森村誠一
1933年1月2日、埼玉県熊谷市生まれ。青山学院大学英文科卒。
新大阪ホテルを経てホテル・ニューオオタニに勤める。
科学的管理法殺人事件
角川文庫 (1975.5.10)
- 科学的管理法殺人事件
ホテルの受付係の山本芳男は、空想の中で、気に入らない人間を
葬る方法を考えるのが趣味であった。もちろん、殺人犯に問われてはならない。
彼の上司は最近、アメリカの経済学者テーラーの提唱した科学的管理法を
取り入れ、非人間的な仕事を要求するようになっており、部下の評判は
非常に悪かった。
そこにつけこみ、山本は、客室付ボーイの島野三郎、キークラークの
石川音弥の2人に、業務上の情報を流し、一つの作為をすることによって、
上司を殺害し、不倫相手に重傷を与えたのである。
もちろん、殺人には問われない方法で・・・
- 公害殺人事件
群馬県安西市は、東洋亜鉛でもっている農村である。
ところが、この工場からカドミウム、その他の貴金属がたれ流され、
第二のイタイイタイ病地区として指定された。
その東洋亜鉛の安西工場長の岩井順吉が殺害された。
当初犯人は、被害を受けた農民の一人だと思われていたが・・・
- 殺意の架橋
その日平岡家は、ゆっくりとした休日を迎えていた。
妻の京子は窓を開けて掃除を始め、夫はゆっくりと起き出してきた。
そこへ電話が鳴り響き、最初に出た妻は、夫に変わった。
その時・・・突然、夫は倒れた。胸に赤い血の穴を開けて・・・
- 虫の息
医師の菊地昇平は、毎朝のドライブを楽しみにしている。
その朝は、濃い霧が立ち込めていたが、毎朝通る良く慣れた道。
いつもと同じく通る人もいないので、ある程度のスピードを出して
通っていた。そこへ突然人影が・・・
あわててハンドルを切り人への衝突は避けたが、街路樹へぶつかり
枝を切り倒してしまったようである。
ところが、車から降りて確認してみると、折れた枝がぶつかって、
避けたはずの人が倒れて死んでしまっていた・・・
- 電話魔
富森安子は、夜になるとでたらめに番号を回して出た人の反応を楽しむ
電話魔であった。
ところがある日、かけた電話から聞こえてきたのは「たすけて!殺される」
という女の声であった・・・
- 虚無の標的
河崎直二は、大手広告代理店に勤めていたが、小説の新人賞の次点に
通ってしまい、小説家をめざすために退職した。
ところがそれから十数年、書いても書いても彼の作品が雑誌に掲載される
ことはなかった。一つには、運がなかったのではあるが・・・
ある日突然、「小説を書くのはやめる」と言って、セールスマンとして
就職した。
ところが、六ヵ月経っても一本の契約も成立させることは出来なかった。
ある日、隣りの家でミシンを直して欲しいと言って来た。
修理自体は簡単なものであったが非常に感謝され、その時、それまでは
一度も家に上がらせてもらえなかった理由が分かったようになった。
その後の直二の販売成績は目を見張るものがあり、彼を見込んだ所長は、
かれをパトロール隊の隊長にすることにした・・・
青の魔性
角川文庫 (1978.6.30)
- サギ・カンパニー
「問題小説」昭和46年2月号
絶対に人を信用しないことを信条としている原野九朗は、小学五年の時に
市長かつ野沢紡績社長の息子、野沢弓彦に『解剖』された。
中学卒業とともに「金門商会」に丁稚奉公をした九朗は、社長の死後
その財産を横領し、小学校の時の怨みをはらそうとしていた・・・
- 獣の償い
「週刊サンケイ」昭和46年10、11月
服部グループの一員となった竹田伸二は、仲間とともに夕闇が迫る
河川敷で一人の女を強姦した。
正確には、仲間三人が強姦する間見張りをやって、自分は加わらなかった。
彼の良心が、許さなかったのだ。
彼は、逃げる途中、グループから離れ、女の元へと戻ってきていた・・・
- 褥の病巣
「小説現代」昭和48年11月号
