大倉崇裕
1968年11月6日、京都府生まれ。
初期の頃、円谷夏樹名で執筆。
三人目の幽霊
東京創元社 (2001.5.25)
大学を卒業し、憧れの大手出版社に入社した間宮緑は、「季刊落語」の
編集部へと配属された。
と言っても、小さな部所で、緑の他には編集長の牧大路しかいない。
その牧は、人並み外れた洞察力の持ち主で、緑は牧の辿る筋道を、
必死に追いかける日々が続く・・・
- 三人目の幽霊
月島の如月亭で、下戸の鈴の家米治師匠は、「鰍沢」をやっている途中で
誰かに仕込まれた酒を飲んでしまい、高座の途中でひっくり返ってしまった。
次の日、松の家万蔵師匠は、カンニングに使おうとしていた手拭いが
誰かにすり替えられてしまい、途中で続けられなくなって降りてしまった。
さらに松の家葉光師匠の高座の途中に、2人しかでないはずの幽霊が、
3人いたという・・・
- 不機嫌なソムリエ
緑の高校時代からの親友、野島恭子に誘われ、品川シティホテルの
地下にあるワインバー<クラッセ>に通うようになったのは、
そこにいるソムリエの篠崎さんのおかげだった。
最初に恭子と店で待ち合わせをした時、恭子は急に仕事を抜けられなくなり、
居心地の悪い気分でいたところをふっと気を楽にさせてくれたのだ。
そんな篠崎さんが、恭子に次の日の客のワインの相談をしてアドバイスを
した後、その客の写真を見ていたら急に不機嫌そうになってしまった・・・
- 三鶯荘奇談
三鶯亭菊丸師匠の子供正人と一緒に、三鶯亭の持つ山の中のロッジで
過ごすことになった緑。
その夜中、前夜に正人から幽霊話を聞かされたり、雨がたたきつけたりして
なかなか眠れなかったところ、急に叫び声が聞こえてきた・・・
- 崩壊する喫茶店
緑の祖母の間宮良恵は、目が見えなかったがよく散歩はしていたのだが、
ここ2か月程、全く出歩かなくなってしまった。
原因は、最近手に入れた白紙の絵である・・・
- 患う時計
築地にある築地亭は、高座に出る手前に急な階段がある。
三鶯亭菊馬師匠が高座に出る前に、足をすべらせて倒れてしまった。
薄暗い階段に、雑布が置かれていたと言う・・・
七度狐
東京創元社 (2003.)
「季刊落語」編集部編集長の牧大路と、たった一人の新人部下の間宮緑のシリーズ。
今回は長編。
残業続きで働いていた緑は、北海道へ出張している牧から、突然電話で
「静岡に行ってくれないかな」と依頼される。
必死に抵抗するも虚しく、言いくるめられてやって来たのは、戦前は
静岡県の大井川上流の温泉として知られていた杵槌村。
ここで、春華亭古秋一門講演会が開かれるという。
しかも、ただの講演会ではなく古秋一門にとって特別な意味を持っていた。
今年になって春華亭古秋が引退を表明しており、その引退発表とともに
次代春華亭古秋を決めるための腕比べという意味が込められているのだ。
世襲が受け継がれている古秋の候補者としては、その子供4人のうち、
男三人のうちだれかという事になる。
長男の古市、次男の古春、三男の古吉。
いずれも、名人級の腕前である。
そしてその講演会を翌日に控えた夜、杵槌村に大雨が降り、田畑が水に浸かり、
ふもとの村への唯一の道が崖崩れのために寸断された。
そして、その中で、殺人事件が発生した・・・
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