐに番頭さんに連れ帰られた。
数日後、大旦那様に呼び出され、家宝の首吊り本尊様の掛け軸を
見せられる・・・
- 神無月
歴史読本1993年11月号
一年に一度、神無月に押し込みを働いて、あとはなりをひそめている...
そんな律儀な賊がいるという。
しかも、取るのは5両から、多くても10両まで。
押し入られた方にとっては、傷手に成る程の金額ではない。。。
- 侘助の花
歴史読本1994年1月号
隠居した質屋の吾兵衛の所へ、碁仲間の要助が相談にきた。
隠し子が出来てしまったと言う。
要助は看板屋で、掛け行灯を作るときにはいつも、侘助の花を描いていた。
その理由を尋ねられたときに一度だけ、嘘の作り話をしたのだ。
それが原因だと言う・・・
- 紙吹雪
時代小説大全1993年冬号
質屋の井筒屋に奉公にあがったおぎん。
彼女の母親は昔、父親の病気を見てもらうためのお金を、井筒屋で借り、
どうしても返せなくなって一家心中をした。
ただ、おぎんだけは生き残った。
3年間、真面目に奉公し、そして最後に・・・
長い長い殺人
光文社 (1992.9.15)
刑事・強請屋(ゆすりや)・少年・探偵・目撃者・死者・旧友・証人・部下・
犯人という10人の財布。
彼らの目から見た事件の様子が記されている。
愛人関係にある森本隆一と森元法子。彼らの結婚相手が、生命保険をかけられて
次々と死亡した。森本には以前に一度結婚歴があり、その相手も殺されていた。
保険金詐欺だと目をつけた、森本の行きつけのスナックのホステス、葛西路子は、
強請ったと思ったら殺されてしまった。
二人のアリバイは、初めはあいまいだったが、そのうちに目撃者が現れ、
潔白が証明されてしまった。。。
初めはマスコミから犯人として騒がれていた二人は、一躍時の人となる。
真の犯人は一体・・・
地下街の雨
集英社 (1994.4.25)
- 地下街の雨
「小説すばる」'91年1月号
三浦麻子は2年前、つき合って婚約し、結婚2週間前になって突然
別れ話を持ち出された。同じ会社の伊東充が相手だった。
その後会社を止め、訴訟を起こしたが、それは親にまかせっきりだった。
失業保健の給付も終わり、せっつかれるようにウェイトレスのアルバイトを
始めたものの、気は重かった。
そんな店の暇な午後、女がやって来た。
彼女は何か自分と同じ心の内を持っているように見えた・・・
- 決して見えない
「問題小説」'91年6月号
ある春の夜、タクシー待ちをしていた三宅悦郎は、30分以上待っても
タクシーは来なかったため、後ろに並んでいた年輩の男性と共に、
家まで歩くことにした。
その途中、その年輩の男性は、不思議な話を始めた・・・
運命の赤い糸と黒い糸。。。
- 不文律
「問題小説」'92年5月号
埠頭から一家4人が海へ車ごと飛びこんだ。無理心中の疑いが・・・
ところが、話を集めていると、意外な真実が見え隠れしてきて・・・
- 混線
「問題小説」'90年7月号
妹の家にいたずら電話がかかってくると言う。
そこで、妹の家に張り込んでいた僕は、その犯人と話をすることにした。
友だちの友だちの話として・・・そう、電話には精霊がいるという話を・・・
- 勝ち逃げ
「小説すばる」'91年11月号
佐山浩美の母の姉である伯母、勝子さんがなくなった。
御通夜の夜、伯母の家で寝てて良いと言われて休み、次の朝、
ポストの中に手紙を見つけた。
なんと、真面目一筋と思っていた伯母が、駆け落ちを考えていたことが
あるというものだった・・・
- ムクロバラ
「小説すばる」'93年11月号
部長刑事の伊崎の元に、最近、橋場秀男という男が訪ねてくる。
