筒井康隆
1934年、大阪生まれ。同志社大学文学部卒。
デザイン会社勤務、デザイン工房経営。
家族八景
新潮文庫 (1975.2.27)・・・新潮社 (1972.2)
人の心を読むことの出来る火田七瀬は、お手伝いさんとしてあちこちの家に
居候する。
- 無風地帯
尾形家は、夫国久、妻咲子、娘叡子、息子潤一の4人家族。
そこへ七瀬はお手伝いさんとしてやって来た。
潤一と国久は、同じ女節子を抱いている。
潤一はそれを知っているが、国久はそれを知らない...
そんなこの家族は、表面上仲良く振舞うことで成り立っているのだった。
その一番の要は、妻咲子・・・
- 澱の呪縛
大きな履物店の神波家は、夫浩一郎、妻兼子、長男慎一、次男明夫、
長女道子、三男良三、四男敬介、・・・、綾子、・・・、悦子、
陽子の13人家族。全員の名前が出ていない (汗)
兼子は楽天的かつおおらかな性格。
そのため、家の中は清潔感がなく、異臭が漂っていたのだった。
お手伝いとしてやってきた七瀬は、家族のみんなにそれを
自覚させてしまった。。。
- 青春讃歌
主人寿郎と主婦陽子の河原家。
ある日陽子は、気に入るデザインの服が見つからず、ボーイフレンドに
約束を破られ、帰り道で接触事故を起こしてしまった。。。
- 水蜜桃
主人勝美、妻照子、長男竜一、その嫁綾子、子供の彰、次男忠二の
5人家族の桐生家。
勝美は退職後、することもなく過ごしていた。
彼の精神状態に興味を持った七海は・・・
- 紅蓮菩薩
主人新三と妻菊子、彼らの赤ん坊の3人家族の根岸家。
新三は、私立大学の心理学の助教授で、教え子に手を出していた。
菊子は良妻ぶりを近所にうまく宣伝し、夫の浮気には気がついていたが、
知らないふりを続けていた。
ある日新三は、七瀬の父親が、かつてESPカードのテストで
抜群の成績を納めていたことを思い出した。。。
- 芝生は緑
医者の主人輝夫、妻直子の高木家。隣には、建築設計とデザインを
している夫省吾、妻季子の市川家が住んでいた。
輝夫と季子、省吾と直子は、互いに好感を持っていた。
七瀬は、このスワップを実現しようと考え・・・
- 日曜画家
夫天洲、妻登志、彼らの子供克己の3人家族の竹村家。
天洲は商事会社の経理課長であったが、日曜日には絵を描いていた。
彼の父親は、有名な日本画家だったのだ。
七瀬は、天洲の心の中を覗きこみ、その抽象的な映像に驚くと共に
興味を持っていった・・・
- 亡母渇仰
主人信太郎、妻幸江、そして昨日亡くなった信太郎の母親恒子の
3人家族の清水家。
七瀬は、病気の恒子の身のまわりの世話をするために雇われていた。
信太郎はひどいマザーコンプレックス。
母親が死んだ後も、泣き続けていた。
葬式が済んで、いよいよ火葬場でかまどに火を入れるとき・・・
七瀬ふたたび
新潮文庫 (1978.12.20)・・・新潮社 (1975.5)
住み込みのお手伝いさんを止めた七瀬は、街に出て、いろいろな超能力者と出会う。
- 邂逅
深夜の列車内。崖くずれの悪夢を見た。
いや、実はそれは夢ではなく、予知能力者の心の中であった。
そう、ここで七瀬は、予知能力者岩淵恒夫と、自分と同じく
精神感応能力者であるノリオとに出会うのであった。
- 邪悪の視線
七瀬は、少しお金を貯めるために高級バー「ゼウス」で働いていた。
そこでのお客の西尾は、邪悪な心を持つ透視能力者であった。
また、店にはヘンリーという念動力能力者がバーテンとして勤めていた。
西尾は七瀬に襲いかかろうとして・・・
- 七瀬 時をのぼる
七瀬は、ノリオとヘンリーと共に、北海道へ渡るフェリーに乗っていた。
そこで、一人の男性が連れの女性を突き落してしまおうとする現場に
出会った。
ノリオの懇願を聞き入れて女性を助けた七瀬とヘンリーは、助ける現場を
刑事の男に目撃されてしまった。
それを救ったのは、一緒に乗り合わせた時間旅行者漁藤子であった。。。
- ヘニーデ姫
マカオのカジノで軍資金を稼いだ七瀬は、帰りの飛行機に乗っていた。
隣には、偶然マカオで友達になったヘニーデ姫と共に。
東京国際空港到着後、少し前から気になっていた殺意を感じた。
そして、ヘニーデ姫が狙われた。
意識を消し、能力者を狙う集団の存在に気付き、七瀬を殺そうと
していることも分かってきた。
そこへ電話をかけてきた予知能力者岩淵恒夫。
彼の言うことには、ヘニーデ姫と共に行動する限り、七瀬自身は
生命を落すことはないと言う・・・
- 七瀬 森を走る
北海道の湖の湖畔の隠れ家に身を隠した七瀬、ノリオ、そしてヘンリー。
そのすぐそばに、恒夫も現れる。彼の役割は・・・
そして七瀬らのもとには、藤子が遊びにくる予定であった。
