山本文緒
1962年、神奈川県生まれ。
パイナップルの彼方
角川文庫 (1995.12.25)・・・宙出版 (1992.1)
私、鈴木深文と三浦月子は、短大の時からの友人、なつ美の結婚披露宴に
出席していた。三人ともに23歳。
そこで月子は、仕事を止めてハワイの語学学校へ行くと言った。
私は小さな信用金庫に勤め、何もせずともお金がもらえ、自由の手に入る
生活を満喫していた。そう、部下の日比野がやってくるまでは・・・
ブルーもしくはブルー
角川文庫 (1996.5.25)・・・宙出版 (1992.9)
夫の佐々木との関係は冷め、恋人の牧原との関係も終わりにしようとしていた
佐々木蒼子は、牧原との別れの海外旅行の帰り、天候悪化のために成田ではなく
福岡に降ろされたため、そこで一泊することにした。
そして、町をぶらついていた時に、自分とそっくりの女性を見かけた。
その隣りには、佐々木との結婚を決めるときに、最後まで迷った河見がいた。
彼女に会って話をしてみると、小さい時の環境から名前から生き方まで、
まるで自分と瓜二つの女性であった。。。結婚相手が違ったことを除いて。
その後、佐々木蒼子と河見蒼子とは、一カ月だけ入れ換わって生活してみる
ことにした・・・
きっと君は泣く
角川文庫 (1997.7.25)・・・光文社カッパノベルズ (1993.7)
桐島椿は、名前を祖母につけてもらうなど、特に15歳以降、祖母に
大きな影響を受けて育った。
現在、派遣会社でコンパニオンをして働いている。
自分の能力は、美しさしかないのだ。
その美しさを最大限に生かして、良い生活を送っていたが、
尊敬していた祖母が入院してぼけ始め、父親がB型肝炎で入院し、
何かが狂いだした・・・
眠れるラプンツェル
福武書店 (1995.2.5)
結婚6年目、まだ子供のいない手塚汐美は、毎日、特にすることもなく過ごしていた。
夫は忙しく働くのが好きな人。毎月、生活費として15万円を振り込んでくれる。
そんな暮らしが、楽で良いと思っていた。
そんな彼女と、隣の箕輪さんの息子、そして夫との奇妙な関係が始まった・・・
ブラック・ティー
角川文庫 (1997.12.25)・・・角川書店 (1995.3)
- ブラック・ティー
山手線に、一日最低二周、多くて六周ほどする。それが私の仕事。
OLを止めて、アルバイトも止めて、それ以来ずっと続けている私の仕事は
電車内での置き引き。
ある日女性が、ブラック・ティーというバラの花束を網棚にのせて
立ち去った。あれは明らかに、忘れたのではない。
そして私には、このブラック・ティーに思い出があった・・・
- 百年の恋
僕は、彼女と同棲している。彼女はピアノの先生。
僕は、ミュージシャン崩れのサラリーマン。
そうは言うものの、夢は捨てていない。借金を返済したらサラリーマンなんて
さっさと止めてしまうつもりだ・・・
- 寿
遊ばれては捨てられ、遊ばれては捨てられしている私。
そんな私をいつでも見守ってくれていたのは三本木君。
私たちは婚約をした。でも、まわりの人には秘密だった。
そんな時、ふとお見合いした相手が、東大出の彼。
そして今、彼と共に結婚披露宴に出ている・・・
- ママ・ドント・クライ
子供が親の金を盗んでも、罪にはならないらしい。
でも、親が子供の金を盗んだ場合、どうなるのだろう?