約一年前に結婚した島崎郁夫と美沢靖子は、お互い仕事を続け、東京と
大阪とで別居生活を続けていた。
会うのは週に一度、中間の浜松でであった。
そんなある週の会う約束の日、靖子は約束の時刻にあらわれなかった。
その後警察から、彼女が事故で亡くなったと連絡がきた・・・
- 枕に足音が聞こえる
「オール読物」昭和48年12月号
東北の山間の黒浜という村には、木橋が架かっていた。
耐用年数はとっくに過ぎ、今にも崩れ落ちそうであった。
村には必須の橋であったが、財政難から、なかなかかけかえられることは
なかった。
そこで村の松山と若林という二人が共謀して橋を爆破し、新しい橋を
かけることになった。
ただし、その爆破の際に、田口という男が巻き込まれて死んでいた・・・
- 途中下車
「週刊朝日」昭和49年4月
商売に失敗し、死ぬ場所を探していた佐貫和夫の元へ、同窓会の
案内のハガキが届いた。
彼は、死に場所を探しに故郷へ戻るのも悪くないと思い、
出席することにした・・・
- 共犯の瞳
「週刊小説」昭和49年5月
卒業後15年ぶりに小学校の同窓会の案内が届いた。
明るく美人だった元担任の三杉先生には会いたかったが、ある一つの
事件のことから、行くのをしばらく躊躇った。
そう、あれは・・・
- 青の魔性
「小説現代」昭和49年7月号
小学校教師であった私は、ある少女に取り憑かれてしまった。
控えめな少女で、成績も運動神経も中ぐらい。
特に目立つことはなかったが、友人がほとんどおらず、いつも自分一人の
世界に閉じこもっているようなところのある子供であった。
彼女の名前は反町恭子。
私は彼女のクラスの担任をしていたが・・・
- 禁じられた墓標
「小説現代」昭和49年10月号
「猫婆」と呼ばれていた金貸の老婆が殺害された。
犯人は、現金のみ数千万円を持ち去ったようである。
初めは、すぐに解決するだろうと思われていたが、思惑に反して
迷宮入りの事件になってしまった。
その犯人は、畦見三郎という男であった・・・
- 鉄筋の猿類
「オール読物」昭和49年10月号
都下T市郊外にある中規模の団地「朝日が丘団地」の106号棟の裏の
桑畑で、一人の女性が乱暴された。
妊娠していた彼女は流産し、病気をうつされたショックで自殺してしまった。
彼女の婚約者の男は団地の住人に、同じ苦しみを与えようと、
女性を強姦していく計画を立て、実行にうつした・・・
異型の白昼
角川文庫 (1978.8.30)
父親から譲り受けたコルト45口径M1911A1を託し、自分の夫の殺害を
恋人の宮沢直人に頼んだ忘木瑛子。
ところが、ちょっとした不注意から、宮沢は拳銃を失ってしまった。
ところが、拳銃なしで彼女の夫は死んでしまった。
一方、拳銃を拾った佐良五助は、気に入らない妻を殺害しようとする。
ところが彼は、彼女を殺すかわりに、別の女を殺してしまった。
このように、譲り受けた人の中に潜む殺人願望を、コルトは一度も発射
されることなく実現されていく。
しかし、そのツケは確実に戻ってくるのであった・・・
致死眷属
角川文庫 (1985.11.10)・・・ 講談社(1979.4)
両親に先立たれ、親戚の家でも肩身の狭い思いをしながら育った永瀬雅美と広美姉妹。
ようやく二人とも自立して生活できるようになったすぐ後、広美が、仕事関係で
出会った平沢という男の元へ出て行ってしまった。彼は妻子のある男性である。
喧嘩別れしたため、しばらく二人は連絡を断っていたが、そのうち広美から
何の連絡もないのを心配になった雅美は、広美が一月程前に旅行に出かけたまま
戻って来ていないことを知る。
決心して平沢の職場へ訪ねて行くが・・・
悪の戴冠式
角川文庫 (1986.6.10)・・・ カドカワノベルズ(1983.11)
中小企業の一つであるササキ商会に勤める細川澄枝は、社員のボーナスを
銀行から持って帰って来る途中、タクシーの中に風呂敷を置き忘れた。