謎の超能力者抹殺集団と戦う彼らは・・・
時をかける少女
角川文庫 (1976.2.28)
- 時をかける少女
芳山和子は、同級生の深町一夫、朝倉吾朗とともに理科教室のそうじをし、
一人でごみ捨てを終えて理科教室に戻って来た。
そこで隣りの理科実験室に人の気配を感じ、確かめようとした・・・
- 悪夢の真相
昌子は、般若の面が恐く、高所恐怖症でもあった。
友人の森本文一は、クモが大嫌いである。
そして、昌子の弟の芳夫は、トイレにハサミを持った女がいると信じて
夜中にトイレに行けず、おねしょを繰りかえしていた・・・
- 果てしなき多元宇宙
級友の糸川史朗と共に下校中だった暢子は、途中で近所の別の高校の
学生三人と出会ってからかわれた。
史朗は彼らのことを知らないようで、喧嘩などせずに黙ってなぐられる
ままになっていた・・・
日本列島七曲り
角川文庫 (1977.6.30)
- 誘拐横丁
電気屋の新田さんの息子興一(2)が、建財店の最上さんの所に誘拐された。
いや、誘拐というよりも子どもを盾にとって18万円を要求してきた。
裏の畑でタバコを栽培しているのをネタにして。
そこで新田は、内科医院の杉村さんの娘圭子(4)を誘拐することにした。
彼の家の裏の畑には、大麻が栽培されている事を知っているから。。。
杉村さんは、屑屋の金さんの奥さんを誘拐することに。。。
金さんは、12万円しか手もとにないという。杉村さんは今4万円。
新田さんは1万円。合計17万円それでなんとか我慢してもらうよう
みんなで最上さん家へ頼みに行くことに・・・
全く、一体何を考えているんだか...
- 融合家族
ちょっとした行き違いで、土地を共有してしまった二家族。
そこに早いもの勝ちで建てた家は、二軒が見事なまでに完全に融合した
ものであった。
そこに暮らす我々夫婦と岡部夫婦は、互いに相手を完全に無視することで
うまくやっていた。
それが、、、家族同士も完全に融合してしまうことになるのであった...
- 陰脳録
ぼくは、かぞくでさいごにおふろにはいります。
からだをあらい、おゆに入ってあたたまり、おゆのせんをぬきます。
そのぬいたせんのうえにおしりのあなをあてるのです。
このきもちいいことはやめられません。
あるひ、きんのたまの、ふたつ入っているふくろが・・・
うーむ、、、ほとんど平仮名ばっかりで読みにくいし、、、
ばかばかしい話。。。
- 奇ッ怪陋劣潜望鏡
結婚したばかりの遅今五郎と新妻治子。
新婚二日目の朝、海辺を歩いていたら、潜望鏡が、、、
しかも数がどんどんと増えていく。。。
日が経つ毎に、潜望鏡の数はどんどんと増えてゆき、、、
これは、真面目な若い夫婦のかかる、精神病だった。。。
- 郵性省
美人のガールフレンドしのぶちゃんを思い浮かべながら
マスターベーションにふけっていた益夫。
恍惚状態に達した瞬間、しのぶちゃんの家へトランスポートしていた。
大心地博士はこれを、オナポート能力と名付けた。
この能力は、様々な弊害をもたらしながら、世間に広まってゆき・・・
- 日本列島七曲り
東京から大阪へ向かう飛行機がハイジャックされた。
犯人は革命的赤軍派。最近赤軍から分派独立した最も過激派の学生。
北朝鮮の平壌へ向かうという。
ところが、乗客乗員ともに大喜びの様子。
大阪で降りたい人は降りて良いと言われたものの、誰も降りなかった。
ところが、平壌では機内から出ることは許されなかった。
飛行機は、食料と燃料を補給してまた飛び立った・・・
- 桃太郎輪廻
その日、婆さんが川で洗濯をしていると、川上から、大きな尻が
流れてきた。
婆さんはそれを持って帰り、育てた。
生まれてきたのは桃太郎。。。
以下、カチカチ山、猿蟹合戦、眠りの森の姫、白雪姫、浦島太郎等の
パロディーをまじえた後、元に戻ってくるという輪廻を描いたお話。
- わが名はイサミ
江戸幕府から、若年寄の地位を得て、東上してくる官軍を食い止める
命を受けた近藤勇。
甲府城を与えられたものの、そこへたどり着く前に官軍に乗り込まれ、
与瀬に留まっているうちに、東上してきた官軍が通過して東へと
通りすぎて行ってしまった。。。その途中を描いたお話。
- 公害浦島覗機関(たいむすりっぷのぞきのからくり)
紫苑ホテルの営繕係長のおれは、ホテルの平面図を眺めていて、
開かずの間のあることに気がついた。
そこに入り込んだおれは、左右の部屋を覗き見する。
ところが、覗くたび毎に、時間がどんどん経過していっているようである。
そしてその覗いた片方の部屋では恐ろしい話し合いが・・・
恐ろしくなって出てきたおれは、鏡に映った自分をみて、
歳をとっていない事に安心した。。。ところがその瞬間・・・