彼は、ある日突然不良少年に切りつけられ、逆にその少年をさし殺して
しまった男だった。
幸い裁判で無罪にはなったものの、その後仕事を止め、娘が家出し、
妻とは離婚する羽目になってしまったのだ。
その男が、「ムクロバラがまたやったじゃないですか」と、新聞記事を
持ってやってくる。骸原とは、その不良少年の名前である。。。
- さよなら、キリハラさん
「小説すばる」'90年5月号臨時増刊号
突然音が聞こえなくなった。
最初のうちは、ぼおっとしていたからとか、酔っ払っていたからとか
そう思いこんでいたようだが、どうやら違うらしい。
そのうちこの無音状態は、家の中でのみ起こっていることに気付いた。
そんなある日、キリハラさんという男がやって来た。
彼の言うことには・・・
ぼんくら
講談社 (2000.4.20)
深川北町にある湊屋宗右衛門の鉄瓶長屋。そこの八百富の太助が殺された。
娘のお露は、殺し屋の仕業だと言うが、どうやら裏があるらしい。
差配人の久兵衛は、自分が狙われたためだと言い残して、姿を消した。
新しい差配人は、佐吉という27歳の青年だった。差配人としては若すぎる。
そうこうしているうちに、桶職人の権吉は博打うちがこうじて、娘のお律を
借金のかたに入れてしまったらしい。
ある日、この長屋を見まわっていた南町奉行同心の平四郎に、子供が
飛びこんできた。
この子は調べてみると、通い番頭をしている善次郎の子供だと分かった。
名を長助と言う。ただし、善次郎は既に所帯を持っていた。
またその頃、おくめという女郎あがりの女が長屋に移り住むことになった。
さらに、八助という男とその家族が、壷を拝むという信心にかぶれてしまったという。
この家族につれられて、あと数家族も信心にかぶれてしまい、そしてある日、
これらの住人が一斉にいなくなってしまった。
このように、次から次へと事件が起こり、住人が減っていく長屋。
その裏にはどんな企みが隠されていたのか。。。
あかんべえ
PHP研究所 (2002.3.29)
本所相生町の高田屋は、主人七兵衛の営む賄い屋である。
妻のおさき、若い太一郎を初めとする包丁人らによって大変繁盛していた。
太一郎の妻は多恵。彼らの間には、男の子が二人生まれたが、二人とも
あっけなく逝ってしまった。その後に生まれたのがりんである。
彼女も、12歳の春、高熱で倒れた。
丁度、太一郎ら一家が七兵衛の意志をついで料理屋を出す準備の最中であった。
彼女は、まさに三途の川を渡りかけているところだった・・・
何とか一命を止めたおりんは、、、お化けさまが見えるようになっていた・・・
人質カノン
文藝春秋 (1996.1.30)
- 人質カノン
「オール讀物」1995年1月号
OLの遠山逸子は、深夜になってしまった忘年会の帰り、
近所のコンビニに寄った。
そこへ強盗がフルフェイスのヘルメットをかぶってやってきた。
ところが彼は不用意に、ポケットからガラガラを落していった・・・
- 十年計画
「小説新潮」1993年9月号
タクシーの女性運転手の話。
彼女は昔、失恋した時に恋人を殺す10年計画を立てたという・・・
- 過去のない手帳
「オール讀物」1995年5月号
大学生の和也は、大学へは行けなくなってしまっていた。
そんなある日、バイト先へ向かう電車の中で、網棚にのった雑誌を
手に取った。
その雑誌には、まっさらな手帳が挟みこんであり、一人の女性の名前
のみが書かれていた。
雑誌は、20〜30代の女性が好んで読みそうなものである・・・
- 八月の雪
「オール讀物」1993年8月号
中学生の石野充は、交通事故にあって片足を失った。
こんな不公平なことばかりの世の中なら、生きていたくないと言って