その次の日、問題のタクシー運転手が、何者かに殺害されているのが見つかった。
二年後、交通事故が起きた。三台が間隔を開けずに走行中、一台目が急停車し、
それに気付いた二台目は止まったが、三台目が二台目に突っこんだ。
二台目の運転をしていた新村明は、鞭打ちで意識不明となり、その後
意識は回復したが、記憶障害が残った。
両事件の保険金支払いの為の調査をした査定員の千野順一は、保険金詐欺の
においを嗅ぎつけ、保険金が支払われてしまった後も、調査を続行した・・・
太陽黒点
角川文庫 (1988.11.30)・・・講談社文庫 (1984.4.15)
浅見隆司は高校時代、先輩の江木啓介に虐げられ、そして今、妻の美和子を
奪われた。しかも彼は、父親が店を騙し取られた八幡商事に勤めているという。
浅見は、妻と離婚し、勤めていた会社を止めて、江木と八幡商事に復讐
すること、、、せめて一矢をむくいることを誓った・・・
死媒蝶
角川文庫 (1987.1.25)
農業に夢を託し、新たな農村を作り上げようと頑張ったが、機械化その他の
波に押されて、とうとう出稼ぎをするようになった大槻敏明。
妻の真佐子は、敏明の母と五歳になる子供と一緒に田舎で待つ生活をしていた。
ところがその年、昨年末にもらった手紙を最後に、敏明からの連絡が
断っているため、自分も東京へ出て、敏明を探しながら働くと言いに、
妹の左紀子に言いにきた。
義母と子供の当座の生活資金、及び東京への旅費を借りにきたのだ。
もう一家心中寸前の状態まで追い込まれているという。。。
ところが真佐子が東京へ出て約一カ月後、彼女は大学教授の波多野精二と
心中したという。良く聞いてみると、偽装心中の疑いがあるという事であった。
左紀子は、姉の死亡の真相を探るために、同じく東京へ出てきた。
その心中があった同じ日、親子喧嘩から誤って父親を突き落してしまったという
119番通報があったという。ところが、10階の窓から突き落したはずの父親の
身体が、どこを探しても見つからないという・・・
通勤快速殺人事件
角川文庫 (1975.5.30)・・・週刊サンケイ (1971)
- 通勤快速殺人事件
北沢恵美子は、ある一流企業社員と結婚した。
文句のない人であった。ある時、何か気になる白い目をする事以外は。
ところがそのうちに、彼女は彼に対して、痴漢ではないかとの疑いを
持つようになった・・・
- 魔性ホテル
ホテルのフロントで働く村瀬幹男は、大学のクラスメイトであった大橋に
出会った。かつて彼もホテルへの就職を希望していたが、ダメだったのだ。
ところが今、彼は一流商社でエリートとなっていた。
特にその後、彼はマスコミに出演するようになってきた。
そして、村瀬の恋人と思っていた中原美智子を奪っていった・・・
- 団地殺人事件
エゴ丸出しの住人である谷岡洋子が、マンションの部屋で殺害された。
発見者は、出張から帰ってきた夫。
昼間にマンションから逃げるように出ていったセールスマン風の男が
目撃されていたが・・・
- 愛社精神殺人事件
モーレツ社員として知られていた石村課長は、病気のため長期療養を
余儀なくされた。その見舞いにやってくるのは、日頃気の合わない
マイホーム族の城所課長代理であった。彼は、妻よりも良く来た。
ところが、彼の課長職に別の社員が移ってきた。
それを推薦したのが、彼を常に取り立ててくれていた羽田部長であった。
この時ほど会社の冷たさを味わったことはなかった。
その後、城所課長代理から、彼の妻が羽田部長と男女の仲になっている
という事を聞いてしまった。
そして、彼は病院を抜け出し、羽田部長を殺害した。
ところが、その裏には・・・
- 醜い高峰
北アルプスのT岳への登山口にあるロープウェーは、冬の間、よく
停止することがあった。
先程まで雲一つない青天だったのに、急に吹雪くということがあった