- ふたりの秘書
若松金融株式会社の社長であるおれには、藤川泰子と永田智子という
2人の秘書がいる。あとはチョロ子というロボット秘書。
これが全ての社員である。
社員を増やすと、労働組合ができ、そのうちに社長は追い出される・・・
これがおれの会社の哲学だ。だから、人は増やさない。
ところが、若い秘書2人が一日中同じ部屋にいると、いろいろ
問題も発生する。そう、心の問題。
そして、ついに・・・
- テレビ譫妄症
テレビ評論家の達三は、ある日テレビを見ているうちに、
下半身の感覚が全くなくなってしまった。
しびれたのかと思っていたが、テレビ癲癇だと診断された。
そんなものあるのか...と思っていたある日、とうとう精神が
まいってしまったようだ。
そう、テレビ譫妄症にかかってしまった・・・
富豪刑事
新潮文庫 (1984.1.10)・・・新潮社 (1978.5)
赤いキャデラックを乗り回し、一本八千円以上するハバナから取り寄せた
葉巻を惜しげもなく吸う富豪刑事の神戸大助。
彼の父親の喜久右衛門は、若い頃からさんざん悪いことをして金を儲けてきたが、
心の平和には全く繋がらず、我が子が刑事として正義のために使うなら
いくらでも金を出すという老人であった。
そして神戸大助は、富豪ゆえの奇抜な方法で、様々な事件を解決していく・・・
- 富豪刑事の囮
五億円強奪事件の時効まであと三カ月。
新たに特別捜査本部のキャップ福山警視をチームに加え、最後の攻めに
入ろうとしていた。
容疑者は四人にまで絞られている。
富豪刑事は、どうやって本当の犯人を特定するのか・・・
- 密室の富豪刑事
宮本鋳造株式会社社長の宮本法男が、会社の社長室で焼死した。
最も怪しいのは、直前まで訪問客としてやってきていたライバル会社社長の
江草竜雄である。
しかし、宮本社長が焼死した部屋は、密室であった。
富豪刑事は、どうやって犯行を認めさせ、密室の謎を解くのか・・・
- 富豪刑事のスティング
高森建設金属社長の高森陽一氏の一人息子で小学一年生の映一君が誘拐された。
犯人は五百万円を要求し、既にその金は奪われ、さらに五百万円の要求が来た。
富豪刑事は、どうやって犯人を逮捕するのか・・・
- ホテルの富豪刑事
関西の暴力団鎌口組系福本組と、関東の暴力団谷川組系水野組の双方が、
比較的おだやかだったこの市にやってきて、何かの談合を始めるらしい
という情報が入った。
富豪刑事は、一般人を巻き込まず、穏便に集会を終わらせるために、
どういう手段を使うのか・・・
エディプスの恋人
新潮文庫 (1981.9.25)・・・新潮社 (1977.10)
私立高校教務課の職員である七瀬は、高校二年の香川智広の意識が
非常に変わっていることに気付いた。
彼の父親頼央は画家であったが、母親の珠子は、結婚後しばらくして
急に姿を消していた。
珠子が姿を消した後、頼央や智広には神の庇護があるように思われた。
そう、珠子は女神になっていたのだ。。。
フェミニズム殺人事件
集英社 (1989.10.20)
南紀・産浜。
そこに、最大6名までという少数だけ宿泊することの出来る格式の高い
産浜ホテルがあった。
小説家の石坂は、大事業家の松井会長と対談をした事がきっかけで、
6年前に初めて泊まった。
その時の楽しい思い出を胸に、この夏、たくさん資料を抱え込んで
乗り込んだのだった。
支配人の新谷氏とその妻の早苗さんが出迎えてくれ、その後夕食時に
コック長の加藤さんや他の宿泊客の皆さんと会った。
6年前にも会った、10以上の会社の役員をしている小曾根氏と妻の美代子さん、
大学時代の同期生だった松本、松井会長の会社の開発担当部長の竹内史子さん、
地元の名士であり不動産業者を営む長島氏の面々であった。
一日が過ぎ、少し早苗さんの様子が気になるものの、みなさんとも親しく
なってきた3日目の朝、ホテルの中で殺人事件が発生した・・・
ロートレック荘事件
新潮文庫 (1995.2.1)・・・新潮社 (1980.9)
八歳の時の夏、私はとんでもないことをしてしまった。
いとこの重樹と共に彼の父親の持つ別荘のすべり台で遊んでいる時、
誤って彼を突き落としてしまったのだ。
すぐに病院へ運び込まれたが、脊椎を激しく打ちつけ、それ以降、
彼の下半身の成長は止まってしまった。
それ以降、いつでも私は彼に付き添うようになった。。。
二十年後、我々はロートレック荘と呼ばれるようになったその別荘に
招待されることになった・・・
本には、ロートレックの絵がついている。。。
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