自殺してしまった、いじめにあっていた同級生が関係しての結果だ。
家で何も考えることもなく過ごしていたとき、祖父が亡くなった。
その祖父の文箱の中から、遺書が見つかった・・・
- 過ぎたこと
「小説新潮」1994年7月号
私の務める調査会社には、5年前に、エスコートサービスというのを
やっていた。そこへ、中学三年生の男の子の依頼者がやってきた。
彼は、自分を守って欲しいと言う。いじめにあっていたのだ・・・
- 生者の特権
「オール讀物」1995年7月号
田坂明子は、結婚できると思っていた恋人にふられ、飛び降り自殺
してやろうと考えていた。
深夜まで自殺にふさわしいビルを探していた時、小学生ぐらいの
男の子が学校に忍びこもうとしていた。
訳を聞いてみると、友だちにいじめられて、宿題を学校に
置きっぱなしにさせられてしまったのだという・・・
- 漏れる心
「オール讀物」1995年11月号
照井和子は、夫の転勤にあわせて、せっかく買ったマンションを
売り出そうとしていた。
見学会を設けたその日、上の階の水道管が漏水し、水浸しに
なってしまった・・・
堪忍箱
新人物往来社 (1996.10.30)
- 堪忍箱
「時代小説大全」1995年冬号
菓子問屋近江屋には、蓋を開ければわざわいが起こるという勘忍箱
というものが伝わっていた・・・
- かどわかし
「時代小説大全」1996年夏号
ある日の夕方、畳屋の箕吉のところへ、浜町の料理屋辰美屋の一人息子
である小一郎が、自分をかどわかしてくれと言いに来た・・・
- 敵持ち
「時代小説大全」1995年春号
飯屋の通いの板前である加吉は、主人の知り合いの居酒屋の手伝いを
することになった。
そこの一人の上客に目を付けられ、命を奪われそうになった。
怖くなった加吉は、近所の侍の小坂井又四郎に用心棒を頼むことにした・・・
- 十六夜髑髏
「週刊新潮」1993年11月11日号
数えで十五歳の時、火事で両親と弟を一度に失ったふきは、小原屋という
米屋に女中としてやってきた。
ところがこの小原屋は、今にも潰れそうなお店であった・・・
- お墓の下まで
「週刊新潮」1995年2月9日号
差配人の市兵衛は、月番のときの迷子や捨て子を引き取って育てていた。
年の順に、おのぶ、藤太郎、おゆきである。藤太郎とおゆきは兄妹であった。
ある日突然、彼らの母親が現れていた・・・
- 謀りごと
「週刊新潮」1996年2月1日号
深川吉永町の丸源長屋はには、黒兵衛という差配人がいた。
ある朝、その黒兵衛が、長屋の一室の香山又右衛門というお侍の家で
死んでいた・・・
- てんびんばかり
「小説すばる」1996年5月号
徳兵衛長屋に住んでいたお吉の家族とお美代の家族は、とても仲良かった。
それで、二人は幼なじみのようにして育った。
ところがある年水害で、お吉の父親がなくなり、その後のはやり病で
母親もなくなった。
お吉はお美代の家族と共に暮らしていたが、お美代の父親が事故で亡くなり、
母親も亡くなった。
二人で暮らし始めた頃、お美代に縁談が持ちこまれ、彼女は嫁いでいった・・・
- 砂村新田
「小説新潮」1995年7月号
屋根職人の角造は、ある日突然目が見えなくなってきた。
そのうち仕事中に足を踏み外し、足を折ってしまった。
一家の暮らしは厳しくなり、十二歳のお春も通い女中をすることになった。
そんな奉公先で、使い走りに出されたとき、見知らぬ男がお春の名前を
呼びかけてきた・・・
あやし 〜怪〜
角川書店 (2000.7.30)
- 居眠り心中
「怪」第参号 1998年9月
万年屋のはからいで、木綿問屋「大黒屋」に奉公に出た銀次。