からである。
そんな風にして、男性五人がロープウェーの頂上駅に取り残された。
二人は、登山のために重装備をしていたが、残り三人は、ちょっとした
観光に出かけるような軽装であった・・・
野性の証明
角川文庫 (1978.3.5)
岩手県下閉伊郡柿の木村の風道という集落の住人全員が殺害された。
正確には、一人だけ八歳の女の子が数日後に隣の村で発見され、一人の
ハイキング登山者が巻き添えを食った。
女の子は、両親を失ったショックで記憶喪失を起こしており、数日間は
青い服の男の人と一緒だったと証言した・・・
腐蝕の構造
角川文庫 (1974.5.20)
九月、一般登山者の影が少なくなった北アルプスの北端付近に位置する
後立山連峰を、高校時代の親友、雨村と土器屋は縦走していた。
その時、ベテランなら間違えることは絶対にないが、素人なら迷い込んで
しまう可能性のある分岐点の案内板に、土器屋がいたずらをした。
昨夜、予期せず山小屋で出会ったアベックに振られた腹いせに、
彼らが後から付いてきているのを知りつつ、細工したのだ。
途中、雨村は土器屋のいたずらに気付いたが、だいぶ道を進んだ後だったし、
土器屋の「間違うはずない」という言葉につられて、引き返してみることはなかった。
そして彼らが次の小屋に着いた直後から、山の天候は一転して悪化した。
そして、アベックたちはその晩、小屋にはやって来なかった・・・
青春の神話
光文社文庫 (1985.9.15)
甲賀忍者団五十三家の筆頭にあたる望月兵右衛門を祖とする望月家。
その末裔である望月小平太は、江戸大平の世の中にはさほど要求はなく、
ほそぼそと自分の技を磨いていた。
しかし本当のところは退屈し、何とか江戸へ出てやろうと考えていた。
幼なじみのこまきも同じように考えていることを知り、ある台風の夜、
こまきと共に一族から離れることを実行に移した。
その時、二人は竜巻に巻き込まれ、小平太は現在へとやってきた・・・
殺意を飼う女
ケイブンシャ文庫 (1996.2.15)・・・天山出版 (1991.5)・・・(1973)
- 殺人環状線
婚約が決まり、二年前にレイプされて以来続いている
小杉伸二との関係を清算しようとした三谷葉子。
彼を殺害した後の帰り道で、交通事故にあってしまった・・・
- ステレオ殺人事件
隣人の片野郁子は、いくら抗議しても朝から晩まで大音量で音楽番組を
聞き続けるため、吉崎勢津子は片野郁子を憎んでいた。
そんなある日、吉崎勢津子はふとした出来心からハンドバックを
万引してしまった・・・
- 孤独の密葬
三十八歳の女性翻訳者である私は、移り住んできたアパートの
元の住人に関心を持つようになっていった。
きっかけは、遅れて届いた一通の手紙である・・・
- 残酷な視界
大手デパートの電話交換手である志賀邦枝は、ボーナスをはたいて
購入した倍率の高い双眼鏡で、自分の住んでいる高台のアパートから
いろいろ眺めるのが趣味であった。
そんなある日、彼女は列車のホームから一人の男が泥酔した別の男を
突き落すのを目撃した。落ちた男は、入ってきた急行列車にひかれて
亡くなってしまった・・・
- 飼い主のない孤独
三十二歳の独身OLである私は、気に入っている三階建てのアパートの
一室を借りて住んでいる。
その向かい側に、九階建の新しいアパートが建った。
といっても、日照の問題等は全くなく、自分の今の状況に非常に
満足していた・・・
- 情熱の断罪
新宿東口にあるマンモスバー『ロメオ』のバーテンダーの西谷利雄は、
ある女が初めて店にやって来たときから気になってしかたがなかった・・・
凶学の巣
新潮文庫 (1984.1.15)・・・ 新潮社(1979.9)
- 凶学の巣
東京S区にある開陽中学校では、校内暴力が大問題になっていた。
暴力団とも繋がりがあると見られる牛山修二が先頭となり、
その暴力行為はどんどんエスカレートしていた。