私は、バイトで貯めていたお金を母親に取られた。
母親は、ある芸能人に入れ込んでいるのだ・・・
- 少女趣味
少女漫画を描いて15年。
私は、高校在学中から20代ずっと少女漫画を描いて暮らしてきた。
結婚なんてしないかもと思っていたのだが、急にすることになった。
そしてまだ1年足らず。彼は私に暴力をふるうようになった・・・
- 誘拐犯
僕はネコを誘拐した。
お姉ちゃんの事をいじめている子の可愛がっているネコだ。
ところが、それに間違って腐った食物をやってしまって、
ネコは死んでしまった・・・
- 夏風邪
私は、証券会社に勤める30歳のOL。7年間、恋人がいた。
それは不倫だった。だから、一番の親友にさえも話していない。
でも、私たちは別れることになった・・・
- ニワトリ
レンタルビデオを借りていたことを忘れ、友達にCDやノートを借りた
ことを忘れ、妹にワンピースを借りていたことを忘れ、あちこちから
お金を借りていたことを忘れ、、、私の頭はニワトリなのかもしれない。
そう反省したのに・・・
- 留守番電話
僕は、彼女と付き合っていた。それが突然別れようと言われた。
良く考えてみると、理由はなんとなく分かる。
彼女は竹を割ったような性格。夜中に男性を連れ込んで、一緒にビデオを
見ても、友達だからとアッケラカンと言う。
僕は、それが気に食わなくて、たびたび喧嘩をした・・・
- 水商売
私が、夕食付きというのにつられて始めたバイト先は、ゲイバーだった。
ホステスではなく皿洗いをさせてもらおうと、化粧もせずにぼさぼさの髪で
面接を受けたのが、功を奏したのだ。
私の実家は郷里では大きい方で、家族も親戚もそれなりの所に就職している。
そして彼の実家は旧家だった。
普通の生活をしていたが、子供が生まれた時、事情が変わった。
彼の両親は、子供に乳母を雇い、将来設計まで決めてしまった。
嫌だと夫に訴えたが、聞き入れられず、私は家出をしてきたのだ・・・
群青の夜の羽毛布
幻冬社文庫 (1999.4.25)・・・幻冬社 (1995.11)
駅から遠く離れた山の上の一軒屋に住む母とさとる、みつるの二人の娘。
さとるは対人関係があまりうまくいかない性格で、一家の家事手伝いとして
暮らしている。
山の下にあるスーパーに買い物に出かけ、そこで大学生の恋人鉄男と出会った。
鉄男は、予想出来ないさとるの言動に戸惑いつつも、そこに魅力を感じて
ひかれていく・・・
恋愛中毒
角川書店 (1998.11.25)
水無月美雨は、学生時代に声をかけられた萩原に、初めは関心ないつもりで
いたのが、どんどん気になりだし、ついにはストーカーまがいな行動を
するようにまでなってしまった。
それを見兼ねた萩原の友人の藤谷は、彼女を彼から引き離し、そして結婚した。
初めはうまくいっていた結婚生活が、ある日突然彼の態度が冷たくなった。
水無月はそう感じた。そして藤谷に別の女性がいるような痕跡があった。
水無月は、その女性を対象に嫌がらせを続けた。そして、執行猶予付きの
判決を受けた。
それから、父の知り合いのお弁当屋さんで働いていたが、そこに昔からの
ファンであった創路功二郎がお客としてやってきて、今度一度遊びにおいでと
誘われるようになってきた・・・
ファースト・プライオリティー
幻冬舎 (2002.9.25)
31通りの31歳の女性の持つ最優先事項の話。
- 偏屈
会社では、「偏屈で人嫌い」で通っている私。
- 車
BMWコンパクトに住んでいる私。
- 夫婦
離婚して戻ったら、両親も、そして兄夫婦も幸せそうだった。
- 処女
世間の人達が持っている類型的な女子プロレスラーのイメージの姉と私。
- 嗜好品
それぞれに家族を持つ僕と有希は、年に一度四泊だけアムステルダムの
ホテルで一緒に過ごす。
- 社畜
社内のトイレで、自分が社畜と呼ばれているのを聞いた。妙に納得した。
- うさぎ男
うさぎは淋しいと死んじゃうの、という歌の通り、飼っていたうさぎは
私が外泊した次の朝帰ってみると、死んでしまっていた。
- ゲーム
人間関係はゲームである。ひいては人生そのものもゲームだろう。
- 息子
自分の息子に、いつもうっとりと見とれてしまう私。
- 薬
普段から、頭痛薬、風邪薬、目薬、のど飴、胃薬、下痢止め、乗り物
酔い止め、滋養強壮剤、ビタミン各種、プロポリス、メラトニン等を
常備している私。
- 旅
土曜日に出掛け、一泊して戻ってくる小さな旅を続けている私。
- バンド
バンドでギターをやっている私。
- 庭
母の急逝後、花のあふれる庭を残された私と父。
- 冒険
これまで私は、ほとんど冒険をしたことがなかった。
- 初恋
中学の入学式の日に初恋をした私。
- 燗
離婚を持ち出そうと待っていたところに現われた、彼の父親。
- ジンクス
引っ越しをすると、それまで付き合っていた恋人と別れることになるという
ジンクスを信じている私。
- 禁欲
二十一世紀の初めの年に決めたことは、今年一年間、セックスをしない
ことだった。
- 空
毎日、空を見ていたいだけの私。
- ボランティア
転勤族の主人についていき、新しい土地でバイトの面接に行ったが
不採用となり、ボランティアを始めた私。
- チャンネル権
男って、どうしてみんな野球が好きなのだろう。
- 手紙
山梨県に住み、心療内科通いのバツイチOLの私。
- 安心
心配するのは安心したいから。ほんとの安心なんかどこにもない。
- 更年期
三十一歳で更年期の始まったかもしれない私。
- カラオケ
化粧品販売のテレフォンセンターに勤めている二人の三十一歳の女性。
- お城
これまで特に贅沢することもなく暮らしてきたため、今度はマンションを
現金で買うことにした私。
- 当事者
やっと、自分が自分の人生の当事者になってゆくような予感がした。
- ホスト
まさか、自分がホストクラブにはまるとは思ってもみなかった。
- 銭湯
働くのを止めて一年、特に働こうともせず、銭湯通いを続けている。
- 三十一歳
父は、三回目の結婚をした。三人の女性は全て三十一歳。
- 小説
離婚なんてしようという気は全くなかったのに、自分で離婚届を出す
ことになってしまった私。
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