吉本ばなな
1964年、東京生まれ。日本大学芸術学部文芸科卒業。
キッチン
福武書店 (1988.1.25)
- キッチン
小さい頃に両親が死に、中学に上がる頃には祖父も死んで、以来、
若井みかげはずっと祖母と一緒に暮らしてきた。
その祖母が、先日亡くなり、とうとう一人きりになってしまった。
葬式が済んで3日ほど、ぼぅっとしていたが、夜もゆっくりと寝れなかった。
そんな時、ドアのチャイムが鳴った。
やって来たのは、近所の花屋でアルバイトをしている、同じ大学に通う
田辺雄一であった。
みかげはあまり良く知らなかったが、彼の働く花屋には、祖母がよく
行っていたようだ・・・
- 満月 − キッチン2
雄一の父親であり、事実上の母親であったえり子さんが亡くなった。
えり子さんは、雄一の本当の母親が死んだ後、ゲイバーで働きながら
雄一を育ててきたのだ。
そしてストーカーにつけまわされて、殺されてしまったのだ。
これで雄一も、みかげと同じく天涯孤独になってしまった・・・
- ムーンライト・シャドウ
高校2年の修学旅行の旅行委員として、私と等は出会った。
行きの新幹線だけが同じで、その後の行程は別々だったが、その別れのホームで
何げなく渡した鈴を、大切に受け取って丁寧に扱ってくれたのだ。
それから約4年間、私と彼とは心を通わせ続けた。
そしてある日、突然彼は亡くなった。
等の弟、柊の恋人のゆみこさんを、等が駅まで乗せて行く途中で事故にあって、
二人とも即死してしまったのだ。
以来、私は毎朝事故のあった大きな橋のところまでジョギングをし、
柊はセーラー服姿で出歩くようになったのだ・・・
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