離れに住んでいたが、風邪で寝込んでしまった大旦那様のおつかいで、
いろいろお遣いに出されていたが、若旦那様が大旦那様のお気に入り
だったため、一所に出掛けることが多かった・・・
- 影牢
「怪」第伍号 1998年5月
ろう問屋の「岡田屋」では、三月ほど前に惨殺があった。
その裏話を一番番頭の松五郎が語る・・・
- 布団部屋
「七つの怖い扉」(新潮社) 1998年10月
酒屋の「兼子屋」は、主人が短命であることが知られている。
そして、奉公人はみな丈夫でよく働く。その裏には・・・
- 梅の雨降る
「時代小説大全」(新人物往来社) 1999年春号
担ぎの油売りをしている箕吉には、若い頃に気が触れてしまった姉がいる。
その姉が、とうとう亡くなったという・・・
- 安達家の鬼
「新潮」(新潮社) 1999年11月臨時増刊
筆と墨を扱う小さな店である笹屋。
ここへ嫁にきたわたしは、女中上がりだった。
お義母さんの世話をするために嫁にきたようなものだった。
そのお義母さんには、鬼がついているという・・・
- 女の首
「怪」第六号 1999年9月
袋物屋の「葵屋」に奉公にあがることになった太郎。
彼は、手先が器用であったが、口をきけなかった・・・
- 時雨鬼
「オール讀物」(文芸春秋) 2000年2月
つき米屋の「加納屋」に女中奉公に来ていたお信は、重太郎という男に
そそのかされて、別の料理屋の住み込みの仲居に変わろうかどうか迷い、
昔、世話をしてくれた桂庵の旦那に相談しようとやってきた。
ところが、そこにいたのは・・・
- 灰神楽
「怪」第七号 1999年12月
奉公人が刃傷沙汰を起こしたと、政五郎のもとへと遣いがやってきた。
その奉公人とは、おかみさんが嫁に来たときに、実家から一緒に
ついてきたおこまという女中だという・・・
- 蜆塚
「怪」第八号 2000年5月
桂庵をしていた父の後をついだ米介は、父の昔の碁敵だったという
松兵衛が、水腫で寝込んでしまっていると聞き、見舞いに行った。
そこで彼に聞いた話は・・・
ブレイブ・ストーリー(上・下)
角川書店 (2003.3.10)
普通の、テレビゲーム好きの小学五年生の三谷亘。
ある日、彼の両親が離婚することに...
その運命を変えようと、幻界(ヴィジョン)へと旅立つ・・・
だが、本当に変えるべきものは、運命ではなく自分の○だった・・・
R.P.G.
集英社文庫 (2001.8.25)
四月二十七日の夜、渋谷区新倉町の住宅地の一画、三棟の建て売り住宅の
建設現場で、一人の男が殺された。所田良介、48歳。
捜査が進むうちに、三日前に発生したカラオケボックスでのアルバイト、
今井直子の殺人事件との関連が出てきて、合同捜査体制に移った。
一方で所田は、ネットの世界で仮想の家族を作っていた。
それは、擬似家族であったが・・・
チチンプイプイ
文藝春秋 (2000.4.20)
共著:室井滋
- ひらけ〜ゴマ!
「オール讀物」1996年6月号
疑惑のタクシー・ドライバー
銭湯は女の一生の見本市
化粧品やらなきゃ女優じゃない!?
いなくなった脳みそ
地震が怖いッ
- ツルカメ ツルカメ
「オール讀物」1996年10月号
ミヤベミユキの正体
ヴィンテージ・ストレス
最近のタクシー小咄
ノーブランド・ショッピングの女王
私たち強運二人女!?
- くわばら くわばら
「オール讀物」1997年5月号
住めば田舎!?
お父さんゴメン
血の呪縛!?
そして誰もいなくなったら?
- ビビディバビディブー
「CREA」1997年7月号
ガソリンスタンドの経営も考えた
- カゴメ カゴメ
「週刊文春」1999年1/14号
旅行は二泊が限界!?