三年の学年主任をしている樹木彪は、ある日同僚の室谷美佐子が
牛山らにレイプされそうになるのを助けたが、これが表沙汰となり、
牛山は警察に捕まり、少年鑑別所に収容されることになった。
ところがその牛山が逃げ出したと言う。
丁度その頃、牛山のガールフレンドであった舟木エリが殺害された・・・
- 官僚は落日を見て
運輸省のノンキャリア官僚である中里秀樹は、本当にこのまま
官僚を続けて良いのか迷っていた。
このままでは、人生で何一つなし得ないまま退職することに
なるのではないかと・・・
夜行列車
講談社文庫 (1995.12.15)・・・講談社ノベルズ (1994.12)
中瀬正治は、妻に死なれて以来、娘の恵子と二人暮らしである。
恵子ももう短大を卒業し、外資系の銀行に勤め始めて2年になるが、
正治の心配の種は尽きない。
ボーイフレンドか職場の仲間と一緒であれば良いのであるが、
一人であちこちに旅行に行くのが趣味なのである。
そしてその心配が現実になってしまった。
新宿から夜行列車に乗ったまま、戻って来なかったのだ・・・
松平教授の仲人のもと、医者の娘である美矢子と結婚した北里光行は、
初めの頃こそエリートコースに乗ったと思って満足していたが、
そのうちに美矢子が化けの皮を脱いで教授の子供を身ごもるに至って、
退職と離婚を申し出てしばらく休みを取ることにした。
そして信州へと向かう夜行列車で隣合わせたのが、
娘を探しに通う中瀬正治であった・・・
鉄筋の畜舎
講談社文庫 (1975.2.15)・・・「週刊現代」 (1972)
業界新聞の社長、直川雅之の、今年4歳になる息子が、お手伝いの大島信枝と
一緒に早朝出掛けたところを、暴走してきた車にはねられ死亡した。
車は一旦停止したが、そのまま走り去った。
その車は、デパート『赤看板』の社長、保科商平の子供達が街中でレースを
していたものであった。
事故から逃げ戻ってきた子供達にあった保科商平は、自分の保身の事を考え、
同じく息子達に引きずられて乗っていた自分の運転手、竹場正吉に
肩代りするように頼み込んだ。
そしてその正吉が、服役中に獄死した・・・
捜査線上のアリア
講談社文庫 (1987.7.15)・・・講談社 (1985.4)
銀行員であった津村豊和は、その内部を書いた小説で新人賞をとり、
たちまちにマスコミにもてはやされるようになった。
そこで銀行を止め、小説家として生計を立てようと考え、脱サラした。
ところがそんな期間は長くは続かず、たちまち編集者からも冷たく
扱われるようになってしまった。
そんな津村が再びマスコミの注目を浴びることになったのは、ホテルで
殺人事件に巻き込まれるという事件であった・・・
新幹線殺人事件
光文社文庫 (1988.10.20)・・・カッパ・ノベルズ (1970.8)
昭和44年10月14日火曜日午後七時五十分頃、まもなく終点の東京駅に
到着しようとしていた新幹線ひかり66号のグリーン車の中で、
男性の死体が発見された。
まだ殺されてからそれほど時間は経っていなかったが、東京駅到着直前で
あったため、目撃者はほとんどかかわり合いになるのを恐れて名乗りでなかった。
殺されていたのは、二大芸能プロダクションの一つ、新星プロの事務局長、
山口友彦であった・・・
凄愴圏
中公文庫 (1998.5.3)・・・角川書店 (1990.6)
何事にも関心が持てなく、ただ漠然と浪人生活を過ごしていた三崎渉は、
ある日公園で、近くの女子大のコーラス部がまわりの人々を誘い込んで
合唱しているのに出くわした。
そして三崎も、コーラス部のリーダー、前橋香保里から誘われて、一緒になった。
そしてある日、いつも一緒にいた不良グループのリーダーの上原が、彼女を
レイプしようと計画していることを知った。
それを止めさせるには、その前に彼女を誘拐してしまわなければならない...
