折原一
1951年、埼玉県生まれ。早稲田大学卒業。
倒錯の死角
30代後半の独身翻訳家の大沢芳男は、古い家に伯母のヨシとともに住んでいた。
2階が自分の部屋であり、仕事場であった。
その2階の窓からは、向かいのアパート、メゾン・サンライズの2階の
部屋がよく見える。
実は大沢は、覗きの趣味を持っていた。
2階の上の屋根裏部屋からは、さらによくアパートの部屋が覗けるのだ。
しかも外からは、屋根裏に部屋などあるとは見えないので、気付かれることもない。
この春から向かいの201号室には、清水真弓という若い女性が
暮らし始めていた。
彼女は母子家庭に育ったが、地元の大学を卒業した後、新潟から東京へ
出てきたのであった。
芳男は、いつものように彼女の部屋を覗き見していた。
ところがある日の早朝、悲鳴のようなものに目を覚ました芳男は、
その悲鳴が向かいの201号室あたりから聞こえて来た気がして気になり、
屋根裏部屋へと登った。
そこで見たものは、首にパンティストッキングが巻きついている
青白く生気が感じられない顔だった。
覗きを知られるわけにはいかないため、警察に届けることも出来ずに
してしまった芳男は、その後酒に溺れるようになり、アルコール中毒で
入院する破目に陥ってしまった。
そして三カ月後、やっと退院してきた芳男は・・・
ファンレター
講談社 (1996.1.20)
覆面作家、西村香の元には、ファンから、あるいは編集者から
様々なレターやファックスが届きます。
- 覆面作家
松本市の隣町の公民館に勤務している大瀬ななみと申します。
サイン本を送って頂けないでしょうか?
- 講演会の秘密
埼玉県の北東部にある杉戸町立図書館に勤務する司書の井上茂と申します。
是非とも、講演会に出席して頂けないでしょうか?
- ファンレター
同じマンションの401号室に住む西林薫と申します。
実は、先生のファンで、誤配達されてきた迷惑メールの相手を
していたのですが、大変なことになってしまいました。
助けて頂けませんでしょうか?
- 傾いた密室
千葉県房総半島の中央部に住む、星野みさきと申します。
是非とも、父、星野一郎の死に絡む密室の謎を解いて頂けませんでしょうか?
- 二重誘拐
編集部の堀口君、助けてくれ。
実は、那須高原付近の山道で、事故にあってしまった。
偶然、山荘の主の小笠原美香という女性に助けられたのだが、
その女性の出てくる小説を書いてくれと言われて困っているんだ。。。
- その男、凶暴につき
鬼ノ首観光ホテルは、十周年を迎えることになりました。
そこで是非、こちらのホテルを取材して頂き、ルポ記事を書いて
頂けませんでしょうか?
- 消失
「小説マガジン」は、二十周年記念特大号にて、ミステリー特集を
予定しております。
つきましては、是非西村先生に執筆して頂きたく思っております。
- 受賞式の夜
第一回日本ミステリ大賞長編部門の侯補作として、
貴下の『覆面作家が多すぎる』が選出されましたので、
ご承諾下さいますようお願い申し上げます。
- 時の記憶
実は、ぼく、記憶を失ったのです。ぼくが誰なのか、調べてもらえますか?
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