犯罪に向かう脳
- だるまさんがころんだ
「オール讀物」1999年11月号
実はもう一作書いていた!
対象との距離の取り方
どこまで具体的に描写するか
どこから小説が生まれるか
- アブラカダブラ
「鈴木その子さんですね!」
『約束』にあやうく涙……
- ずいずいずっころばし
「オール讀物」2000年4月号
<富山編>お墓のご利益!?
<浅草編>テレビが子守りをしてくれた
ドリームバスター
徳間書店 (2001.11.30)
16歳のシェンと師匠のマエストロの二人は、テーラでの実験「ナイトメーア」
の際に逃げ出した、凶悪犯の意識体を追うドリームバスターである。
- ジャック・イン (JACK IN)
8歳のクリスマス・イブ、道子は火事を見た。
その時、火事場の家の二階で、黒い影が踊っているのを見た。
そして結婚し、娘の真由が同じ歳になったクリスマスの頃、
その夢を見はじめた・・・
- ファースト・コンタクト (First Contact)
27歳の清涼飲料水のボトリング会社の経理課員、本村伸吾は、母親の
婦人会旅行へ出掛ける間、実家で父親と過ごすことにした。
その夜、父親が急に腹痛を起こし、救急車で病院へ担ぎ込まれ、
そのまま入院してしまった。
幸い症状は大したことはなかったが、血液検査で、自分が父親の
子供でないことが分かってしまった・・・
- D.Bたちの"穴(ビット)"
ある日、ドリームバスターの集まる"穴"というバーに、一人の女が
迷い込んできた。弟を探し歩いていると言う。
店主の老人は、早くこの街を出た方が良いと言って返したが、、、
ところが、悪いパトロール隊員にひっかかり、襲われそうになったところを
相手を突き落して逃げ伸びた。
再び店に戻ってきたところに、シェンがやってきた・・・
リップはサイボーグ???
ドリームバスター2
徳間書店 (2003.3.31)
- 目撃者 (Eyewitness)
村野理恵子は、喧嘩の末に相手を殴り殺してしまった現場を目撃した。
理恵子の証言が元になって、犯人柿本均は逮捕された。
ところが後で、警察の誘導尋問にのってしまったのではないかと
思えてきた・・・
そんな心の揺れを慰めようと、犯罪者ワッツが入り込んできていた・・・
- 星の切れっ端し (Stardust)
8歳のタカシは、母親と義理の父親に育てられている。
ただし父親は、子供を家庭内暴力の対象にしていた。
そんな子供の夢の中に、凶悪犯モズミが入り込んできた。
彼は、タカシを守ると言うが・・・
平成お徒歩日記
新潮社 (1998.6.30)
宮部みゆきさんが、勉強のため、そして病気の治療のためにあちこち
歩きまわった旅の日記。
彼女の時代物によく出てくる地名等(富岡八幡宮とか回向院とか)について、
身近に感じられるようになるエッセイ。
機会があれば、後をたどって歩いてみたくなります。
ぱんぷくりん(鶴之巻・亀之巻)
PHP研究所 (2004.6.18)
昔話的なものを題材にした絵本。イラストは黒鉄ヒロシさん。
- 鶴之巻
宝船のテンプク、招き猫の肩こり、鳥居の引越し
- 亀之巻
ふるさとに帰った竜、怒りんぼうのだるま、金平糖と流れ星
誰か
実業之日本社 (2003.11.25)
8月15日、今多コンツェルンの会長のお抱え運転手であった梶田信夫が死んだ。
歩道にいる所を、自転車でひき逃げされたらしい。
梶田の娘の聡美・梨子の二人が、父親の本を出してマスコミに訴えたいと
言っているらしく、今多コンツェルンのグループ広報室所属で、娘婿の私の所へ、
その編集を手伝ってやってくれないかと依頼がきた・・・
日暮らし(上・下)
講談社 (2005.1.1)
- おまんま
- 嫌いの虫
- 子盗り鬼
- なけなし三昧
- 日暮らし
- 鬼は外、福は内
やっと、鉄瓶長屋の事件が決着ついたと思っていたら、隠れ住んでいた
葵が殺されたと言う。
しかも、下手人として捕えられているのは息子の佐吉!