思い詰めた三崎は、実際に誘拐を計画し、実行した・・・
花刑
講談社文庫 (1989.5.15)・・・講談社 (1985.6)
- 完全犯罪の鏡像
『小説宝石』1985年2月号
和多田新一は、35年間同じ会社に同じ家から通い続けた。
その精勤賞を受け、退職間近になった頃、通勤電車の中に気になる人を
見つけた。
そのOLらしき人物は、新一の乗っている電車に途中から乗り込み、
乗り込んでしばらくしていつも、白いハンカチを振るのであった・・・
- 凶隣の巣
『オール讀物』1984年12月号
通称「落下傘岬」という断崖中腹の松の木にひっかかっていた
少年の死体が発見された。
さらに次の日、埠頭の西突堤から海に転落した車の中から、
少年の死体が発見された。
これらの被害者は、日ごろよく一緒に行動していた悪仲間であったため、
二つの事件の間の関連を中心にして捜査が開始された・・・
- 死媒祭
『小説現代』1983年10月号
S県A市の夏祭り「こがし祭り」で、若者が群衆にビールや花火を投げ込む
という混乱にじょうじて、一人の男性の死体が放置された・・・
- 花刑
『小説現代』1983年7月号
町の金貸の老婆、後藤松は、厳しい督促で知られていた。
その老婆が、何者かに殺された・・・
暗黒流砂
講談社文庫 (1996.3.15)・・・祥伝社ノン・ポシェット (1992.4)・・・祥伝社 (1973)
部下のしでかした不祥事の責任を問われ、長年勤めてきた国土庁の業務部
第二管財課長を止めさせられた梅原直人。
そして、黒幕の罠にはまり、警視庁捜査二課を首になった中津和男。
さらに二人は、その後、共に殺人の罪を被せられようとした。
それは何とか逃れたが、このままだとさらに罪を被せられそうな気配を感じ、
中津は独自に黒幕を暴こうと動きだした・・・
伝説のない星座
光文社文庫 (1989.12.20)・・・カッパ・ノベルズ (1985.7)
兄弟はなく、父は13年前に失踪し、母親も亡くした笛木慎二は、
現在「七里運輸」でトラックの運転手をしている。
一人暮らしにも飽きてしまった彼は、ある日偶然見かけたデートクラブ
「モナリザ」に飛び込んだ。
そこで相手をしてくれた梢と待ち合わせ、翌日、海へ行くことになった。
そして楽しいときを過ごし、再会を約束して分かれた。
だが、後日、聞いていた番号に電話をかけるが、誰も出ない。
どうしてもあきらめきれずに店に行ってみると、無断で休んでいるという。
さらに一週間、電話をかけ続けたところ、妹の菊本渚が出た。
彼女によると、梢は10日ほど前から行方不明なのだという・・・
ホームアウェイ
講談社文庫 (1996.10.15)
狭苦しい都会のアパートから、念願のマイホームを手に入れて
郊外の団地に入居してきた鶴川家の人々。
5LDKの間取りだと、夫婦と子供二人、それぞれが私室を持ったとしても
お釣がくる。
さらに、まわりは自然に囲まれ、何もかもがうまくいく・・・はずであった。
ところが、転居してきてしばらくすると、だんだんと問題が持ちあがってきた。
まず、人が増えない。そして今いるのも老人ばかり。
スーパー開店の話もなくなり、診療所や派出所の話も立ち消えになった。
ゴミの回収もままならなくなり・・・
殺人の花客
講談社文庫 (1996.5.15)・・・講談社ノベルズ (1995.4)
新宿区西新宿の超高層のメトロポリタンホテル。
初めてあった瞬間に恋に落ちた二人、別れ話がもつれている二人、
若い娘を相手に遊ぶ初老の地方名士、そして部屋を渡り歩く空巣狙い。
様々な人々が交差するこのホテルの中で、9/20の午前零時過ぎに
男性客が殺害されているのが発見された・・・
- ルームサービスされた殺人
- 受粉した現場
- 秋色の流産
- 猫の急訴
- 奇妙なマーク
- 相殺された動機
- 切り離された関連
- 媒介された容疑
- 実感のない要素
- 表裏一体のアリバイ
- 一期一会のツアー
- 移動証拠
- 生き残った罠
- 喪失した雨
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