湊屋総右衛門のはからいで表沙汰にはならなかったものの、今一つ納得の
いかない井筒平四郎。
佐吉の話を聞き、何かの間違いだと信じ、弓之助やおでこ、政五郎らの手を
借りながら、真実へと迫る・・・
ICO−霧の城−
講談社 (2004.6.15)
トクサ村では、角のある子供が生まれたら、両親とは引き離して育て、
その子が13歳になったら生贄(ニエ)として『霧の城』へと連れて行かれる
という習慣があった。
そして今回もまた、ICO(イコ)という少年が、生贄になった・・・
孤宿の人(上・下)
新人物往来社 (2005.6.21)
四国の讃岐の国、丸海藩。
金比羅大権現様のお社の近くにあり、最近は紅貝染めで少しずつ
経済状態も良くなりつつあったこの藩は、幕府の命令で罪人を一人、
流人として預かることになった。
船井加賀守守利という名前である・・・
ドリームバスター3
徳間書店 (2006.3.31)
- 赤いドレスの女 (Woman in Red)
『SF JAPAN』2003年秋季号
同期の田島瑛子に誘われ、合コンに参加した村野理恵子。
その途中に、ジッと自分たちの席の方を見つめる、
赤いドレスを着た女がいることに気がついた・・・
- モズミの決算 (Mozumi's adjustment)
『SF JAPAN』2005年冬季号
タカシと融合してしまい、どうやったら別れられるかも分からなく
なってしまったモズミ。
それでも、必死になってタカシを守ろうとしていた・・・
- 時間鉱山 Part 1 (Time mine)
友人のマッキーが帰って来なかったという噂話を聞き込んだ。
調べてみると、最近一緒に飛んでいたレイモンという男が
言ったという。
シェンはさっそく、レイモンに会いに行った・・・
宮部みゆきの江戸レシピ
ぴあ (2006.3.31)
『あかんべえ』や『ぼんくら』等の宮部さんの歴史小説中に出てくる
料理を実際に再現してみたものを、写真と解説付きで紹介。
最後に、宮部さんと料理人の福田さんとの対話も収録されています。
名もなき毒
幻冬舎 (2006.8.25)
愛犬シロを連れ、いつもの通りのコースを散歩していた67歳の古屋明俊。
散歩の折り返し点であるコンビニで紙パックのウーロン茶を買い、
途中で飲んだ。。。途端、苦しみ出し、救急車の到着する前に息を引き取った・・・
今多コンツェルン・グループの会長の娘の婿であり、グループ内の
社内報「あおぞら」を編集するグループ広報室に勤める杉村三郎。
ずっとアルバイトで来ていて手伝ってくれていた女子大生の椎名さんが
学業の都合で辞めた後、新たに採用された原田いずみさんは、
面接では優秀だと思えたものの、実際に働き出してみるとそうでもなかった・・・
ドリームバスター4
徳間書店 (2007.5.31)
時間鉱山 Part 2 (Time mine) と、エピローグ−帰還− (Epilogue)
シェンの友人マッキーが、行方不明だという。
ドレクスラー博士によると、それは通常の「場」ではなく、
謎の「場」、「時間鉱山」であるという。
そこへ、マエストロトともにマッキーを救出しに行ったシェンは、
そこで11歳のヒロム、28歳のキエとユキオと出会う。
彼らは共に、時間鉱山の鍵を握る城壁へ向かう。
ところが途中にある森の作業場に入り込んだところで、
キエが断崖から落下してしまった。
マエストロは、情報を得るために一旦テーラへと帰還し、
シェンはヒロム達と残ることになった・・・
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